2014年3月15日のダイヤ改正で、秋田新幹線からE3系が姿を消す。「こまち」デビューから17年間にわたって活躍したE3系は、なんと国民的映画作品『釣りバカ日誌』に出演していた。短時間ながら、安定感のある勇姿、旅人でにぎわう車内、E2系と併結した走行シーンが登場する。そして主人公「ハマちゃん」とヒロインの出会いの舞台になっている。E3系「こまち」は、名作映画の名脇役として永遠に走り続ける。

『釣りバカ日誌15』の名脇役はE3系!? (写真はイメージ)

リストラ候補筆頭とリストラ仕掛け人が呉越同舟?

主人公の「ハマちゃん」こと浜崎伝助(西田敏行)は、中堅ゼネコン「鈴木建設」の平社員。仕事よりも趣味の釣りが大事。なにかにつけて会社を休み、釣りに出かけてしまう。それだけに釣りの腕は確かで、なんと釣りの弟子の「スーさん」こと鈴木一之助(三國連太郎)は鈴木建設の社長。万年平社員とその会社の社長の関係が、釣りになったら大逆転。この2人の周囲で起きる事件がコメディタッチで描かれる。

シリーズ15作目のサブタイトル『ハマちゃんに明日はない!?』は、ハマちゃんの会社での立場が危うくなりそうだから。鈴木建設は経営コンサルタントと契約し、人事面の改革に着手した。コンサルタントの早川薫(江角マキコ)は、これまでの家族経営ではなく、「成果主義で社員を正しく評価すべき」と提案する。鈴木社長は、「リストラにつながることはしたくない」としつつも、若いリーダーの提案事項を尊重する。

そんな中、最もリストラされそうなハマちゃんは、新年度になったばかりというのに9日間の休暇を申請し、釣り旅行に出発。秋田新幹線「こまち」の車内で、隣の席の美女に携帯電話の使用を咎められ、デッキでしょんぼりしてしまう。じつはこの美女こそ、秋田へ帰省する早川薫であった。そんな最悪な出会いから、2人はいつしか意気投合した。男鹿半島で釣りを楽しむハマちゃんは、水産試験場の職員、福本哲夫(筧利夫)とも仲良くなった。そんな出会いが絡み合ううちに、ハマちゃんは恋のキューピッド役となっていた。

もっとも、ハマちゃんはただ釣りを楽しんでいるだけ。自分が男女の仲を取り持っていたり、リストラ対象になりかけていたり、そんなことにはちっとも気づいていなかった。

E3系「こまち」で秋田美人と隣り合わせになったら!

E3系「こまち」の登場は本編スタートの26分後。E3系を先頭に、後部にE2系を連結した列車が大きく映る。続いて場面は車内に変わり、ハマちゃんが登場。一番後ろに乗っちゃって、こっちまで歩いてきたと言う。「こまち」は11号車から16号車までの6両編成だから、ハマちゃんは東京駅で11号車に乗り、16号車まで大きな荷物を抱えてきたわけだ。

この場面の座席に注目。ヘッドレストの上部に手すりが付いている。この形の座席はE3系の初期型だ。「こまち」は2002年12月からすべて指定席になったけれど、それ以前は15号車と16号車が自由席だった。この手すりは自由席車両の通路に立つお客さんのために付いている。つまり自由席時代の名残である。東京駅を出発するときの「こまち」は、16号車が先頭だ。ハマちゃんの言葉通りの車両でロケしている。スタッフロールにはロケ協力者としてJR東日本の名前もあり、きちんと考証されている。

ところが、その後のシーンが惜しい。東北新幹線区間で、E3系とE2系を併結して走る場面が何度か出てくるけれど、最後に出てくる場面だけが、なぜかE2系のみの編成になってしまった。同作品では、脚本に鉄道好きで知られる山田洋次監督が参加している。山田氏は同作品の監督ではないけれど、山田氏が参加していながらなぜ……、と思ってしまう。まあ、短いシーンだし、ストーリー上は違和感がないし、ここにツッコミを入れる観客は鉄道ファンだけだろう。

さて、この「こまち」でハマちゃんと早川薫は最悪な出会いをする。しかし、あるきっかけで早川はハマちゃんの人柄を理解し、秋田駅では早川に、「本当に楽しかった。秋田までの乗車が短く感じた」と言わせている。「こまち」の東京~秋田間の所要時間は約4時間。ハマちゃんと早川はどんな会話を楽しんだのだろう? 本編で描写されていないところが気になる。「こまち」に乗って、隣が秋田美人だなんて、ハマちゃん、うらやましいぞ!

映画『釣りバカ日誌15』に登場する鉄道風景

横浜シーサイドライン1000系 冒頭でハマちゃんが東京湾の釣りから船宿に戻ってくる。その背景を走行する。釣り宿の「太田屋」は実在し、最寄り駅は横浜シーサイドラインの野島公園駅
秋田新幹線「こまち」E3系 車内の座席の形から、1995年から1998年にかけて製造された17編成のどれかだ。E3系は、「こまち」からは引退するものの、状態の良い編成は山形新幹線へ移籍するという。山形新幹線は2014年春から順次、新塗装に切り替わる予定だ。おそらく秋田新幹線からの転籍車が先に新塗装となるだろう