イラストレーター/キャラクターデザイナー/漫画家・安倍吉俊
東京藝術大学大学院美術研究科修士課程絵画専攻日本画科修了。1994年講談社アフタヌーン四季賞準入選。多彩な分野で活躍しており、主な作品は以下の通り。『serial experiments lain』キャラクターデザイン原案、『NieA_7』原作、キャラクターデザイン、漫画『灰羽連盟』原作、脚本、キャラクターデザイン、『TEXHNOLYZE』キャラクターデザイン原案、小説『All You Need is Kill』『ネガティヴハッピー・チェーンソーエッヂ』『フェノメノ』イラスト、画集『An omnipresence in wired 「lain」』(ソニーマガジンズ)、改編版『yoshitoshi ABe lain illustrations』『垓層宮』(ワニマガジン社)、漫画『ニアアンダーセブン』『回螺』『リューシカ・リューシカ』など。(アイコン製作 : @Yukaly)

写真編集ソフトの定番「Photoshop」が、今年で25周年を迎えます。そこで、フォトグラファーやデザイナー、イラストレーターなど、このソフトを愛用している各界のクリエイターに、アニバーサリーイヤーを記念して、ご自身とPhotoshopに関するエピソード、そしてPhotoshopへのお祝いの言葉を寄せていただきました。

今回ご登場いただくのは、メディアミックス作品『serial experiments lain』のキャラクターデザイン原案、漫画『灰羽連盟』、小説『All You Need is Kill』など、多岐にわたる分野で作品を発表しているキャラクターデザイナー/イラストレーター/漫画家の安倍吉俊さんです。

――はじめて触れたPhotoshopのバージョンと「第一印象」は?

1993年の事で、多分バージョンはPhotoshop2.5だったと思います。まだインターネットは普及しておらず、パソコン通信全盛の時代でした。PC-VANの画像フォーラムで知り合った友人の家で、Quadra700で動くPhotoshopとPainterを触らせてもらったのが最初です。

当時僕はPC-9801DAにメルコの一番安いグラフィックボードを乗せて強引にWindows3.0を動かしていて、ペンタブレットはNONキーちゃん、という筆圧感知すらない、ペンがタブレットにケーブルで繋がっているタイプのものを使っていました。そのため、Macintosh、Photoshop、ワコムのペンタブレットという作業環境はまさに衝撃で、すぐ貯金をはたいて、一番安かったMac II viと最低限の作画環境をそろえました。

――普段の業務・活動におけるPhotoshopの使い方を教えてください。

現在は鉛筆で線画を描き、スキャンし、Photoshopでゴミ取りと線に色味を加えたり最小限の処理をして、CLIP STUDIOで着色し、最後にPhotoshopでテクスチャを加えたり、色を整えたり、ブラシで細かい描き込みや修正を行っています。

――最もよく使う/気に入っているPhotoshopの機能は?

調整レイヤー全般です。昔は色々なエフェクトを乗せていましたが、今は手で描いた状態から離れすぎないように、レイヤー処理はできるだけシンプルにしています。でも、塗り終えた後で全体の色味をを少し整える、といった事は絵の具では非常に難しく、調整レイヤーにはいつも助けられています。

――最後に、25周年の節目を迎えたPhotoshopへの激励の言葉をお願いします。

僕はちょうどプロになって20年ですが、Macと向き合っていたこの20年の間で、Photoshopが最も長時間駆動したソフトウェアで、最も高いグラフィック性能をを要求し、最もメモリとHDDを酷使し、にも関わらず最もクラッシュの少ないソフトウェアでした。同じ絵を同じ気持ちの入れ方で二度描く事はできないので、常に絶対的に信頼できる作画環境がある、という事は非常にありがたかったです。

安倍吉俊の画業20年の軌跡

安倍吉俊さんのデビュー20周年を記念した自選画展「祝祭の街 明・暗・素」が、東京都・中野のギャラリー「pixiv zingaro」で開催中。安倍さんご本人が厳選した作品約30点を展示しています。詳細は同展のWebページを参照してみてください。