ライゾマティクス・齋藤精一氏

写真編集ソフトの定番「Photoshop」が、今年で25周年を迎えます。そこで、フォトグラファーやデザイナー、イラストレーターなど、このソフトを愛用している各界のクリエイターに、アニバーサリーイヤーを記念して、ご自身とPhotoshopに関するエピソード、そしてPhotoshopへのお祝いの言葉を寄せていただきました。

今回ご登場いただくのは、Perfumeの舞台演出やグローバルプロジェクトなどをはじめ、テクノロジーを活用した表現を各方面で披露するクリエイティブチーム「ライゾマティクス」代表取締役・齋藤精一さんです。

――はじめて触れたPhotoshopのバージョンと「第一印象」は?

Power Macが出てきたころなので、確かPhotoshop 2.0ですね。もともと大学では建築を学んでいたのですが、僕は絵の才能がなくて、スケッチをほとんど描くことができないんです…。全部PhotoshopやIllustratorを使って描いていましたし、今も描いてます。Photoshopは自分のスケッチ感覚で描いていくようなツールだと思っていまして、Photoshopの登場によって、建築を学ぶに当たっての環境も大きく変わりました。

第一印象というか、Photoshopの機能で面白いと感じたのは、建築でいうと「ファサードに色を付けてみよう」とか、そういった実験がすぐにできることでした。その当時は、撮った写真をPCに取り込んでコラージュしていくようなことがようやく可能になってきたころで、現在からすると解像度は荒いですが、小さなデジカメを使って合成をしていました。スケッチを出力してトレーシングペーパーの上からなぞるより、Photoshopで直接描くほうが自分にフィットしていました。

――普段の業務・活動におけるPhotoshopの使い方を教えてください。

基本的にカンプを作るところですね。僕は企画書を作るにあたって、できる限り字を少なくして、レファレンスやPhotoshopで描いたオブジェクトなど、絵をメインに描こうと心がけています。ちなみに、バージョンはCCを使っています。

――最もよく使う/気に入っているPhotoshopの機能は?

使用頻度というところから若干離れるかもしれませんが、昔はPhotoshopでフィルターをかけると、パソコン側の処理に限界があって、変な話、たばこが1本吸えたんですよ。ですが今はマシンもソフトも進化して、処理が早くなって、そんなことをする時間がなくなるくらいに進化しましたよね。確か、OS Xが出たころでしょうか。とても処理が早くなって、いくらフィルターをかけたとしてもまったく待つ必要がなくなったことを覚えています。ただ、個人的にそういう部分がちょっと寂しかったりもします(笑)

よく使う機能でいうと、最近はPhotoshopとIllustratorを頻繁に行き来して作業するので、パスのままペーストして、ダブルクリックでIllustratorに戻ってもう一度修正できるとか、そういう部分です。いろんな使い方をする「フォトショッパー」がいると思うのですが、僕は一度描いた物を怖くて消せないタイプの人なので、レイヤーがどんどん増えていくんですね。そういう人たちに向けたフォルダ機能やグループ化機能が搭載されて、レイヤーをまとめやすくなり、便利になりました。

――最後に、25周年の節目を迎えたPhotoshopへの激励の言葉をお願いします。

あまりこういうことは言わないようにしているのですが、Photoshopは"ゲームチェンジャー"、つまり、クリエイティブの世界を圧倒的に変えたツールだと思っています。他の業界と比較することもできない事柄ですが、例えばGoogleと同じくらい変化させたツールではないでしょうか。

なので、一般の人が「あれ、この写真、"フォトショ"したの?」と言うことがあるわけじゃないですか。一方で、検索することを"ググる"という人もいます。両者はそれくらい、世の中を変えたと言えます。これはPhotoshopの存在がコンシューマーの人たちにまで届いているということで、だからこそ僕はPhotoshopがゲームチェンジャーという称号がすごく合っているツールであり、ブランドであると思っています。

これからもPhotoshopを使い続けます。もし今後新しい機能が搭載されるとしたら、「一服機能」みたいなものがあるといいですね(笑) 昔のフィルター反映の待ち時間のように、5分くらいゆっくり演算するモードみたいなものがあると嬉しいです。