前回前々回と真島さん、猪井さんから筆者が教わったのは、意外にも精神論が中心だった。そこで筆者は、事務所の若手たちはどんな修行をし、どんな課題を持って成長してきたのだろうかという疑問を持った。今回はそのあたりの話を踏まえつつ、ローカル駅での撮影について、真島満秀写真事務所所属のフォトグラファー・長根広和さんにうかがった。

構図、露出を変えて、たくさん撮る!

下の写真の駅は、九州北部にある日田彦山線の大行司駅。鉄道写真家というと列車を追いかけているだけと思われがちだが、移動の途中で駅に立ち寄り、駅舎の撮影をするのはよくあること。列車の本数が少ないローカル線ではなおさらだ。

かつて石炭産業で栄えた日田彦山線沿線。黄色いハンカチは、近くにある「山村文化交流の郷 いぶき館」で高倉健さんの企画展が行われていることにちなんで飾られたもの

ところで、真島満秀写真事務所の代表的な仕事のひとつが「青春18きっぷ」のポスターである。約8年前、2001年春バージョンの撮影地が、同じ日田彦山線の大鶴駅だった。それを選ぶにあたって、長根さんと猪井貴志さん(第4回に登場)は、九州のほとんどの駅をロケハンしたそうだ。長根さんが大行司駅を知ったのはそのときのこと。今回久しぶりに行ってみたら一面に黄色いハンカチが飾られていて驚き、シャッターを切ったというわけだ。

いい駅に出会い、「撮りたい! 」と思った場合、まずどうすればいいのだろうか。「とにかく、たくさん撮ることですよ」と長根さんが持ってきたのは、大行司駅で撮影された36枚撮りフイルム3本分のスリーブ(マウントしていないポジフイルム)。黄色いハンカチが主題になるように考えられた様々な構図で、縦、横と押さえ、さらに必要に応じて、露出の段階を切っている。駅に滞在したのは約30分間。この1枚の写真は、その約100枚の中から選んだものなのだ。「たくさん撮る」というのは、真島満秀さんも前回話していたことで、いい作品作りのためのひとつの大前提なのだろう。

いつも真剣なプロの装備をお手本に?!

では、たくさん撮るためにはどうすればいいのか。長根さんはどんな経験をしてたくさん撮れるようになったのかが知りたくて、8年前の「青春18きっぷ」の撮影話を振ってみた。当時は、事務所の若手カメラマンは長根さんひとりだけで、撮影以外にも幅広い業務をこなしていたそうだ。「モデルさんが座っていた駅のところから、先生のフイルムが終わるたびにチェンジに走って、また戻って。忙しかったですよ」と、とても懐かしそうだ。その頃に、真島さんや猪井さんから教わったことを尋ねてみると、「教わるというか……、撮影するだけ。コツコツ必死にひたすら真面目に妥協せず」。それは具体的にどういうことなのかと聞くと、「見たまんまですよ」と話が終わってしまった。というわけで、見たまんまが下のイラストである。

しかし、「これで完璧なのか」というとそうでもないらしい。「だから、8年前も今も、『真面目すぎる、もっと遊べ』と言われ続けているんですよね」と、苦い顔をする長根さん。そしてその横では、他の事務所のメンバーたちがうなづき、笑っていた。とりあえず、試しに一度このスタイルで撮影に行こうと思った筆者であったが、それが顔に出たのか、すかさず「吉永さんももっと遊んだ方がいいですよ! 」と長根さんにつっこまれ、全員に爆笑される筆者だった。

このように、剛に柔にと揺さぶられて、「教わる」のではなく「学ぶ」ことで自分の撮影スタイルを作っていくのが写真上達への道だと感じた。こうなったら、とことん学ぼうじゃないか!