【連載】
秋も深まり、紅葉が広い地域で見頃になってきた。自然が輝く季節に挑戦したいのが、鉄道風景写真である。風景、天候、列車通過のタイミングに恵まれれば、鉄道写真の初心者にも傑作が撮れるかもしれないのだ。見頃を迎えた紅葉と、列車を絡めて撮るコツを真島満秀写真事務所の猪井貴志さんにうかがった。
下に掲載した写真の構図に見覚えのある人も多いのではないだろうか。ここは猪井さんお気に入りの定点撮影ポイントで、その写真によって有名になった"お立ち台"(有名撮影地のこと)でもある。
猪井さんは、なぜこの場所がお気に入りなのだろうか。「光線が"半逆光"なんだよ。葉っぱの色や輝きが出るのは、順光よりも横からの光なんだ。紅葉した葉の色が太陽に透けて見えるピークは非常に短く、1日から長くてもせいぜい3、4日。その前だと色が重いし、後だと葉が散ってスカスカになっちゃうんだよ」。
このような定点撮影ポイントで撮影する場合、レンズや構図などは到着前から決めているそう。最大の問題は、前述のような理由から「いつ撮るか」ということ。そこで猪井さんが教えてくれた方法が、撮影したいポイントの最も近くにある役場の観光課に電話して、紅葉の様子を聞くという方法。しかし、撮影したいポイントの様子をそのまま聞くのはナンセンスなのだとか。「役場の人がその場所の状況を知っているとは限らないからね」。なるほど、ごもっともである。
猪井さんは、電話をする前に役場と撮影地点の位置関係を頭に入れておき、役場の人に質問をする。役場周辺の紅葉情報を聞きつつも、撮影地点が山側なのか谷側なのか、標高は高いか低いかといった条件から、最終的には自分でジャッジをするそうだ。
ところで、ベストな条件が揃ったとしても、お立ち台だと相当混雑しているのではないだろうか。プロは、場所取りをどのようにしているのか非常に気になる。「もちろん、すでに鉄ちゃんはいたよ。そんな時でも『ちょっとごめんよっ』と声をかけながら、先にいた鉄ちゃんの真後ろに脚立を立ててスタンバイするんだ。頭ひとつ上に出ていたら撮影はできるから」と答える猪井さん。この場所にすっかり慣れている様子だった。
ところで、もし列車通過直前に曇ってしまったらどんなリカバリーをすればいいのだろうか。そんな素朴な疑問をぶつけてみると、「曇ったらねぇ……。ショボーンとする(笑)。時間があれば次の普通列車を撮ったりもう1日いることもあるけど、紅葉はピークが短いから、次の場所に行くなあ」との答え。「プロならではの技があるのでは!? 」と淡い期待をしつつ質問をしたが、自然の前にはプロもアマもないのだ。だからこそ、初心者にとっては傑作が撮れる可能性もあるわけだ。そして、「いつもいつも完全な天気とはいかないのだから、あとはもう気の持ちよう。自分は晴れ男、晴れ女だと信じる! 」と断言していたのも非常に印象的だった。
――ある程度の知識を蓄積したら、まずは現場で鉄道を撮ってみる。そして、撮りながらいろんなことを覚えていく――
鉄道写真はそうやって上達していくのがベターなのだろう。今回の取材を通してそう感じた筆者だった。
ワンポイントアドバイス
長野県にて、筆者撮影。猪井さん曰く、「遠景を大きく入れて鉄道を撮るという狙いはいいし、シャッターのタイミングもよい。でも、列車に日が当たっていなくちゃなあ。次は、日が当たる時間を調べて行くといいよ」。
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