「鉄道写真」と一口にいっても、列車が主役の編成写真から旅のスナップまでその種類は様々。この企画では、鉄道写真の第一人者である真島満秀さん主宰の写真事務所の方々に、鉄道撮影の技術指導をしていただく。初回は、真島さんと真島満秀写真事務所所属フォトグラファーの長根広和さんに、奥深い鉄道写真の世界についてお話してもらおう。

鉄道写真の"定義"

まず、真島さんにとっての鉄道写真の定義をお聞きすると、その答えは意外なものだった。「汽車旅で撮ったものは、すべて鉄道写真といっていいのではないでしょうか。たとえ車両が写っていなくても、旅の中で出会った人や風景、駅などの写真もすべて含めて"鉄道写真"だと私は思っています。それだけに、鉄道写真には無限の可能性があるのです」。

可能性は無限……。さすが、奥深いといわれる鉄道写真だけある。とはいえ、これから企画を進めていく中で皆さんに理解してもらいやすいよう、便宜上ここではいくつかのカテゴリにわける必要がある。まずは、鉄道写真の基本中の基本ともいえる「編成写真」。「走っている列車の側面と顔がおよそ7対3となるように撮影した写真のことです。これがすべての鉄道写真の基本になります」(長根さん)。

編成写真の例。置き換えが進むEF65

2つ目は「風景写真」。こちらは編成写真とは反対に、列車よりも風景が主役の写真。「皆さんが旅の途中で撮りたいと思うのは、このような写真ではないでしょうか。下の写真のようによい雲が出たタイミングでお目当ての列車が通るということは、ありそうでないものなんですよ」(長根さん)。

風景写真の例。大分・由布岳の麓で特急ゆふDX

次は「イメージ写真」。「説明を一切省いて、心象的に列車を撮影するのもいいじゃないですか。そういう写真を私はイメージ写真といっています」と真島さん。ちなみに、若い頃海外でラリーやスーパーカーの撮影もしたという真島さんは、"速さの持つ色気"に魅せられて乗り物の撮影をするようになったそう。

イメージ写真の例。0系新幹線を跨線橋の上から撮影

最後は「駅舎写真」。前述の真島さんのコメントの通り、鉄道写真といっても車両が写っていないものもある。その一例が駅舎写真なのだ。「列車の本数が少ないローカル線では、列車待ちの間に駅や線路を撮影します。いいでしょ、駅、いいんですよ」と長根さん。「いいでしょ」と繰り返す姿がなんとも印象的で、それ以上言葉にならないから写真を撮るのだろうかとも感じた。

駅舎写真の例。1日4往復しか列車がない岩手県のローカル駅

もうしばらくすると暑さも落ち着き、旅に最適なシーズンとなる。「鉄道の旅は、適度な速度感が魅力。日常から非日常にへと切り替えられる時間を与えてくれる点がいいですね」と真島さん。日帰りでも泊まりでも、まずは列車に乗って、鉄道撮影の旅に出てみてはいかがだろうか。そんな旅の中で素敵な1カットを撮れるよう、この企画では皆さんを応援していく。