ついに基板が到着

前回発注した基板がついに手元に届いた。今まで画面上でさんざんいじってきた基板だが、実物を見ると感慨深いものがある。

P板.comに依頼した基板は佐川急便で送られてきた。梱包はしっかりしている。

発注から届くまで約1週間といったところだろうか。間に入る休日の数で多少前後するのではないかと思う。

エアキャップを取り外すときっちりと密封された基板が出てきた(万が一配送中に水濡れなどがあったとしても問題ないだろう)

さっそく開梱してみて基板を眺めてみると、レジストにムラがなくシルクの抜けもよくきれいにできていた。基板業者の技術が低いとこのあたりがあまりきれいにできないのだが(その代わり安い)、特に問題ないようだ。

完成した基板。今回は標準の緑色レジストを使ったが、製造期間の延長と追加料金が許せるなら他の色(青、白、赤、黒、黄)にすることも可能だ

いざケースに! そして…

ターゲットとする無印良品のピルケースに入れてみたところ、ケース側のでっぱりを削ればきっちり入りそうだ。長辺側が1mmほど足りなかったが、特に問題はなかった。

そして部品を載せてみて残念な問題が発覚した。自作のシンボルであるステレオヘッドフォンジャックのドリル径を間違えて登録しており、ヘッドフォンジャックが基板にささらないのだ。

CADLUS Xを起動して調べてみると、穴径とランド径を間違えて登録していたことがわかった。穴径を1.2mmにしなければいけないところをランド径を1.2mmにしてしまっていたのだった。さすがに穴径の間違いは自分以外誰もわからないので、きちんとチェックする必要があるだろう。

シンボルの間違いは見つけにくく、ダメージが大きいので何度チェックしてもよいと思う。できれば自分以外の誰かにチェックしてもらいたいところなのだが、なかなかそうもいかないのが難しいところだ。

今回、P板.com(インフロー)の好意を受けて、改めて修正を施した基板を読者プレゼント用に製造することにした。こちらはもうしばらくで準備が整うので、それまでお待ちしていただければと思う。

注:募集させていただきました読者プレゼントは現在終了しております。

今回は何かに使えるだろうと2.54mmピッチのコネクタに入力と出力とGNDを配線していたので、ケース付けタイプのヘッドフォンジャックを使えば問題なく使えるのが不幸中の幸いだった。だが部品も買ってあることだし一枚は基板付けタイプのヘッドフォンジャックを実装してみることにした。必要なのは1.2mm径のドリルで、ホームセンターの工具売り場や模型売り場で手に入れられるはずだ。

これで基板に穴を空けて部品を実装するわけだが、当然パターンは破壊されてしまっているので他の部品から配線してくる必要がある。

1.2mmのドリルで穴を開け直した様子(銅箔がバリになっているので取り除いてから部品を載せる)

配線し直した様子(今回は同じ信号の配線されたピンが近くにあったので簡単だった)

ケースの加工も必要だが、さほど固くないプラスチックのケースなので工具さえあればさほど大変ではないと思う。穴を開ける(特に四角い穴を開ける)となるとけっこう面倒だが、後で蓋が閉められるので上から切っていってしまって構わない。

ステレオミニジャック部分の加工の様子(穴が空いたところで止めてしまったので汚いままだが、最終的にはヤスリがけをするといいだろう)

そんなわけで完成したのが以下のヘッドフォンアンプ一号だ。抵抗が縦になっていたり、電解コンデンサの径が合ってなかったりするが、きちんと動作することが確認できた。多少不具合があったものの、自分で作った基板が動作した時はやはりうれしいものだ。

ヘッドフォンアンプ一号機の様子(小型の抵抗が手元になかったので縦になっていたり、コンデンサが斜めだったりするが動作自体は問題ない)

肝心のアンプとしての性能だが、特に安いmp3プレーヤにつないだ場合の違いが顕著だった。mp3プレーヤに内蔵しているアンプはあまり性能のよくないものが多いので、ヘッドフォンアンプを使うと効果が大きいということだ。

ヘッドフォンアンプに詳しい知人によると、iPodでもヘッドフォン端子ではなく、Dockコネクタからライン出力を取り出してヘッドフォンアンプにつなぐと良いそうだ。

うれしい勢いの残っている間に、二号も作ってみることにした。今度は小型の抵抗や径のあった電解コンデンサも購入し、ステレオミニジャックもケース取り付けタイプを用意しての製作だ。ケースの穴はまず錐で穴を開けて、それを丸棒ヤスリで広げていった。電池スナップの線がやたらと長いので後で詰める予定だ。

二号機の様子(こちらはステレオミニジャックをケース付けタイプにしたので、基板に穴を開けたりジャンパを飛ばしたりする必要がない。電解コンデンサも径が合っているオーディオ用の千石電商で購入した)

ここで、実際に音が鳴っている状況を動画でご覧いただこう。音源を提供してくれたのはオルガノラウンジという手作りエレクトロニカを信条とし、既存のミュージック・シーンとは一線を画す数々の作品をリリースするエレクトロニカ・バンドで、ここではpointileという曲を使わせていただいた。2001年からは、アニメーション作家である松本力氏との出会いにより、活動をアート・シーンへと広げるなど、幅広い活動を行っている。興味を持った方は公式サイトを見に行ってみてはいかがだろうか。

動画
実際に音源とスピーカーに接続して鳴らしてみたところ。 ボリュームつまみできっちりと音の強弱の調整もできるし、 音質もそれなりのものが出ているのがわかるだろうか 電源を入れてから再生開始したため音が出てくるまで 多少時間がかかっているように見えるが、実際はすぐに 音が出てくる(ちなみに楽曲は、エレクトロニカ・バンドのオルガノラウンジよりpointileという曲の1部を提供いただいた)(wmv形式 10.6MB 45秒)

趣味の電子工作としてのプリント基板作製

最後に、個人でプリント基板を作る必要性について書いておきたいと思う。

個人の電子工作では、ユニバーサル基板で十分だと考える人も多くいることだろう。筆者も小規模でリード部品やDIPのICしか使わない回路ならそれでもよいと思う。

ただ、世の中の電子部品がどんどん小型化の方向に向かっているのは間違いない事実だ。ユニバーサル基板でも変換基板を使って表面実装部品に対応することは可能だが、残念ながら変換基板は結構高価だ。それならば配線の手間がないプリント基板を作ってしまうという選択肢もあるのではないかと思う。

また、最近は電源電圧が低いICが多くなってきているのもプリント基板の採用を勧めたい要因の1つだ。低電圧を作るDC/DCコンバータも表面実装パッケージのものが多いからだ。

プリント基板なら抵抗やコンデンサをチップ部品にして基板を小さくすることも可能だ。P板.comのサイトで見積もりを取ってみた方ならわかると思うが、基板サイズはコストに直接響いてくるのだ。

表面実装部品ははんだ付けができない、と反論する方もいると思うが、DIPできちんとしたはんだ付けができる人ならば0.5mmピッチのはんだ付けも練習次第でできるようになると思ってよいと思う。

また、最近はFPGAなど高性能のICの価格が下がってきて、さらにインターネット通販で個人でも簡単に手にはいるようになってきたので、LVDSなどの高速信号を採用した回路を個人で設計することも不可能ではなくなっている。そんな時はユニバーサル基板では対応できないのでプリント基板を作るしかないのだ。

先日ニコニコ技術部のアルテラマスターP氏と話す機会があったのだが、氏も設計後はいきなりプリント基板を製作しているそうだ。FPGAや高速なデバイスを使おうと思うと、どうしてもプリント基板を作るしかなくなってしまうのだという。もちろん氏は本職のエンジニアなのでそんなことをしてしまえるのだが、高速メモリや高速伝送と言った技術がより一般的になってくることは間違いないだろう。そのとき、自分で基板を作成できる経験を持っているかどうかは案外大きな差になってくるのではないかと思う。

全6回、だいぶ駆け足になってしまったが仕様決定から動作確認まで通してやってみたのは筆者としてもいい経験となった。ここまで読んでいただけた読者の方々に少しでも役に立てば幸いだ。

インフロー

インフローはプリント基板ネット通販「P板.com(ピーバンドットコム)」を運営しており、プリント基板設計、製造、実装、メタルマスク販売をサイト上で完結するサービスとして提供し、試作から量産に関わる、リジット基板からフレキシブル基板までニーズに対応できる幅広いサービスを提供しています。同サイトは、国内約6,000社との取引実績、約1万4,000名のユーザー登録を持ちます。 また、電気・電子エンジニア向けSNS「@ele(アットマークエレ)」を運営しています。回路図データベース構築を目的とした、電気・電子エンジニア向けのSNSで、会員数約1,600名となっています。