「A子って料理上手だよね。うちは旦那が毎日作ってくれるからぜんぜん料理がうまくならなくて……」みたいな

現在放送中のテレビドラマ「ファースト・クラス」や、書籍「女は笑顔で殴りあう: マウンティング女子の実態」などの影響か、最近「マウンティング女子」という言葉がはやっているらしい。「マウンティング」で検索すると、本来の意味よりも先に「マウンティング女子」が検索結果にずらりと並ぶ。

マウンティングというのは、自分が相手よりも上であるということを誇示するためにとる行動のことで、もともとは動物が相手の上に乗って優位性を示す行為から来た言葉だ。しかし、人間社会でのマウンティングはもうちょっと複雑、というか屈折していて、自分が上であると直接的に言うと角が立つため、自虐などに混ぜてそれとなく示すのだ。いわゆる「自虐風自慢」というやつである。

「胸が大きいと肩が凝って仕方ない」という自慢

よく耳にする例でいうと、「胸が大きいと肩が凝って仕方ないのよね。あなたがうらやましい」といった具合だ。「自分の胸が大きい」ことを自慢しながら、「肩が凝る」というマイナスポイントを加えることで「自慢じゃないですよー苦労話ですよー」とアピール、トドメの一撃に「(胸が小さい)あなたがうらやましい」と相手をけなし、優位ポジションを確立するのである。ああもう、面倒くさい! ごちゃごちゃ言わずに「私の取り柄は胸が大きいことです! 」とストレートに自慢してくれ。

はっきり言って、この手の薄っぺらい自虐風自慢は、異性には確実に見破られて逆効果だ。さらに、相手が反撃してマウンティング合戦になると目も当てられない。むしろ、マウンティングされてもマウンティングし返さず、うまく相手を立てる女性の方が男からすると好感度が高い。

男社会にもあるマウンティング

もちろん、マウンティング合戦は女性だけじゃなくて、男社会にだって存在する。内容はだいたい女性のマウンティングと似たようなものだ。

・ホリエモンの年収がうらやましい。俺は800万円しかない。

・身長が180超えてると困ることの方が多いよ。服もサイズがないしね。

・東大生はやっぱりすげーよ。俺なんて馬鹿だから早稲田しか行けなかった。

これを年収2000万円の東大卒185cm長身イケメンの前で言っているなら、本当に自虐で終わるのだが、そうじゃなければ立派なマウンティングになるわけだ。

じゃあなぜ「マウンティング男子」という呼び方は聞かないのかというと、我々男はこの手のマウンティング男子に対して、便利な反撃手段をすでに手に入れているからだ。

「ミサワ」である。

言うまでもなく漫画家の「地獄のミサワ」が確立した「ウザいキャラ」の通称だ。ためしに上記の例の文頭に「っべー」をつけるとよりそれっぽくなるだろう。つまり、マウンティング野郎を黙らせる方法は簡単。

「ミサワかよw」で一撃だ。

この手の現象は、「適切な名前が付けられてカッコ悪いこととして周知される」と、途端に収まるのだ。だから、マウンティング女子もドラマや書籍で認知が広がればサーッと波が引くように減っていくんじゃないだろうか。とはいえ、この手の自虐風自慢は、それこそ有史以前から連綿と受け継がれてきた人間の本能みたいなものなので、そう簡単にはなくなりはしないだろうけど。もしかしたら、もっと巧妙なマウンティングテクニックが生み出されるのかな。それはそれで、隕石衝突により冷えた地球で生き延びるため進化した哺乳類みたいでロマンがあるな。

ちなみに、「マウンティング女子」という現象をドヤ顔で分析しているこの記事そのものが、マウンティング女子に対するマウンティングであることは言うまでもない。

※画像は本文と関係ありません