ロボットの安全性をどのように検証しているのか?

続いて、具体的にどのようなロボットが検証がされているのかが紹介された。まずは、パナソニックの「ロボティックベッド」(画像5・6)による、安全技術を導入した移乗・移動支援ロボットシステムの開発だ(委託先はパナソニックと、国立障害者リハビリテーションセンター)。

これまでに国際福祉機器展のパナソニックのブースでも何度か展示されており、直接拝見した方もいるかと思うが、高齢者・障がい者向けのベッドと車いすが統合された移乗・移動支援ロボットである。移乗作業は介護士にとって非常に負担のかかる仕事で、腰痛持ちの方も多く、若くして介護士をリタイヤというケースも少なくない。それを防ごうというのが、ロボティックベッドの狙いだ。

画像5(左):かつて発表されていたロボティックベッドの試作型。 画像6(右):産総研オープンラボで確認したロボティックベッドの最新バージョンの車いす部分。ベッドと車いすとの自動合体機構などは価格を下げるために廃されたという

どのような部分の安全性が確かめられているかというと、ロボティックベッドの場合は、その誤作動、誤操作などに対してだ。そして、既存ロボットおよび設計段階の改良型ロボットのリスクアセスメントおよび安全コンセプト策定が行われ、それらの結果に基づいた改良型ロボティックベッド(安全評価機)の仕様策定/製作が行われた。そして操縦インタフェース/操縦支援技術、安全変形/動作技術、ロボット自己診断技術、機能/システムユーザビリティ、環境センシング技術、動的動作経路生成技術の研究開発が行われ、より安全性が高められたというわけである。

なお波及効果として、「介護福祉ロボット市場の開拓、拡大」、「電動車いす、電動ケアベッドのロボット化促進による市場拡大」、「ロボット技術利用自律支援普及促進による介護保険費用削減」なども挙げられた。

それから、富士重工業の清掃ロボットシステムも紹介された(画像7・8)。こちらは、「安全技術を導入した生活公共空間およびビルの清掃ロボットシステムの開発」である(委託先は富士重工業のみ)。なお同社の清掃ロボットシステムは、「専用部清掃ロボット」と「共用部清掃ロボット」の2種類がある。課題としては「清掃品質の向上」、「清掃単価の低減」、「人と共存した環境下における清掃」の3点である。

画像7(左):専用部清掃ロボット。 画像8(右):共用部清掃ロボット

中間成果としては、安全性検証手法開発者と連携してリスクアセスメントを実施し、安全試験項目を策定したことがまず1つ。そして、リスク低減技術として、レーザー三角測量による安定走行技術、天井ライン誘導技術、人・障害物回避技術、自律走向技術、自己診断技術などが開発された。安全要素技術としては、走行プログラム管理システム、磁気による自己位置認識技術、環境地図生成技術なども開発されている。さらに、ロボットビジネス推進協議会にて、「人と同乗するサービスロボットの運用が可能なエレベータの検査指針」が主査会社として策定された。なお生活支援ロボット安全検証センターにて、12項目の安全性試験が実施されている。

さらに、ロボットの紹介が続く。次は、「安全技術を導入した警備ロボットの開発」ということで、綜合警備保障(ALSOK)、北洋電機、三菱電機特機システムの3社が委託先だ。ALSOKの警備ロボット「Reborg-Q」が紹介されている(画像9)。

画像9。見かけた人も多いであろう、ALSOKの警備ロボット「Reborg-Q」

こちらの課題は、「多数の人が存在する環境下の自律移動型ロボットの衝突リスク低減」である。中間成果では、リスクアセスメントによる本質安全設計の実施、人/障害物回避技術および自律走向技術の開発(静的物体、移動物体の回避技術)、危険予防技術の開発(注意喚起動作の検討)、小型軽量な安全側位輝線差の開発、姿勢安定化台車および冗長通信データバスの開発(振動抑圧機構の提案と通信データバスの高速化)などが行われた。

続いては、安全技術を導入した人間装着型生活支援ロボットスーツ「HAL」(委託先はCYBERDYNE、筑波大学)。課題として、人に装着して人間の身体機能の拡張・増幅・支援を行うロボットの動作リスク低減および運用ルールの整備が行われた。技術としては、装着時機能安全技術、安全制御技術、安全管理技術、自己判断技術、安全要素技術の研究開発の後に、安全性試験、実証兼プロトコルが実施された形だ(画像10)。

また同じく装着型としては、ホンダを委託先とする、安全技術を導入したリズム歩行アシスト(画像11)の開発もある。課題は、生活の場で起きうる転倒などの異常発生時に適切に対応する安全技術の確立だ。リスクアセスメントによる本質安全設計の実施、人の多様な歩行状態に適切に応答する制御技術開発、異常発生時に人に対して障害とならないための機構開発などが行われ、成果として「人の多様な動きに適切に応答する制御技術を搭載した、さまざまな環境で活用できる人装着型歩行アシストが実現」となっている。

画像10(左):人間装着型生活支援ロボットスーツHAL。画像は、2011年9月に、国際規格原案「ISO/DIS 13482:2011」に基づいて、日本品質保証機構(JQA)がHALの福祉用(災害対応仕様がある)の安全性を評価し、世界で初めて認証された際のもの。中央は山海教授。 画像11(右):リズム歩行アシスト

続いては、安全要素部品群と安全設計に基づく搭乗型移動ロボットの開発。委託先は、アイシン精機、日本信号、オプテックス、ヴィッツ、千葉工業大学の5社である。実は、電動車いすは45万台が累計で販売されているそうで、事故が多いという。田んぼのあぜ道を走っていて、誤動作で転がり込んで、亡くなるような事故も結構発生しているそうだ。そこで、センサをつけてロボット化し、それ以上下がったら脱輪するといった場合は警告を出したり、その操作をキャンセルしたりするようにするというわけである。それを実現するための課題が、「搭乗型移動ロボットの生活空間内おける許容リスク以下での移動の実現」だ。

許容リスク以下安全移動支援技術(生活空間内移動リスク算出アルゴリズム、リスク低減速度算出アルゴリズム)、安全要素モジュール群の開発(3次元レーザー減速センサ、距離画像カメラ、安全無線通信モジュール)、IEC61508 SIL2準拠機能安全ソフトウェア開発プロセスに基づき構築(リスク低減速度算出ソフト、無線通信ソフト)などを経て、成果として「公道などの生活空間における許容リスク以下の移動を可能とする搭乗型移動ロボットの実現」としている。