6番札所「安楽寺」の宿坊でいっしょに泊まった人と本堂前で記念撮影していたら、夫婦のお遍路さんが車でやって来た。「次の札所まで、車で乗せて行ってあげましょうか?」と言われたので、ついついお言葉に甘えて乗せてもらう事にした。ああ、軟弱な私。安楽寺から7番札所「光明山 十楽寺(こうみょうざん じゅうらくじ)」までは、約1.2km。車に乗ったらあっという間。5分で到着した。

「十楽寺」の名前の由来は、人間の持つ8つの苦難(生・老・病・死・愛別離・怨憎会・求不得・五陰盛)を離れ、"十"の"光明"に輝く"楽"しみ (極楽浄土に往生する生が受ける十種の快楽)が得られるようにと、寺号を「光明山 十楽寺」と名付けられたそうだ。また弘法大師が谷を行脚中に、阿弥陀様が現れたと言われている。それでその谷に堂宇を建て、阿弥陀様のお姿を刻み、本尊とされた。樟で刻まれたご本尊は、阿弥陀如来が極楽浄土で瞑想にふけっておられる姿だそうだ。その谷のお堂は、大伽藍で現在のお堂より3kmほど北にあった。しかし長宗我部の兵火により焼失したため、江戸時代の寛永12(1635)年に現在地に移転して再建された。その後、明治に入るまで造営され、現在の本堂は、平成6(1994)年に11月に新しく建て替えられたものだ。

十楽寺の入口の山門は、6番札所「安楽寺」と似た鐘楼門。竜宮城風な造りの鐘楼の下を潜って入る形式となっている。門を入ると正面には水子地蔵がずらっと祀られている。その横の階段を上ったところにも「遍照殿」の扁額が掲げられた門があり、さらに2階に上ることができる。2階にはこじんまりとした護摩壇の前に真っ赤な愛染明王様がいらした。

十楽寺山門

本堂に安置されている本尊の阿弥陀如来は、創建時より伝わるものだそうだが秘仏のために見る事はできない。残念。

大師堂はさらに階段を上った奥まったところにある。中をのぞくと奥に弘法大師さまの像がちらりと見えた。

十楽寺本堂

十楽寺大師堂

本堂の横にある小さなお地蔵さまは、眼病に霊験があると言われている。お寺の山号の光明山にふさわしく、人々に光明をもたらすそうだ。なんでも、息子に手を引かれて歩いていた目の不自由なお遍路さんが、このお地蔵さまにお参りして眼が見えるようになったという言い伝えも残っている。

境内には、ちょっと足が短い石仏の不動明王もいらっしゃった。太平洋戦争時に特攻で亡くなった海軍飛行予備学生13期生の慰霊碑として建立されたという。

十楽寺戦没者慰霊碑不動明王

十楽寺の宿坊の光明会館は、朽化していたため平成19(2007)年に3月1日にて鉄筋コンクリート4階建てに建て替えられて再オープンしたばかりで新しい。きれいそうなのでここに泊まっても良かったかも、と思った。でも泊まった人の話を聞いたら、中はビジネスホテルのようだったそうだ。和室もあるが、ベッド付きの洋室もあるらしく、宿坊っぽい雰囲気を味わいたい私としては6番札所でよかったと思った。

次の8番札所「熊谷寺」までは約4km。6、7番札所と続けて車に乗ってしまったのもあって、これから歩くと1時間かと思うとちょっと気が重い。今日は11番札所までたどり着かないといけない。というのは、山の上にある難所の12番札所に上るのはきつくなるからだ。私は気を取り直し、8番札所「熊谷寺」へ向かう。