前回は、中国やアメリカを中心にアプリを使った決済サービスについてご紹介しました。第3回となる今回は、日本のポイントサービスのアプリ化について紹介したいと思います。

従来のポイントサービス

日本では従来、小売店や飲食店を中心にポイントカードやスタンプカードによるマーケティングが広く行われてきました。商品を一度購入した人にポイントカードを配布し、500円に付き1ポイントといった形でポイントを付与し、一定ポイント貯まると、現金として使えるようになったり、商品をプレゼントしたりするサービスです。ポイントカードは、初めて来店した人に対して再来店を促し、リピートしてもらうための有効な手法として使われています。従来は、紙のポイントカードにスタンプを押すものや、プラスチック等のカードで磁気を読み込むものなどがありましたが、最近ではアプリ内に機能の一つとして組み込まれることが多くなってきています。

左から無印良品、GU、ヤマスタのポイント画面(ヤマスタの画像はYamakei Onlineから引用)

ポイントカードをアプリ化するメリットは、主に以下の3つが考えられます。

ポイントサービス アプリ化のメリット

1. オムニチャネル・マーケティングの実現

オムニチャネル・マーケティングとは、店頭で買い物してくれた人にECの利用を促し、自社のECユーザーには店頭への来店を促す施策のことで、EC(オンライン)と店頭(オフライン)を連携させ、利用頻度や客単価の向上が狙いです。ポイントサービスがアプリ化し、店頭やEC相互で利用できるようになると、一人に対してそれぞれの利用動向を把握することができるようになります。例えば、店頭で購入したワンピースに合うアクセサリーをECでリコメンドしたり、ECの買い物で溜まったポイントを店頭で使ってもらうように案内できるようになり、ポイントを使って相互のチャネルの利用を促進することができます。

2. ロイヤリティ・マーケティングの実現

店頭で配布した紙のポイントカードでは、店舗側がポイント数を把握することができないため、スタンプを押すこと以外に店舗側がお客さまにコミュニケーションをとることはできません。また、プラスチックカードの場合、アプローチは主にメールやDMになるため、リアルタイムの情報を適切なタイミングで届けることができません。

ポイントサービスをアプリ化すれば、ポイントの利用状況を把握できるだけでなく、状況に応じたコミュニケーションをとることが可能になります。例えば、来店した人があと1ポイントで特典がもらえるような場合には、商品購入を後押しするようなコミュニケーションも可能になります。

3. 高度なポイント付与プログラムの展開

従来のポイントカードは、商品を購入時にポイントを付与するのが一般的です。しかし、商品を購入するためのハードルは比較的高いため、購入前にユーザーにアプローチしたいと考えても、ポイントサービスだけではそのアプローチは難しいのが現状です。ポイントサービスをアプリ化することにより、行動データやスマホ端末の位置情報と連携して、ユーザーのデータを取得することができるため、あらゆるトリガーでポイントを付与することが可能になります。

小売店であれば、商品を購入しなくても、来店したということをBeaconで検知し、ポイントを付与することもできます。例えば、SHIPSのアプリでは、来店時にポイントを貯めることができますし、ヤマダ電機ではアプリ内のポイント会員証と連携した来店ポイントサービスを展開しており、店に立ち寄ったタイミングでついでの買い物を促進させています。

SHIPSのポイント付与、ヤマダ電機のポイント会員証

こうしたポイントサービスのアプリ化から、今後どのような展開が見えてくるかを考えてみたいと思います。

ポイント付与方法の高度化とマーケティング施策の多様化

ポイントを付与するタイミングは、何も商品を購入したタイミングやBeacon等で来店を検知したタイミングに限りません。プッシュ通知や特定のコンテンツを読んでほしい、アンケートに答えてほしいといったアプリ内の行動に対してポイントを付与することも可能で、ユーザーのアプリへのエンゲージメントを高める施策も可能になります。

また、3回以上来店した場合にはポイントを通常の2倍付与する、ゴルフ練習場に来ている人がゴルフショップに来店したらボーナスポイントを付与するなどといった、オフライン時の行動に対してカスタマイズしたポイントを付与するニーズもあると思います。ユーザーの様々な行動パターンに応じて、ポイントの付与率や付与数を上げて、ロイヤリティを高める方法も出てくるでしょう。

まとめ

ポイントサービスが高度化していくことで、今後、集客や来店促進の施策に活かそうとする企業が増えてくると考えられます。ポイントを貯める・使うということが単に決済の代わりのような位置づけから、企業の多様なマーケティング活動に活かすという視点でポイントサービスが変わっていく予感がします。

著者略歴

渡辺智也
株式会社アイリッジ セールス&マーケティンググループ シニアマネージャー。慶應義塾大学卒業後、楽天株式会社に入社。オークション事業で営業、マーケティング、経営企画、トラベル事業にて事業開発を担当。2013年9月に同社に入社。大手企業を中心として多数O2Oアプリのコンサルティングやマーケティング支援を行う。University of MichiganでMBAを取得。