NVIDIAの田上と申します。これから仮想GPU技術について連載して参りますので、最後までお付き合い頂けますと幸いです。

最初に当社NVIDIAについてご紹介します。NVIDIAは1993年アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタクララに設立された半導体メーカーで、コンピュータのグラフィックス処理や演算処理の高速化を主な目的とするGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)を開発・販売しております。デスクトップパソコンやノートパソコンなどのコンシューマ向けGeForceシリーズ、グラフィックスワークステーションなどプロフェッショナル向けQuadroシリーズ、スーパーコンピュータや仮想化向けのTeslaシリーズ、組み込みシステム向けTegraが主力製品となります。また近年ではAIブームの中核を担うディープラーニングのリーディングカンパニーとして各種メディアに取り上げられております。

2017年9月に開設したNVIDIA本社新社屋(カリフォルニア州サンタクララ)

ここから本題に入ります。VDIはVirtual Desktop Infrastructureの略で、サーバ仮想化技術によりサーバ上に作成したVirtual Machine(仮想マシン。以下、VM)にクライアントOSを導入し、ネットワークを通じてその画面をリモートから操作することを表します。

従来は各自のPCを使って業務を行ってきましたが、ネットワークアクセスが可能であればどこからでも自身のデスクトップ環境が呼び出せるといった点から、近年注目を集めているワークスタイル変革の要素技術となっています。

もう少し利点をご説明すると、

  1. 情報セキュリティの強化(操作端末側に機密データが残らない)
  2. システム管理の容易性(イメージの複製やバックアップなどサーバ上での一元管理が可能となる)
  3. データアクセスの高速化(リモートアクセス時のデータ参照や保存が高速になる)
  4. ソースの共有化(ユーザ間でシステムリソースを共有するため最適化が図れる)
  5. 操作端末の柔軟性(PCのほかスマートフォンやタブレットの活用が可能、BYODも可)

などといった利点が取り上げられます。

また、近年のシステム基盤は機密情報の漏洩やウィルス・マルウェアへの対策など情報セキュリティに対してより高度化が求められており、VDIはこれらの課題を解決する一助となり得ます。

一方、VDIの課題としては、

  1. 利用者が増えた場合の性能やリソースの保証
  2. ネットワーク環境に依存する操作性の劣化
  3. グラフィックスリソースを必要とするアプリケーションへの対策

などが挙げられます。(1)についてはサーバを増設することによってスケールアウトは可能ですが、可用性を考慮した構成やストレージへのI/Oなどを検討する必要があります。また(2)についてはネットワークの帯域やレイテンシーの改善を行うことも必要となりますが、画面をリモート転送する際のテクノロジーについても考慮が必要です。そして、(3)はCPUでは対処出来ないハイグラフィックス処理をGPUで行う必要があります。

NVIDIAの仮想GPU技術はこれらの課題に対して大きく寄与するものとなり、現在、さまざまな産業で活用が進められています。そうした具体的な活用例については次回以降でご紹介して参ります。

通常のVDIのイメージ(左)と、仮想GPUテクノロジーとVDIを組み合わせたイメージ(右)

著者プロフィール

田上英昭(たがみひであき)
エヌビディア合同会社
エンタプライズ事業部ビジュアライゼーション部 部長

略歴

1994年:都立科学技術大卒、研究テーマは「ニューラルネットワークによる音声の感性分析」。
1994~2010年:伊藤忠テクノソリューションズ 金融事業部にて銀行・証券・生損保向けデリバティブやリスク管理システムの開発(並列分散処理)プロジェクトに従事。
2010~2011年:日本マイクロソフトにてHPC製品の販売に従事。
2011~2016年:デルにてHPCならびにGPUソリューションのビジネス開発に従事。
2016年9月よりエヌビディアに勤務、仮想GPUソリューションをリード。