旅は「実行」するだけではなく、「計画」「記録」も楽しみたい。今回は計画編の2回目。時刻表を使って日程を作ってみよう。列車の並び順や掲載時刻のクセに気をつけると、乗換えがスムーズになる。ムダのない日程を作るために、時刻表を使いこなそう。

前回は時刻表の選び方・見方を紹介した。今回は時刻表を使って、実際に日程を作ってみることにする。使用する時刻表は、B5判の『JR時刻表 9月号』。もちろん同サイズの『JTB 時刻表 9月号』でも、時刻は同じだ。さて、どんな日程を作ってみようか……。そうだ! 当連載第2回で、「大阪駅からだと、なんと紀伊半島を普通列車で日帰りすることも可能」と紹介した。これが本当に実現できるか、時刻表で確かめよう。

JR阪和線を走る関空・紀州路快速

まずは時刻表の索引地図を開き、大まかなルートをチェック。紀伊半島をぐるりと回る路線は「紀勢本線」とある。大阪側からだと、和歌山から紀伊半島沿岸をたどり、白浜、串本、新宮、松阪、津で西へ曲がって亀山に着く。亀山から先は関西本線で大阪方面へ向かう。大阪から和歌山方面へは阪和線が最短ルート。南海線も並行しているから、特急「サザン」で和歌山市方面をめざしても楽しそうだ。でも、今回はJRでたどっていこう。

時刻表のマーク「分割・併合」に注意

それでは索引地図をもとに、阪和線のページを開いてみよう。地図の阪和線の周りには掲載ページが4つも書かれている。「305」「756」「←316」「320→」……どれを見たらいいんだ! なんて思うけれど、まずは全部見て、それから考えてみてはどうだろう? 時刻表は他路線からの乗換えなどを考慮し、同じ路線でも複数のページで掲載する場合がある。ただし、どれも同じではなく、掲載ページによって詳しかったり、省略されたりする。

阪和線の場合、305ページは大阪から阪和線経由で関西空港・和歌山方面へ行く人のために作られている。一方、756ページは、阪和線のみ全駅掲載、ただし列車は各駅停車のみで、始発・終発列車が詳しく、日中の列車は省略されている。「←316」はおもに紀勢本線の和歌山駅から新宮方面の時刻表で、阪和線は直通列車や乗継ぎ列車のみ掲載。「320→」は、「←316」の逆方向となっている。

今回の旅のテーマは、「紀伊半島を日帰りで一周する」だ。どのくらい時間がかかるかわからないから、始発列車で出かけてみようか。出発が大阪駅だから、305ページを開こう。ここで注意点がある。欄外に、「阪和線・関西空港線(平日用)」と書いてある。「土曜・休日時刻は311-315ページをご覧ください」とも。大都市近郊の路線は平日と土休日で時刻が変わることが多く、時刻表のページも分けられている場合があるので要注意だ。

今回計画するルート

列車の分割の記号(時刻表をもとに筆者作成)

今回は休日に出かけたいから、311ページのほうを開く。大阪駅に注目すると、最も左側に6:12発の列車がある。上を見ると、列車番号「4107M」、その下に「関空」という文字がある。これは関空快速を示すマークだ。この列車の時刻を下へたどっていくと、関西空港駅に07:20に着く。……いやいや、関空へ行くわけじゃないぞ。

その手前の日根野駅に注目。7:08着の表示の右側に折れ曲がった矢印があり、7:12発の時刻が続いている。この矢印がある場合は、「列車を分割・併合します」という意味がある。「紀州」というマークもあり、これは「紀州路快速」を示している。

要するに、大阪駅を朝6時12分に発車する列車は、「関空快速と紀州路快速を連結して大阪駅を発車し、日根野駅でそれぞれの方向へ分割される」というわけだ。紀州路快速の時刻をたどると、和歌山駅7:38着となっている。大阪駅で乗車する時点で、「紀州路快速」「和歌山」と表示された車両に乗っておけば、乗換えなしで和歌山へ行けるだろう。

「列車を選ぶ」「駅に着く」「次の列車を探す」を繰り返す

和歌山駅から先の時刻は、「←316」にあった。開いてみよう。紀州路快速の和歌山駅到着が7:38だったから、それ以降の列車を探せばいい。あった。7:51発の普通列車がある。列車番号は329M。しかし同じ時刻の列車が2つ並んでいる。注意書きにあるように、片方は「土曜・休日運休」、もう片方は「土曜・休日運転」。つまり平日用と土休日用だ。違いを探してみても面白い。この列車は紀伊田辺駅に9:38着だ。ところで、この列車の始発駅は「新大阪」となっている。311ページに戻ると、大阪駅は通らないけれど、天王寺駅は6:50発だ。こちらに乗るなら、もう少し出発時刻を遅くできる。

さて、紀伊田辺駅から先へ行こう。9:59発の特急「くろしお1号」と、10:44発の普通列車新宮行(列車番号2331M)がある。特急列車もいいけれど、やはり各駅停車でのんびりと行こうか。2331Mは終点の新宮駅に13:51着。欄外の表記や索引地図によると、次の区間は224ページとなっている。開いてみると……おっと、列車の本数がかなり少ない。次の列車は15:11発の普通列車(列車番号334C)だ。この列車の時刻を下にたどると、亀山駅に19:40着。真っ暗で景色が楽しめなくなってしまう。

亀山駅から関西本線に乗り換える。20:16発の普通列車(列車番号263D)に乗れば、加茂駅に21:35着。その先は22:16発の快速(列車番号523K)で天王寺駅へ。ここから大阪環状線となるので、749ページで終電を確認だ。天王寺駅23:16発で、大阪駅23:38発とある。

こうして、大阪駅から快速・普通列車のみで紀伊半島を一周できると証明できた。「青春18きっぷ」または「秋の乗り放題パス」などにおすすめのコースだ。新宮駅周辺では、1時間ちょっとの散策も楽しめそうだ。「この行程じゃ、ただ列車に乗るだけじゃないか……」と寂しく思うなら、どこかで1泊するのもいい。

列車の並び順に注意が必要なケースも

では、同じコースを特急列車で旅するとどうなるか? 316ページを見ると、新大阪駅7:33発の特急「くろしお1号」がある。大阪駅からこの列車へ乗り継ぐなら、大阪環状線に乗り、天王寺駅へ先に到着して、7:59発「くろしお1号」を待つのがいい。

「くろしお1号」は新宮駅に11:48着。次の特急列車は12:44発の特急「(ワイドビュー)南紀6号」となる。この列車は亀山駅には行かないから、津駅で降りて亀山行に乗り換える必要がある。ところで、時刻表の津駅のところに注目。「(ワイドビュー)南紀6号」は15:12着。次の普通列車亀山行は……、と右へ見ていく。16:09発の亀山行があった。約1時間後だ。

乗り継ぎは周囲の列車を見渡そう(時刻表をもとに筆者作成)

ちょっと待った! じつはその列車だと、1本遅くなってしまう。津駅で時刻表の右側ではなく、左側を見てほしい。なんと、津駅を15:19発の亀山行があるではないか。これが時刻表の調べ方で間違いやすいところ。時刻表は基本的に左から右へと列車が並んでいるけれど、長距離路線で特急が走る路線では、下のほうで並び順の逆転現象が起きることがあるのだ。

なぜなら、実際には列車が追い越して走る順序が変わっても、時刻表の掲載順序はそのままだから。たとえば東海道新幹線で、「こだま」しか止まらない駅へ行く場合なども注意。「のぞみ」「ひかり」から乗り継ぐ場合、時刻表の左側に並ぶ列車に乗れることがある。右側ばかり見ると、長い時間を駅で待つ行程になってしまう。実際に旅すると、予想外の列車がやってきてビックリする。

戻りの時間を決めておくと、より「計画」が楽しくなる

さて、特急列車で乗り継いだルートでそのまま調べていくと、大阪着は19:00頃になる。終電までは5時間くらいあるし、この行程も列車に乗りっぱなし。「紀伊半島のどこかで、もう少しのんびりしたいな」と思ったら、今度は時刻表を逆にたどってみよう。大阪駅に何時頃までに戻りたいかを決めて、そこから日程を逆に作っていく。

たとえば、「大阪駅には23:00頃に着けばいい」と決めたら、加茂駅20:47発、亀山駅19:26発、津駅18:10発、多気駅17:34発、紀伊長島駅16:13発……とさかのぼっていける。特急「(ワイドビュー)南紀6号」は紀伊長島駅に13:53着だから、ここで2時間半の滞在時間ができる。紀伊長島駅でなくても、津駅や松阪駅にしてもいい。

特急に乗ると決めたら、関西本線にこだわらなくてもいい。新幹線に乗るルートも考えられる。新大阪駅22:06着の「のぞみ127号」は、名古屋駅21:12発。この列車には名古屋駅20:48着の特急「(ワイドビュー)南紀8号」から乗り継げる。「(ワイドビュー)南紀6号」の停車駅のいずれかで降りて、後続の「(ワイドビュー)南紀8号」に乗るとすれば、その時間差は約4時間。どの駅を選んでも、ちょっとした観光ができる。

さて、どこで時間を使おうか? この選択は楽しい悩みだ。これが「計画」の面白さだ。