今回と次回の2回に分けて、ネットギアのスイッチ製品が備えるQoS(Quality of Service)機能について取り上げることにしよう。今回はQoSという機能そのものと、スイッチがQoS機能を備える理由について、次回はネットギア製のスイッチ製品におけるQoS設定の実際について取り上げる。

QoS機能が必要になる理由

先にも述べたように、QoSとはQuality of Serviceの略で、読んで字のごとく、ネットワークにおける「サービスの品質」を意味する言葉である。では、ネットワークにおける「品質」とはいったい何だろうか?

それは、「安定した通信」「確実な通信」という話につながる。コンピュータ・ネットワークとは、いわば高速道路のようなもので、トラフィックが増えれば混雑して渋滞が発生する。すると、伝送遅延、あるいは遅延のバラツキなどといった問題が生じる。それは伝送品質の劣化につながる。

ネットワークのトラフィックにはさまざまな種類があるが、Webサイトに対するアクセスであれば基本的にバースト的、つまり短時間にワッとトラフィックが発生して、必要なデータを受信したらそこでいったん終了する。しかし、ネットワークを通じて行き来するのは、そうした種類のトラフィックばかりとは限らない。

ファイルサーバとの間で大容量のデータをやり取りする際には連続的なトラフィックになり、動画の配信やVoIP(Voice Over IP、いわゆるIP電話)では長時間にわたって連続的なトラフィックが発生する。特に動画やVoIPでは、伝送の遅延や途切れが発生すると、再生する動画、あるいは音声の質に対して、ストレートに影響が出る。

こうした問題を解決するために用いるのが、ネットワーク機器が備えるQoS関連機能である。たとえば、特定の種類の通信、あるいは特定のノード同士の通信に対して、常に一定の帯域を割り当てる帯域制御や、特定の通信を優先的に通過させる優先制御などの手法を用いるものだ。

動画やVoIPの再生を行う際には、画像のサイズ、あるいは単位時間内にやり取りするデータの量(ビットレート)が決まれば所要の伝送能力を求められる。だから、その分に相当する帯域を常に確保するようにして、他のトラフィックによって「車線を塞いだ状態」にならないようにすれば、安定した再生や会話が可能になる。道路でいうと、バスレーンを設定してバス以外は立入禁止にするようなものである。

このほか、特定の種類のトラフィックについて、他のトラフィックよりも優先的に通すような使い方も考えられる。道路でいうと、緊急車両が来たら他の車両に道を空けさせるようなものである。

「帯域制御」(上)と優先制御(下)

ひとつのネットワークにさまざまな種類のトラフィックが混在するのが現在の一般的な姿だから、その中で優先度が高いもの・低いものを区別して、前者を優先的に扱う。そのために用いるのがQoS機能というわけだ。

伝送能力そのものは限られており、スピードアップを図ろうとすれば機器の全面交換が必要になってコストがかかる。そこまで大げさにしなくても、最低限のコストと手間で、重要なトラフィックだけでも安定してやり取りできるようにするという考え方だ。

高品質な通信を実現するいろいろな方法

高品質な通信を実現するには、「何が重要か」「何が重要でないか」を決めて、それをネットワーク機器に教える必要がある。

抽象的なやり方としては、いわゆる「ポリシーベースQoS」がある。これは別名を「ポリシーネットワーク」ともいい、データの優先度管理やセキュリティ設定などの項目について、最初にネットワークを運用する側がポリシーを設定するものだ。ネットワークに接続した通信機器やサーバは、そのポリシー設定の結果を受けて動作して、QoS機能を働かせる。

ただし、実際にこうした仕組みを実現するには、ポリシー情報を規定して個々の機器に設定を行うポリシーサーバや、その設定情報を受け取って動作するネットワーク機器といったものが必要になり、相応に費用も手間もかかる。意図した通りに機能させるためには、ノウハウの蓄積や検証の手間も必要になるだろう。

その他の方法としては、優先対象となるコンピュータ、あるいは通信の種類を明示的に指定して、「○○から△△へのトラフィックを優先する」「プロトコルとして××を用いているトラフィックのために、常に○○MB/sの伝送能力を確保する(いわゆる帯域確保)」といった設定を行う方法もある。

つまり、緊急車両を優先的に通す際に、「サイレンを鳴らしながらやってきた車両に道を譲らせる」のが優先制御で、「緊急車両のために車線を空けて確保しておく」のが帯域制御、と考えると分かりやすいだろう。

次回は、ネットギアジャパンのギガビット対応イーサネットスイッチを使って、具体的なQoSの構築方法をわかりやすく紹介する予定だ。