秋も徐々に深まりつつあるこの時期、新しい年に向けてそろそろ準備しておきたいものの代表格が「年賀状」だろう。年賀状は、毎年どんなデザインにすればいいのか迷う人も多いはず。さらに、人とは一味違うアレンジをしたいと思っている人も多いのでは。そんな時には、「干支文字」を使った手書きの年賀状を書いてみてはどうだろうか。そこで、今回から9回にわたって日本を代表する書道家3人に登場していただき、干支文字を使ったオリジナル年賀状の書き方を伝授してもらう。筆に限らずさまざまな道具が活用できるので、今年はぜひ自分だけのオリジナル年賀状に挑戦してみよう!

武蔵のタイトルを書いた書家、吉川壽一先生

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今回から3回にわたって干支文字年賀状の書き方を伝授してくれるのは、吉川壽一先生。日本での活動はもちろんのこと、パリやアラブ首長国連邦で展示会を開催するなど、グローバルな活動を意欲的に展開している書道家だ。身近なところでは、NHK大河ドラマ「武蔵」や漫画「バカボンド」などの題字があり、誰しもどこかで1度は目にしたことがあるのではないだろうか。

第1回目は、筆を使ったスタンダードな干支文字を初心者に向けて紹介する。「筆を使って文字を書くなんて難しそう……と、気後れすることなく、ぜひ挑戦してみて下さい。書は気持ち、のびのびと楽しんで書くものですから」と、吉川先生は語る。

女性らしく「子」を書くには?

来年の干支は「子」。ネズミには「鼠」や「子」、「ねずみ」などのさまざまなバリエーションがあるが、第1回目は楷書体である「子」の字をセレクトしてみた。吉川先生いわく「子という文字は女性らしい曲線があり、また草書体のように崩して書くと味があっていい」とのこと。では早速、書き方を学んでいこう。

1.やや右上に筆を滑らすようにもっていく。手で書こうとするのではなく、肘ごと動かすような感覚で書くことが大事。
2.1からつなげて下までおろす。最後の方はやや力を抜きつつ、優しく書こう。
3.2からつなげて書くような気持ちで筆をおく。
4.最後まで気を抜かずに。中の線を隔てて2対1のバランスで仕上げると、見た目よく仕上げることができる。

今回の技のポイント

草書を書くときは、流れるように、つなげるように書くのがポイント。その際、姿勢は正しく、背筋をまっすぐにすることを忘れずに。また、筆と手の間にはある程度の隙間をもたせることで、筆の自由度も変わってくるのだとか。書き終わった字の周りに何か一言添えると、いっそう女性らしさが際立つ年賀状となる。

動画
吉川先生によるお手本

初心者向けの筆の選び方とは?

今回の取材で「初心者向けの筆の選び方」について聞いたところ、吉川先生は「筆は何でもいいです。今回は筆を選んでいますが、やる気さえあれば、マッチ棒やペン、指など、何で書いてもかまいません。書を表現するのに道具は選ばなくていいのです。」と教えてくれた。

つまり、筆にこだわるよりも、どう表現したいか、受け取る相手をどう喜ばせるかを考えて書くことが大切なのだ。お手本を凝視しながら緊張して書くのではなく、いきいきと楽しく書いた文字だからこそ、受け取る側にもその気持ちが伝わるのだろう。その気持ちこそが、吉川流の「書の楽しみ方」だといえる。

次回は、吉川先生ならではの"ちょっと変わった"素材を使った干支文字を紹介したい。