【連載】

中小企業にとってのマイナンバー制度とは?

75 2度目のマイナンバー記載・提出 年末調整時期を間近に控えて

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従業員及びその扶養親族などのマイナンバーを記載して提出しなければならない源泉徴収票や給与支払報告書を作成する年末調整の時期が近づいてきました。

昨年従業員などからマイナンバーを収集し、必要な書類にマイナンバーを記載・提出した事業者や、事業者から委託を受けて年末調整を処理する税理士などが、今年の年末調整に向けて準備しなければならないことを整理しておきましょう。

従業員・扶養親族情報など変更点を確認する

従業員を雇用している事業者にとって、個人番号関係事務実施者として行う2度目の年末調整時期が迫ってきました。昨年、すでに従業員等からマイナンバーを収集し、源泉徴収票や給与支払報告書、支払調書などにマイナンバーを記載し提出している事業者の場合でも、以下のような点を確認する必要があります。

①すでに提供を受けているマイナンバーに変更がないか
対象:従業員及び扶養親族、支払調書の取引先となる個人事業主など
②今年新たに雇用した従業員及び扶養親族のマイナンバーは収集済みか
③昨年から継続して雇用している従業員の扶養親族に異動はないか
④今年廃棄しなければならないマイナンバーはないか

従業員及びその扶養親族については、前年と変更がない場合でも、毎年扶養控除等申告書にマイナンバーを記載することとされています。一方、支払調書の取引先となる個人事業主で継続的な取引関係にある場合は、当初提供を受けたマイナンバーを継続して利用することが可能とされています。

この原則にそくして、上記の①~④の対応方法を考えていきましょう。

まず①は、何らかの事情(自身のマイナンバーの紛失・漏えい等)により、マイナンバーが変更されたケースがあるかどうかを確認するものです。社外の取引先になる支払調書でマイナンバーの記載が必要となる個人事業主には、早めに確認のための連絡を取りましょう。従業員や扶養親族については、②や③と合わせて扶養控除等申告書を収集する際に確認すれば良いでしょう。変更がないことの確認が取れれば、昨年提供を受けたマイナンバーをそのまま使用すれば良いことになります。

次に、②については、入社時点でマイナンバーを収集していれば、継続して雇用している従業員と同様に③の確認に進むことになりますが、入社時点で扶養親族まで含めたマイナンバーを収集していない場合は、今年の扶養控除等申告書提出時に収集することになります。

また、③でも今年子供ができたり、両親を扶養に加えたりなど、新たに扶養親族が増えたケースなどでは、その分のマイナンバーを収集しなければなりませんので、何れにしても扶養控除等申告書提出時に収集することになります。

これらのケースでは、昨年から変わらない分も含めて、扶養控除等申告書にマイナンバーを記載して提出してもらうことが原則になっていますが、事業者にとって、7年保管が義務付けられている扶養控除等申告書に、毎年マイナンバーが記載されて提出されると、それだけ厳重管理しなければならない書類が増え続けることになります。

昨年もこの連載で書きましたが、一定の要件を満たせば、扶養控除等申告書へのマイナンバーの記載を省略することができます。一定の要件とは、「従業員が扶養控除等申告書の余白に「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」旨を記載した上で、給与支払者において、既に提供を受けている従業員等のマイナンバー(個人番号)を確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示するのであれば、扶養控除等申告書の提出時に従業員等のマイナンバー(個人番号)を記載しなくても差し支えありません。」(国税庁 源泉所得税関係に関するFAQ Q1-15-1)とするものです。

(図1) は今年の年末調整で従業員が提出する「平成30年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」です。

平成29年度税制改正により、配偶者控除及び配偶者特別控除の控除額の改正が行われ、平成30年分以後の所得税から適用されることから、(図1)の平成30年分の扶養控除等申告書では、控除対象配偶者欄が源泉控除対象配偶者欄と変更になり、控除対象扶養親族欄が一人分少なくなるなど様式が変更となり、マイナンバーの記載する欄も変更になっています。

この扶養控除等申告書にマイナンバーを記載しないようにするためには、従業員が扶養控除等申告書を提出するまでに、まだ未収集の今年入社した社員の扶養親族や、新たに扶養親族になった分のマイナンバーを収集しておきます。そして、[図1]の扶養控除等申告書に従業員がマイナンバー以外の必要事項を記載した上で、欄外に「マイナンバー(個人番号)については給与支払者に提供済みのマイナンバー(個人番号)と相違ない」と記載します。そして、事業者は管理しているマイナンバーが従業員及び扶養親族の分揃っていることを確認し、欄外に「マイナンバーを確認した」と記載すれば、扶養控除等申告書へのマイナンバーの記載を省略することができます。

マイナンバーの収集・管理については、すでに昨年収集時に確立した方法があれば、その方法にそって収集することになりますが、これまでの収集・管理方法に不安がある場合は、システムを変更することも検討しましょう。その場合のお勧めは、クラウドでマイナンバーを管理でき、給与計算から年末調整、法定調書、そして電子申告まで行えるシステムです。

クラウドでのマイナンバー管理では、従業員などが自身及び扶養親族のマイナンバーをスマートフォンなどから登録でき、さらに本人確認に必要な書類なども写メで撮影して登録できるようになっています。この仕組みを使えば、事業者へ本人確認書類の写しを書面で提出する必要がなくなる分、マイナンバーを紛失・漏洩するリスクを軽減することができます。特に、税理士が年末調整を請け負う場合、税理士がオンプレミスのシステムを利用しているケースでは、マイナンバーを記載した書類や本人確認書類の写しを、従業員から事業者へ、事業者から税理士へと受け渡すことになり、マイナンバーを紛失・漏洩するリスクが増えると同時に、税理士事務所でマイナンバーを管理するため、事務所のセキュリティ対策についてもどこまでやれば充分なのかと不安が付きまといます。

事業者も税理士も、昨年から今年にかけて、個人番号関係事務実施者としてマイナンバーの収集から管理、提出まで経験しました。そのなかで、現状の管理手法に少しでも不安があれば、より安心で安全なマイナンバー管理システムとして、クラウドでのマイナンバーシステムを導入することをお勧めいたします。

次に④の、廃棄しなければならないマイナンバーの確認です。 退職者や扶養親族から外れる扶養者などで、今年の年末調整でマイナンバーを使用しないケースでは、退職者や扶養親族のマイナンバーは直ちに廃棄することはできませんので注意が必要です。

本来マイナンバーを記載して提出することになっている扶養控除等申告書は、7年間の保管が求められています。一定の要件を満たすことで、マイナンバーの記載を省略している場合でも、マイナンバーは扶養控除等申告書と紐づけて管理されているということになりますので、扶養控除等申告書の保管期間はマイナンバーを削除するなど廃棄することはできません。

一方、昨年講演や原稿執筆などに対する報酬などで支払調書に必要なため収集した個人事業主のマイナンバーで、今年は不必要になるケースでは、必要ないことが確認できた時点で、マイナンバーを削除・廃棄する必要があります。年末から来年の年初にかけて、これに該当する事例がないか確認して、必要がなくなった個人事業主のマイナンバーは、確実に削除・廃棄しておきましょう。

まだ収集できていない従業員や取引先の個人事業主のマイナンバーについて

従業員からマイナンバーの提供を拒否され、前回源泉徴収票や給与支払報告書にマイナンバーを記載しないまま提出したケースでは、事業者が源泉徴収票や給与支払報告書にマイナンバーを記載することは義務であることを説明し、マイナンバーの提供を求めることとされています。ただし、マイナンバーの提供拒否ついて本人の意思が固い場合は、職場での関係を悪化するほど強く出ることはできないでしょうから、扶養控除等申告書の提出を求める際に、再度提供を求め、改めて提供を拒否された場合は、その経過などを記録・保存し、事業者がマイナンバーの記載義務を怠ったのではないことを明確にしておく必要があります(国税庁 源泉所得税関係に関するFAQ Q1-13参照)。

昨年、事業者がなかなか収集できなかったのが、支払調書の取引先となる個人事業主のマイナンバーです。そのためか、内閣府・国税庁では、10月13日に「不動産の売主・貸主のみなさまへ 取引先へマイナンバーの提供をお願いします」と題するリーフレットの更新版を公表しました((図2)参照)。

このリーフレットが、不動産の売主・貸主である個人事業主の元に直接配布されているのかは定かではありませんが、改めて、この時期にこのリーフレットが更新して公表されるということは、それだけ、「不動産の使用料等の支払調書」などの取引先である個人事業主のマイナンバーの記載が少なかったことが想定されます。

こうしたリーフレットにより、不動産の売主・貸主である個人事業主でも、取引先にマイナンバーを提供する必要があることが認識されていれば、それだけ、提供を求めやすくなっている可能性もあります。

昨年、事業者が収集できなかった支払調書の取引先となる個人事業主のマイナンバーについても、改めて支払調書の取引先が個人事業主の場合は事業者が支払調書にマイナンバーを記載することが義務付けられていることを説明して、提供を求めることになります。それでも、提供が受けられなかった場合には、従業員の場合と同様に、その経過などを記録・保存し、事業者がマイナンバーの記載義務を怠ったのではないことを明確にしておく必要があります(国税庁 法定調書に関するFAQ Q1-5参照)。

マイナンバー記載の給与支払報告書が提出されたのは、今年の1月が初めてのことでしたが、その影響か、今年は扶養情報の誤り(扶養にしていた子供に所得があり本来控除対象の扶養者ではないとか、兄弟で両親を扶養親族にしている二重扶養の問題など)を地方税当局から指摘され、地方税の修正が行われるケースが多くなっているようです。それだけ、マイナンバーが行政当局によって利用されていることを、この事例から見て取ることができます。

今回は、すでにマイナンバーを収集・管理している事業者や税理士が、今年の年末調整に際して、マイナンバー関連で確認しておくべきことを整理してみました。ただし、一方でマイナンバーの収集・管理ができないまま、マイナンバーの必要な書類でもマイナンバーの記載をしないまま提出した事業者も、まだまだ数多くいると思われます。行政当局によるマイナンバーの利用が本格化していることを考えると、これらの事業者にそれなりのプレッシャーがかかってくることも想定されます。これらの事業者では、いざという時のために、マイナンバーを収集・管理するための体制づくりについて、早めに検討しておくことをお勧めいたします。

中尾 健一(なかおけんいち)
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役
1982年、日本デジタル研究所 (JDL) 入社。30年以上にわたって日本の会計事務所のコンピュータ化をソフトウェアの観点から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。マイナンバーエバンジェリストとして、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。

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インデックス

連載目次
第76回 マイナンバー制度における「情報連携」の本格運用開始
第75回 2度目のマイナンバー記載・提出 年末調整時期を間近に控えて
第74回 「税務行政の将来像(国税庁)」から見えてくる電子政府の未来
第73回 社会保障分野の電子化とマイナンバー
第72回 マイナンバー制度のもう一つのナンバー 法人番号活用の現在
第71回 特別徴収税額通知 誤送付などでマイナンバー漏洩
第70回 進む税務の電子化 年末調整 プロセスも電子化へ
第69回 マイナポータルおよびマイナンバー制度情報連携 試行運用開始
第68回 法人税等の電子申告義務化に向けた基本計画
第67回 2017年 「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」をみる(3)
第66回 2017年 「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」をみる(2)
第65回 2017年「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」をみる(1)
第64回 特別徴収税額通知書 “官”からマイナンバーがやってきた
第63回 デジタルファーストを目指す政府 法人税電子申告義務化へ
第62回 電子申告とマイナンバー制度
第61回 「特別徴収税額決定通知書」へマイナンバーが記載され通知されることの影響
第60回 マイナポータル・行政機関間での情報連携 本格運用は10月以降へ
第59回 1月~3月 マイナンバーの本格利用の時期を終えて
第58回 政府が進める「デジタルファースト」への流れとマイナンバー制度
第57回 マイナンバー本格利用 次は所得税確定申告
第56回 マイナポータル 2017年7月本格スタートのサービス概要
第55回 2017年におけるマイナンバー制度の動き
第54回 2017年におけるマイナンバー利用の動き
第53回 年末調整直前 今からでも間に合うマイナンバー対策 その4
第52回 年末調整直前 今からでも間に合うマイナンバー対策 その3
第51回 年末調整直前 今からでも間に合うマイナンバー対策 その2
第50回 年末調整直前、今からでも間に合うマイナンバー対策 その1
第49回 マイナンバーカード・マイナポータルの活用促進をめぐる総務省の動き その2
第48回 マイナンバーカード・マイナポータルの活用促進をめぐる総務省の動き その1
第47回 マイナンバー制度、今後のスケジュールを再整理する
第46回 なかなか進まない支払先からのマイナンバー収集
第45回 経済産業省版法人ポータル(β版)など法人番号をめぐる動き
第44回 行政側のマイナンバー制度へのシステム対応 現状の動きを確認する
第43回 中小企業・小規模事業者からマイナンバー取り扱いの委託を受ける税理士の現状
第42回 マイナンバー対応 準備を順調に進めている企業と進まない企業
第41回 世界最先端IT国家創造宣言とマイナンバー制度
第40回 マイナンバーが記録されているパソコンは修理できない?
第39回 平成28年度税制改正でマイナンバーの取り扱いはどう変わったのか?
第38回 動き出した企業版マイナンバー(法人番号)の利用が与える影響
第37回 マイナンバーカードは民間活用でどのようなメリットがもたらされるのか
第36回 多くの企業がメリットを感じない、マイナンバー制度の課題を考える
第35回 新入社員を迎える季節 継続的にマイナンバーを管理・運用できる体制作りを
第34回 中小企業のマイナンバー対応 システム選択? 外部委託? 現状の傾向を探る(2)
第33回 中小企業のマイナンバー対応 システム選択? 外部委託? 現状の傾向を探る(1)
第32回 あいつぐマイナンバー制度のトラブル 中小企業への影響を考える
第31回 個人事業主のマイナンバー利用 今後のスケジュールを整理する
第30回 マイナンバー利用開始1カ月 マイナンバー利用の課題を考える
第29回 マイナンバーの取り扱い 中小企業から委託を受ける税理士などの最新動向
第28回 マイナンバーとマイナンバーカードの役割を考える
第27回 マイナンバー利用開始 すぐマイナンバーの記載が必要な書類・時期を再整理
第26回 平成27年分年末調整業務進行中 来年を見据えて準備しておきたいこと
第25回 マイナンバーの収集、今年中に収集するか? 来年に入って収集するか?
第24回 マイナンバーの通知と中小企業の取り組み 最新状況
第23回 中小企業向けマイナンバー商戦 現状整理
第22回 マイナンバー制度への対応を中小企業の本格IT化のきっかけに
第21回 法人番号の通知・公表スタート 中小企業に与える影響を考える
第20回 マイナンバー通知本格化 いよいよ本番 中小企業のマイナンバー対策
第19回 中小企業のマイナンバー対策 システム選びが成否をにぎる? (その2)
第18回 中小企業のマイナンバー対策 システム選びが成否をにぎる? (その1)
第17回 マイナンバー利用開始 間近に迫る 今中小企業は何をすべきか?
第16回 マイナンバー通知カードの送付始まる 待ったなしで始まるマイナンバー制度
第15回 税理士などにマイナンバーの取り扱いを委託する場合のシステム連携の課題
第14回 マイナンバーの保管・廃棄 システムで異なる安全管理措置
第13回 マイナンバーの利用・提出 よりセキュアに対応するためにほしい機能
第12回 マイナンバーの収集 システムで異なる業務運用
第11回 IT活用で対応するマイナンバー対策 システム比較
第10回 マイナンバー対策を契機にIT活用を見直す
第9回 法人番号とマイナンバー制度の将来像
第8回 マイナンバーの取り扱いを税理士事務所などに委託する場合
第7回 マイナンバーの保管、利用シーンで求められる安全管理
第6回 マイナンバーの収集で注意すべきこと
第5回 マイナンバー制度 中小企業に与える影響
第4回 中小企業が「個人番号関係事務実施者」として行う実務内容と必要な準備
第3回 すべての中小企業が「個人番号関係事務実施者」へ
第2回 マイナンバー制度の概要と今後のスケジュール
第1回 マイナンバー制度で業務のここが変わる!

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