マイナンバーの通知カードの発送が進み、すでに通知カードを受け取った人の数が私のまわりでも増えてきています。マイナンバーの収集に向けて準備を整えた企業では、順次従業員などからマイナンバーの提供を受け、マイナンバー管理システムへの登録を進めていることと思います。私の会社では税理士向けのクラウドマイナンバー管理サービスを提供していますが、当然自社のこのサービスを利用して従業員やその扶養親族のマイナンバーを収集しています。具体的には通知カードが届いた者から順次、会社から配布された自らのID・パスワードでクラウドマイナンバー管理サービスにスマートフォンやパソコンでログインし、Web上で本人および扶養親族のマイナンバーを入力、本人確認書類として本人は通知カードおよび免許証などの身元確認書類を、扶養親族については通知カードをスマートフォンで撮影してアップロードする、そのような方法で収集を進めています。

今回は、マイナンバーの通知状況と中小企業の取り組みの最新状況を確認し、現状での課題を整理してみます。

マイナンバーの通知 最新状況と押さえておきたいポイント

マイナンバー通知カードの全国の市区町村の郵便局への差し出しは11月25日を最終に完了しました(個人番号カード総合サイト:通知カードの郵便局への差出し状況 参照)。 ただし、この差し出し状況のサイトでは「差し出し日から概ね20日程度までにお届けできる見込みです」と書かれており、この通知カードの実際の配達状況については、11月26日に日本郵便が「マイナンバー通知カード在中郵便物の配達状況」というお知らせを公表しました。このお知らせによると、初回配達の完了が12月以降になる市区町村数が417あり、最も遅いところでは、12月20日までかかる予定とされています。また、11月25日までに初回配達された約4,000万通のうち、その時点で配達が完了または窓口での交付で通知カードが届けられたものが約3,300万通(全体の83%)ありますが、それ以外は不在で持ち帰り郵便局に留め置かれた状態のもの(12.2%)もあれば、市区町村に還付されたもの(4.8%)もあるようです。

不在で受け取りができなかった場合は、原則1週間は郵便局に保管されていますので、その期間中に再配達を依頼するか郵便局の窓口まで取りに行くかということになります。マイナンバー通知カードについては特別に「マイナンバー通知カードの再配達の申し込みサイト」があり、勤務先への配達を依頼することもできるようになっていますので、不在連絡票を受け取ったら、すぐに上記のサイトで再配達を申し込むことをお勧めします。

仮に不在連絡票を受け取ってから1週間のうちに通知カードの再配達手続きまたは郵便局の窓口で通知カードの交付を受けることができなかった場合、通知カードは市区町村の役所に戻されます。役所では戻ってきた通知カードを原則3カ月間は保管していますので、その間に役所の通知カード受領窓口まで出向いて通知カードを受け取ることになります。このあたりの対応については各市区町村のホームページで案内されていますので、郵便局に保管されている間に通知カードを受け取ることができなかった場合は、ホームページを確認するか各市区町村が設置しているマイナンバー制度についてのコールセンターに問い合わせすることをお勧めします。

従業員などのマイナンバーを収集しなければならない中小企業では、初回配達時に通知カードを受け取れなかった従業員に対して、以上のような情報を提供して、早めに全従業員が通知カードを受領、保管している状況をつくりたいものです。

中小企業の取り組み状況 最新調査から

11月17日帝国データバンクが「マイナンバー制度に対する企業の意識調査」を公表しました。全体の要旨として、以下のような内容があげられています。

  • マイナンバー制度について、「内容も含めて知っている」という企業は75.0%。4月調査時点と比較して31.5ポイント増加しており、制度の理解は浸透してきている。しかし、従業員数が「5人以下」の企業では5割台にとどまる。

  • マイナンバー制度への対応を完了した(あるいは進めている)企業は7割超。対応の進捗率も平均47.6%となり、4月調査時点と比較して38.7ポイント上昇。ただし、対応を完了した企業は6.4%と依然として1割を下回る状況が続いている。

マイナンバー制度について、「内容も含めて知っている」とする企業が着実に増えていることと、企業のマイナンバー制度への対応準備も着実に進んでいることが、この調査から伺うことができます。ただし、中小企業に目を移すと、「内容も含めて知っている」については、従業員数51人~100人では84.4%、21人~50人では79.0%、6人~20人では68.2%、5人以下では55.5%と、20人超の企業では全体の平均を上回っていますが、20人以下の企業では、全体の平均を下回り、まだまだ制度への理解が進んでいない企業が多い現実がみえてきます。

マイナンバー制度への対応準備について、この資料では企業規模別の数字が示されていないため、中小企業の準備状況についての数字を見ることはできませんが、対応が完了した企業も含めて対応準備を進めている企業が72.3%となっているなかで、先に見た制度への理解の進み具合を考慮すると、20人以下の企業ではこれを下回っていることは確実と思われます。

ただし、全体に遅れているマイナンバー通知カードの配達が進み、中小企業の経営者も通知カードを手にすることになれば、制度への認知は一気に進むのではないでしょうか。そこから中小企業の経営者がマイナンバー制度への対応準備に進むには、制度への理解を深めていく必要があります。

内閣官房のマイナンバー制度サイトでは、以前にもまして事業者向けの資料が動画も含めて充実していますので、これから制度の理解を深め対応準備をすすめようとする中小企業では、これらをうまく活用すること、そして税理士や社会保険労務士の関与を受けているのであれば税理士などに相談することをお勧めします。

著者略歴

中尾 健一(なかおけんいち)
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役
1982年、日本デジタル研究所 (JDL) 入社。30年以上にわたって日本の会計事務所のコンピュータ化をソフトウェアの観点から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。マイナンバーエバンジェリストとして、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。