従業員などのマイナンバーの収集にあたって守らなければならないルール

中小企業がマイナンバーを記載して作成、提出しなければならない書類を書面で作成しているのか、パソコンなどで電子データとして作成しているのかによって、収集方法も異なってきます。ただし、いずれのケースでも収集に当たって守らなければならないルールがあります。それは、利用目的の明示と本人確認です。

利用目的の明示については、従業員などに対する事前の案内で示していれば、それを再確認することで大丈夫です。

では、本人確認ですが、これは番号確認と身元確認をあわせておこなうこととされています。平成28年1月以降発行される予定の個人番号カードであれば、このカードだけで番号確認、身元確認をおこなうことができますが、収集を今年10月から11月におこなうのであれば、この個人番号カードによることはできません。

年内に収集をおこなう場合の原則的な本人確認方法として、「マイナンバーの通知カード+運転免許証」などの組み合わせが推奨されています。ただし、従業員など雇用関係にあるもので、雇用契約時に身元確認がおこなわれている場合は、人違いではないことが明らかであると事務取扱担当者または責任者が認めれば、身元確認のための書類の提示は必要がないとされていますので、通常は収集時番号確認のみおこなえばよいことになります。

本人確認(内閣官房の資料より)

[図 本人確認 国税庁資料より] https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/pdf/kakunin.pdf 10Pの図

なお、扶養親族の本人確認は、従業員がおこなうことになっていますので、中小企業側で扶養親族の本人確認までおこなう必要はありません。

収集方法と考慮すべき安全管理措置

マイナンバーを記載して作成、提出しなければならない書類を書面で作成している場合は、収集も書面でおこなうことになるのでしょうが、書面での収集、保管は電子データでおこなう場合に比べて漏洩、紛失等のリスクが高くなります。中小企業でもさまざまな事務にパソコンを利用しているのであれば、収集時から電子データにしていく方法をとりたいものです。以下、電子データ、書面での具体的な収集方法と考慮すべき安全管理措置をみておきましょう。

収集時に電子データとして入力、保管する方法

第1回に記載したとおり、今年の年末調整時に従業員などが提出する「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」から本人および扶養親族の氏名欄に個人番号を記入する欄が追加されます。

ただし、国税庁の「国税分野におけるFAQ」に6月に追加されたQ2-11)では、「平成28年分の扶養控除等申告書を平成27年中に源泉徴収義務者に提出する場合、その申告書に給与所得者本人等の個人番号を記載する必要はありません。」としています。

マイナンバーが記載された書類の管理には施錠可能な書庫などで厳重に管理することが求められますので、収集時にパソコンなどに入力し電子データとして保管する方法を取る場合は、平成28年分の扶養控除等申告書への個人番号の記載は求めず、従業員などから扶養親族の分も含めた通知カードを提供してもらい、それを確認しながら事務取扱担当者または責任者が個人番号を入力する方法を考えましょう。ただし、この方法では一時的ではあれ通知カードを預かることになり、これらの通知カードは従業員などに返還するまで施錠可能な書庫などで厳重に管理することが求められます。可能であれば、事務取扱担当者または責任者が番号確認のために立ち会い、本人に入力してもらう方法がとれれば、通知カードを預かる必要もありませんので、より安全な方法となります。

なお、入力された従業員などの個人番号データは、事務取扱担当者および責任者以外は、見たり印刷したりできないようにする必要があります。

書面で収集、書面で保管する方法

どうしても書面で個人番号を収集するしかない場合は、通知カードのコピーを集める方法もありますが、これでは施錠可能な書庫などで厳重に管理しなければならないことに加えて、従業員本人および扶養親族の分を関連づけて保管するための手間も増えてしまいます。

前項でみた「国税分野におけるFAQ」のQ2-11では、平成28年1月より前であっても、従業員などに対し、平成28年分の扶養控除等申告書に従業員本人等の個人番号を記載するよう求めても差し支えないとしています。どうしても書面で収集、保管するしかない場合は、個人番号欄が設けられた「平成28年分 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に従業員などの個人番号を記載して提出してもらい、提出時に従業員本人および扶養親族の通知カードの提示を求めて番号確認をおこなう方法をとることが、書面で収集する場合のベターな方法といえます。

この場合、提出を受けた扶養控除等申告書は、施錠可能な書庫などで厳重に管理し、事務取扱担当者および責任者以外は見ることができないように管理する必要があります。

次回は、収集したマイナンバーの保管から利用、提出までのプロセスを確認し、必要となる安全管理措置についてより詳細にみていきます。

著者略歴

中尾 健一(なかおけんいち)
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役
1982年、日本デジタル研究所 (JDL) 入社。30年以上にわたって日本の会計事務所のコンピュータ化をソフトウェアの観点から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS(エーサース)」を企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。マイナンバーエバンジェリストとして、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。