おいしい空の旅へ

英国格付け会社・スカイトラックスの評価でも度々上位にランクインされる航空会社のひとつが、香港をベースとしているキャセイパシフィック航空である。世界51カ国・地域の約200都市にネットワークを展開しているグローバルエアラインは、機内食でもこだわりの料理を提供している。そして、ビジネスクラスではあのスイーツとともに"特別な一杯"も楽しめるのだ。

隙間を埋めるラウンジグルメ

成田・羽田=香港間のフライトは4~5時間程度。行きは成田空港からだったので、フライト前にラウンジを利用した。料理は巻き寿司やいなり、オープンサンド、そしてミニサイズのカップヌードルなどが並び、あまり時間がとれないという人もさっと食べられる。

ドリンクはソフトドリンクにビールや日本酒、ワイン、スピリッツなどがそろい、「一番搾りスタウト」と「一番搾り生ビール」は自動サーバー仕様となっている。個人的には、ハーゲンダッツがいっぱい詰まった冷凍庫に子供心を大いにくすぐられてしまった。

ラウンジには短い時間でもさっと食べられるグルメがそろう。自動サーバーで泡もきれいに仕上げる

和の素材を活かしたメニュー

さて、搭乗だ。今回はB777-300で行く成田10:50発・香港14:40着(CX501便)のビジネスクラスを利用した。ウェルカムドリンクでシャンパンをいただきながら、ランチメニューを待つ。ビジネスクラスの食器には、シンプルなデザインの中にぬくもりを感じさせる日本ブランド「ナルミ」の白磁器を採用しており、メニューは前菜、メイン、チーズとデザートとフルコースで提供される。

前菜は、北海道産ホタテ・アボカドのタンバル・野菜サルサ、季節のサラダ(柚子ドレッシング)、シイタケを添えた梅蕎麦、パンと、和の素材を中心に添えたメニューが並ぶ。ちなみに、機内のビールでは日本のビールも楽しめる。

前菜の品々。基本ベースは和になっているようだ

柚子ドレッシングでいただく野菜はシャキシャキで歯ごたえもよく、やや甘めのつゆの梅蕎麦はのど越しもつるんとしており、丸々1個入ったシイタケはじわりと甘みが口いっぱいに広がる。これらの和の料理の中で、アボカドのタンバルはひとつのポイントになっているようだ。

メインは和洋中の3種から選べ、この時はブリの煮つけ、豪州産穀物飼育牛のテンダーロインステーキ、鴨のローストからチョイスできるようになっていた。今回選んだテンダーロインステーキは厚みもあり、旨味を閉じ込めながらも火を通しすぎて固くなることのない、ちょうどいいバランスで焼かれているようだった。肉にはたっぷりと赤ワイン仕立てのボルドレーズソースがかけられており、添えられたサツマイモのマッシュの甘みが何とも言えない。

メインの豪州産穀物飼育牛のテンダーロインステーキ

メインの後に提供されるチーズとフルーツは、客室乗務員が希望のメニューや量を一人ひとりに聞いて回り、その場で盛り合わせてくれる。メインメニューですでにおなかいっぱいだったのだが、「ちょっと休憩すればまだいける」などと、つい欲張っていろいろ盛ってもらってしまった。

チーズとフルーツは好きなものを自由にチョイスできる

イリーの至極の一杯を機内で

そして、キャセイならではの楽しみはここにもある。機内でイタリアンコーヒー「イリ―」を淹れたてで楽しめるほか、ハーゲンダッツもいただけるのだ。キャセイは2015年3月からビジネスクラスとファーストクラスでイリーを提供しており、機内で一番おいしい一杯に仕上げるために、イリーとともに独自の機内専用フィルターピロー開発した。イリ―のドリンクはブレンドコーヒーのほか、エスプレッソやカプチーノ、カフェラテも選べる。

香港サイズのハーゲンダッツをイリーのカプチーノとともに

まずはシグネチャードリンクから

帰りはB747-400で行く、香港16:25発・羽田21:35着(CX542便)のビジネスクラスを利用した。キャセイはB747-400を2016年末までに全て退役させる計画をしている。2階建てゆえのこの迫力ある面構えももうすぐ見納めと思うと、一抹の寂しさを禁じ得ない。

キャセイのB747-400は2016年いっぱいで退役となる

同機のビジネスクラスは、座席が通路に対して斜めに配置されたヘリンボーン式のフルフラットタイプ。離着陸の際に液晶画面を収納するほか、ベルトを2重にする必要はあるものの、160cm未満の筆者にとっては、どんなに足を延ばしても窮屈しない快適さは非常にありがたかった。

キャセイのウェルカムドリンクには、シグネチャードリンクとしてノンアルコールの「キャセイディライト」と、アルコールの「パシフィックサンライズ」が用意されている。キャセイディライトはキウイフルーツをベースにココナッツジュースとフレッシュミントを合わせたドリンクで濃厚な仕上がり。一方のパシフィックサンライズは、オレンジとレモンの刺激を加えたシャンパンとドランブイのカクテルになっている。

ウェルカムドリンクはここだけの「キャセイディライト」を

フルフラットになるビジネスシートは空間も広く使える

メニューは往路同様、前菜、メイン、チーズとデザートとフルコースで提供される。この時の前菜は、鮭の西京焼き、アーティチョークとミックスサラダ(胡麻醤油ドレッシング)、豆乳蕎麦、パンだった。錦糸卵にワサビをのせた豆乳蕎麦にも驚きだが、鮭の西京焼きに添えられているのがマスタードマヨネーズだったりと、興味深いオリジナルテイストが楽しめるようになっている。

復路の前菜。鮭の西京焼きはほろっと柔らかく、マスタードマヨネーズともよく合っていた

中華のシグネチャーディッシュも

そしてメインの和洋中は、鶏の塩焼き、豪州産プライムビーフテンダーロインステーキ、海老と芥藍菜(カイランサイ)の中華風が並ぶ。特にこの中華はシグネチャーディッシュのようで、メニュー表にも品切れになる場合もあると注意書きされていた。もちろん、このメインをいただくことにした。

ショウガが効いた大粒の海老がぎっしり詰まっており、ほんのり甘い芥藍菜と付け合わせのエシャレトはシャキシャキ食感。添えらたご飯はジャスミンライスで、やや柔らかく炊かれているようだった。

メインにはシグネチャーディッシュ「海老と芥藍菜(カイランサイ)の中華風」を

往路でもフルーツとチーズ、ハーゲンダッツ、そしてイリーの淹れたてコーヒーたちを楽しめる。あまりにおなかいっぱいになってしまったのでフルーツをスキップしたが、快適なシートでいただくフルコースはまた別格である。なお、ハーゲンダッツのロイヤルミルクティーは現在、日本では展開がないフレーバーだ。ぜひ機内で堪能していただきたい。

イリーのカフェラテとともに、チーズ&ハーゲンダッツタイム。ハーゲンダッツはロイヤルミルクティーフレーバーをオススメしたい

長距離路線のビジネスクラスともなるとなかなか手が出しにくいのが実情だが、中・近距離路線である日本=香港線のビジネスクラスなら、まだ手が届く贅沢と言えるだろう。今度のフライトではぜひ、試していただきたい。

※記事中の情報は2015年10月取材時のもの