前回は車両との「お別れ」の仕方でした。そして、さらに盛り上がる「お別れ」が路線の廃止です。しかし、地元からは「もっと早くこれだけの人が来てくれていれば廃止にはならなかったのに」と、遅すぎる鉄ちゃんの行動に疑問が持たれる場でもあります。今回は、情報収集を中心に路線の「お別れ」を解説します(鉄道名や駅名などの設定は架空です)。

テツヤくんは、現場にいた鉄ちゃんからマイコミ支線が廃止になると聞き、驚くばかり。「webサイトは見ているし、新聞やニュースもちょっとは見るのに、なんでこんな大ニュースを知らなかったのだろう? 」と不思議にすら思いました。家に帰ってマイコミ鉄道のwebサイトをよく見ると、一番下に小さく「マイコミ支線の今後について(PDF)」という小さな項目があり、クリックすると事務的な文章での説明が。日付は昨年の9月1日でした。

このように、廃止間際のマスコミの取り上げようからは考えられないくらい、廃止そのもののお知らせや報道は事務的です。特に、路線の一部だけを廃止するときは地味なのです。鉄道事業法で、事業の全部または一部の廃止はその1年前までに届け出ることが定められていますから(廃止までの期間が短縮されることもあります)、この情報をキャッチして前回の車両の引退の場合と同様に、マスコミが騒ぎ出す2、3カ月前までを目安に「お別れ」を済ませるのがベストなのです。

廃止を「大イベント」だと思うのは、直接その鉄道に関係のない人の感覚であって、経営努力や存続運動をしてきた人たちにしてみれば、廃止の決定というのは「残念な結果」なのです。そのことを踏まえた上でwebサイトや新聞、ニュースなどを見れば、今日もどこかで赤字ローカル線がギリギリの経営をしている事実が見えてきます。地元の鉄道、思い出の鉄道に対する「対策協議会」などが開かれていれば、その内容に注目してみましょう。政治ニュース、特に地方自治体の議事録も重要です。

次の週末、早速テツヤくんは車でマイコミ支線に行ってみました。混雑はしていましたが、激パというほどでもないです。しかし、既に車を止めるスペースがありません。「今日乗らなければもう後がないかもしれない」と思い、適当に駐車して乗車してきたら、なんと駐禁をとられてしまいました。冷静に考えれば当然のことですよね。鉄道の廃止は特別なイベントではないのですから、社会のルールは普段通りに適用されます。「違法駐車はしない」「私有地には立ち入らない」の大原則を忘れずに。

廃止間際の混雑は避けられませんが、マメに情報収集して、目的をしぼって計画的に動くことにより、少しは快適に「お別れ」することも可能になります。重要なのは、この工夫が自分のためばかりではなく、鉄道や沿線のためにもなるということです。しかし、鉄道会社にいきなり電話することだけは絶対に止めて下さい。

チェックしたい情報は主に、臨時列車、イベント、ヘッドマークの有無、テレビ放映のタイミングですが、もちろんのことながら鉄ちゃん自身が「何をしたいか」によってその情報の捉え方が変わってきます。例えば、「臨時列車が出る」との情報をキャッチしたら、「撮影のチャンスが増える! 」と浮かれてばかりはいられないのです。撮影のチャンスが増える分、沿線には鉄ちゃんが増えて混雑することが予想されます。

鉄ちゃんなら、廃止になる鉄道の晩節を汚さないためにも、考えもなく混雑の中に突入するのは止めていただきたいと思います。日本の鉄道経営は、どこも楽ではありません。しかし、沿線住民が年に1回乗車しただけで赤字を解消できると試算する鉄道もあります。また、「上下分離(車両を走らせるのは鉄道会社、インフラ整備は地方自治体、と経営を切り離す)」という方法で赤字ローカル線を存続させる動きもあり、公共交通を次の世代に繋げて行けるかどうか、この10年くらいが正念場とも言えます。「お別れ」を狙うなら、今日この時から情報収集を始めて美しい「お別れ」をしてもらいたいものです。

ミニ情報
鉄ちゃん御用達の書店 地元で探すには
主な鉄道雑誌には、後ろのほうのページに「バックナンバーを置いてあるお店」の一覧があります。そこに掲載されている店が、"その地域では鉄道関連書籍に強い"とも言えます。書店以外に注目したいのは、模型店、古書店。そして意外に充実しているのが、公共の図書館です。鉄ちゃんにとって鉄道はホビー・観光ですが、鉄道書は政治、経済、運輸といった分野に分類されていることもありますので、必ずその棚もチェックを。