もうすぐゴールデンウイーク。観光用の臨時列車も走る時期です。特別な列車というと、乗車もしたいし、撮影も楽しみたいと欲張りな気持ちになりますよね。最近は、駅停車中に短時間の撮影タイムを設けたり、絶景ポイントで停車や減速をするといったうれしい配慮をする列車もあります。これから2回にわたって、鉄道旅行中の撮影について解説します(鉄道名や駅名などの設定は架空です)。

テツヤくんはある休日、妹のみずほさんや姪のさくらちゃんにせがまれ、SLマイコミ号に乗車することになりました。テツヤくんが選んだのは、普段とは違う雄鹿土行きの「絶景SLマイコミ号」。この列車は、雰囲気のある数駅で10分程度の見学、撮影タイムを設けてくれるのです。また、景色がよいところでは減速もしてくれます。もちろん、ヘッドマーク付き。

姪のお守りをすることになりそうであまり気が進まなかったテツヤくんですが、よく考えてみるとSLマイコミ号の撮影はしたことがありますが、実は乗車経験はゼロ。「乗車しながらでも撮影はできるし、いい機会かも! 」と妹たちと鉄道の旅に出ることにしました。

テツヤくんたちが乗ったのは、最後尾の自由席・3号車。最初の停車駅に着くと、ホームには既にお出迎えの鉄ちゃんたちがいるではありませんか。しかも、テツヤくんたちは最後尾の車両に乗ったので先頭までは一番遠く、ヘッドマーク撮影に完全に出遅れてしまいました。でも、「何はともあれヘッドマークだけは撮影したい! 」と小走りをし、そのうち焦る気持ちから気が付けば全力疾走で機関車に向かっていました。

テツヤくんを見た姪のさくらちゃんも走り出し、「お兄ちゃん、危ないから走るのはやめてよ~」と、みずほさんが叫んでいます。そんな時、反対側のホームに普通列車が入ってきて、その時テツヤくんははっと我に返りました。「なんという危険なことをしていたんだろう」と反省しきりです。

こういう事態を避けるためにも、駅到着直前に前寄りの車両に移動しておくのがおすすめです。また、駅到着直後よりも発車直前のほうが人が引けて、撮影しやすいこともあります。乗り遅れに注意しながら、撮影を楽しんでください。なお、当然のことながら、撮影で席を立って戻ってきた時には他の人がその席に座っているかもしれませんので、そのことも頭に入れておいてください。

鉄道旅行自体はのんびりしたものですが、それに撮影という要素が加わると、けっこう忙しく、計画性も必要になってきます。こういった列車では家族サービスと鉄ちゃん活動を両立しようと殺気立っているお父さん、お母さんをよく見かけますが、観光用の列車といえども公共交通。ホームを走るなどの我を忘れた行動は自分が危険なばかりか、多くの人に迷惑をかける恐れがあります。

乗車や記念撮影といった場面できちんと順番を守り、周りの人に気配りをする姿を見せるということは、子どもに「公共の場」という概念を教えるいい機会になると思います。鉄ちゃんなら、そんな子どもたちのいいお手本になるように振る舞いたいですね。家族でおでかけの前に身近な列車を撮影して、駅や列車というものに慣れた状態で「本番」に臨むのもオススメですよ。

今回も、時間やスペースが限られた状況下での撮影で、「やっぱり大きな望遠レンズを付けた一眼レフカメラが欲しいな」と改めて思ったテツヤくんでした。

ミニ情報
JR九州・肥薩線の観光列車「いさぶろう号」「しんぺい号」
茶色のレトロな車体と、落ち着いた和風の内装が人気の観光用普通列車です。人吉-吉松間を約70分かけて走る間に、スイッチバック、ループ線を越える他、大畑(おこば)、矢岳、真幸(まさき)という木造駅舎の駅に約5分ずつ停車するので見学も可能。更に日本三大車窓のひとつ、「矢岳越え」の絶景を徐行しながら臨めます。自由席はあるものの地元の人向けの短いロングシート部分なので、指定券を買うのがおすすめです。