前回、テツヤくんは11月第1週の週末を最後に、SLマイコミ号(架空です)が冬期運休に入ることを知りました。今シーズンのまとめとして、年賀状に使えるような写真を撮りたくなりました。張り切って三脚を購入し、向かったのはマイコミ鉄道で一番縁起のいい名前である「御目出塔駅」(架空です)。「『おめでとう』の駅名板とSLをからめた写真は、きっと受けるだろうな」とイメージもふくらみます。

御目出塔駅に着いた早速テツヤくんは、駅裏側にある駐車場に車をとめました。目の前はもうホーム。「柵もないことだし、ちょっと入って撮ってきちゃおう」と軽い気持ちでホームによじ上ったその時……。

「お客さん! 入場券を買って改札から入って下さい!」と駅員さんの声が。突然注意されたテツヤくんは、「列車に乗る訳じゃないんだし、別にいいじゃないか」と思ってしまいましたが、すぐに自分の誤りに気が付きました。

駅は私有地。入口でもないところから勝手に入るのはもってのほか。正規の通路以外は、安全の保証もないのです。テツヤくんのように駅に入り込んでしまっては、不正乗車を疑われても仕方ありません。テツヤくんは高校を卒業してからは、交通手段といえばほとんどが車でした。当たり前に身に付いていたはずの正しい駅の使い方も忘れかけていたのです。

撮影だけが目的であっても、駅に入ったら乗客と同じ。駅での撮影の際は、必ず入場券を購入しましょう。不正乗車を疑われないためにも、駅員さんに撮影が目的であることを一声かけるといいでしょう。駅によっては昔ながらの厚紙でできた「硬券」や、絵はがきなどとセットになった「記念入場券」が発売されていることもあるので、楽しみの一つにしてみるといいですね。

御目出塔駅で「おめでとう記念入場券」を買ったテツヤくんは、改札口から入場し、思い描いた構図が作れる場所を探しました。「やっといい場所を見つけたから、いよいよ撮影だ!!」と思ったら、またもや駅員さんから「危ないですよ」と注意されてしまいました。冷静になって自分の立ち位置を見てみると、黄色い線の外側に身体がはみ出していた上に、地面には色あせた「立入禁止」の文字が。目には入っていたものの、これくらい無視してもいいだろうと思ってしまっていたのです。

交通の世界には、無視してもいい警告表示なんてありません。駅はアトラクションではないのです。交通機関なのです。そして、駅舎やホームでは基本的に三脚の使用が禁止されています。駅ビルなどの複合施設では、撮影そのものが制限されているケースもありますので、注意してください。

結局、当初のアイデア通りには撮影できなかったものの、おめでとう駅名板を主役にした写真を撮って、今日のところは引き上げたテツヤくんでした。「せっかく買った三脚も使えず、不完全燃焼!!」とぼやく気持ちもわかりますが、思い通りにはいかないのが鉄道撮影の難しさでもあり、おもしろさでもあります。駅での撮影は臨機応変に、そして完璧を目指さず、人の流れや列車の運行の妨げにならないことを第一に考えましょう。普段、鉄道を利用しない方は、駅本来の役割と姿を忘れないためにも乗客として駅を利用する機会を積極的に作っていただきたいと思います。

ミニ情報
ダイヤ改正に注目!
これからもっと鉄道を知りたいという方におすすめなのが、大きなダイヤ改正のチェックです。10月は例年、大きなダイヤ改正のある月で、2007年はJR北海道のダイヤ改正があります。北海道の方はもちろん、それ以外の地域の方も、10月1日にJR北海道の何がどう変わるのか注目してみてはいかがでしょうか。列車の本数や所要時間、列車性能、デザイン、内装などの変化に最近の鉄道事情が集約されているのです。