ファッション感覚でボランティアする大学生に思うこと

年に1回、「大学生がカンボジアに学校を設立したがる季節」というものがあると思っていて。だいたい、秋か冬。就職活動がいよいよ激化する時期に向けて、それまで見向きもしていなかったであろうカンボジアに、急に注力し始めるわけです。なんなら、彼らはそれまでカンボジアの場所すらあやふやだったんじゃないかとすら睨んでる。

で、カフェ等で、カンボジアが、ボランティアが、井戸が、など喧々諤々とやる様子を見かけるたびに、毎年のことだけにそろそろカンボジアに学校が建ち過ぎているんじゃないかな? 大丈夫かな? 狭くないかな? 日本で言うところの、道路挟んで2軒空きくらいの間隔でセブンイレブン建てちゃった現象みたくなってないかな? などと心配するわけです。

きっと、彼らの履歴書には「人が好き」とか「コミュニケーション能力が高い」とか、あとはそうだな、伝家の宝刀「好奇心旺盛」あたりも書かれてるんだろうなー、と。そりゃあ、人、好きだよなー、見ず知らずのカンボジア人に愛をね、アガペーをね、注ぎながら学校を設立するわけですから。もちろん、カンボジアを援助すること自体は間違ってないですし、何よりここで書いたようなファッション感覚でボランティアをする学生は全体の一部。

一連のこれは多分、「人が好き」「コミュニケーション能力が高い」を地で行く屈託のない人種に対する私の嫉妬も少し、入り交じっています。こっちはもう、コミュニケーションが苦手過ぎて、日々、防空壕に引きこもってるくらいでいますから。戦場に出ようとすらしていない。

人見知り問題……

前置きが長くなりましたが、筆者は極度の人見知りです。偏見だけど、まず間違いなくカンボジアに学校を建てには行かないタイプ。仕事柄もあってかほとんど信じてもらえないけれど、見知り一筋20数年。なんなら、人相手だけじゃなくて、モノや場所にすら見知る。なんかのプログラムの来歴風に言うなら、人見知りを首席で卒業、国内外の人見知りを牽引し、今最も今後の活躍が期待されてる若手人見知りの一人。

見ず知らずの人とあたりさわりのない気象事情などの話ひとつするにも、「例えばもし今『暑いですね』と発言した場合、暑いは暑いけど、これ言ったところで事実を述べるだけだし、天気の話に興味があると思われても困る。

むしろ気象ジャンルの知識にはどちらかというと疎いし、そして暑いと言ったところで、相手は『そうですねー』としか返しようがないから、申し訳ない、この話題では発展性がない…」と発言前にいちいち逡巡する始末。

ただ、この人見知り問題はひとつ気をつけなければならないことがあって、それは「アピールポイントとして使うなかれ」。処世術として適度な自虐で自らの位置を低く置くことが主流となっている昨今、「人見知り」は自分を落とし過ぎないちょうどいい塩梅の位置付けです。しかも、少し引っ込み思案でおしとやかそうに見えて、ちょっとかわいく見える、気がしてしまう(あくまで自分視点)。

「貧乳といえば……」(イラスト: 朝井麻由美)

「適度な自虐」には3種類ある

適度な自虐は、大きく分けて、「性格気質系」「能力系」「身体的特徴系」の3種類があります。「人見知り」は「性格気質系」にあたり、「能力系」は、「料理できない(しない)」、「身体的特徴系」は「貧乳宣言」などが代表的。料理上手など、ストレートに“女子っぽさ”を見せることが良しとされないからこそ自虐の鎧を着るわけなので、これらを声高らかに発信する女性が増えたのも自然な話ではあります。

これらの自虐がなぜアピールにならないかというと、「男性が本命にしたいかどうか」を考えたら一目瞭然なのです。

人見知りは、「知らない人を含んだ大勢でいるときにケアをしなければならない面倒くさい女」になり、料理ができないのは言わずもがな。以前、数人で鍋をしていた際、友人女子が「料理できないんです私!」と適度にガサツで付き合いやすいアピールをせんと、具材を一気に雑に放り込んだ際、普段その子の料理できないトークにはしゃぎながら参加していた男性陣の目は一切笑っていませんでした。

また、不特定多数に「貧乳宣言」をするのは、仲間内で槍玉にあげていい存在としてコンテンツとして消費されるだけ。何より、そもそも人前で「貧乳宣言」するくらいならば、本人は貧乳であることを本心ではたいして気にしていないため、男性の喜ぶソレとはニーズが一致していません。

そんなわけで、全国250万の乙女たちは、安易な自虐で自分をキャラ付けするのにはご注意を。そして、今回例に出した、人見知り・料理できない(しない)・貧乳がすべて自分に当てはまっている朝井先生に励ましのお便りを!(←悪い例)

<著者プロフィール>
朝井麻由美
フリーのライター・編集者。主なジャンルはサブカルチャー/女子カルチャーなど。体当たり取材が得意。雑誌「ROLa」やWeb「日刊サイゾー」「マイナビニュース」などでコラム連載中。近著[構成担当]に『女子校ルール』(中経出版)。Twitter @moyomoyomoyo

題字イラスト: 野出木彩