ありのままの姿を見せる人なんてそういない

「ありのー! ままのー!」という歌(『アナと雪の女王』)が流行っている昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか。世間では、アナ派だのエルサ派だの、レリゴー派だの、松派だの、たか子派だの、いろいろと言われていますが、ひとつ物申したいのは、タイトルにおけるエルサの存在感の無さったら。

一応、表向きアナとエルサのダブル主演と言われているけど、英題は「Frozen」ですよ、フローズン。どう見てもエルサ(雪の女王)のほうが主役度が高いじゃないの。アナのほうのフローズン要素、ゼロ。さて、雪の女王は、ありのままの姿見せるのよ、と決意したわけですが、世の中でありのままの姿を見せる人なんてそうそういない。今日はそんなお話です。

「グループに属してこなかった」サバサバ女子

ファミレスにて、向かいの席で女性2人組があまりに「サバサバサバサバ」言っているので、ずわい蟹のアメリカンソーススパゲティをフォークで巻き取る手を止めました。親の仇かってくらい、ずっと「サバサバ」というフレーズを繰り返しています。内容を要約すると、「自分がいかに今までの人生でグループに属したことがないか」を互いにプレゼンし合っている様子。サバサバしているから、集団でつるむことがなかった、とな。

この、「グループに属してこなかった」というセリフ、ちょっとした夢があるんですよね。どこにも属していない、ということは、誰とでもうまくやれるように見え、万能感がある。トランプにおけるジョーカーのような、数学で言えばnのような、nって言っておけば何でも代入できるみたいな、「自然数をnとすると」ってのっけから言われたときのnの何でもアリ感。

で、このセリフ、やたら言う人が多いんです。もうどう考えても、「本当にグループに属さずに生きてきた人」と、「『グループに属してこなかったんです』と主張する人」の数が合わない。グループに属してない人なんて学年に数人くらいしかいなかったはずなのに、3~4人に1人くらいの割合でこの主張をする人を見かけます。

この、他とは違う自分でいたいと言いたげな、尾崎感。みんなそんなに家出の計画をたてる仲間たちとかいなかったの? 誰にも縛られたくないと逃げ込んだ夜なわけ? バイクは? 盗むの?

「サバサバアピールし過ぎ注意!」(イラスト: 朝井麻由美)

それはほんとうに「サバサバ」しているのか

そもそも、特に女子の世界において「グループ」というのは兎角シビアなものです。だいたいが属するグループで自分のイメージが決まり、そのついて回るイメージが自分にとって不本意なものでも、受け入れる以外の選択肢はない。ざっくり言えば、オタクグループならオタクイメージ、ギャルグループならギャルイメージ、などといった具合に。

逆に、明確に所属しなければ、その「外からのイメージ」を曖昧なままにしておけます。つまり、属したくない・属してこなかった、という人は、実際にどこまで「属していなかった」かは別として、他者からの見られ方に人一倍、敏感なのではないか、と考えられます。そして、冒頭のファミレス2人組の言うところの「サバサバ」と「無所属アピール」は、似ているようで実はまったく重ならない特徴です。

本当に「サバサバ」していたら、自分がどう見られようと一切気にならないはず。イメージを固定されたくない、と人目を気にしているからこそ、決まったグループに所属せずに移籍を繰り返したり、「グループに属してこなかった」という発言をしたりするわけです。

かくいう私もその昔、自分の立ち位置に悩みすぎた挙げ句、1クールに1回は所属グループを変えていたのでした。連ドラ感覚。おかげで、いわゆる結婚式での「学生時代に仲良かった枠」からあぶれにあぶれ、誰からも一切呼ばれません。……「少しも寒くないわ」。レリゴー!

<著者プロフィール>
朝井麻由美
フリーのライター・編集者。主なジャンルはサブカルチャー/女子カルチャーなど。体当たり取材が得意。雑誌「ROLa」やWeb「日刊サイゾー」「マイナビニュース」などでコラム連載中。近著[構成担当]に『女子校ルール』(中経出版)。Twitter @moyomoyomoyo

題字イラスト: 野出木彩