【連載】

あの男、あの女 ~街角観察記~

1 SかMか問題

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微妙な関係性の男女が電車の中でかわす非常に微妙なギリギリの会話は、何にも代え難い名コンテンツだと思いませんか? そんな名コンテンツが先日も、終電間際の電車内で繰り広げられていました。

SかMか女に聞きたがる男

男「S? M? どっち?」

来た来た来た。SM問題。今や血液型診断と並んで、カジュアルにタイプ分けできるとして大活躍のツールです。合コンや終電の車中など、こう、性的なにおいのする場となると、たいていが血液型かSMかが用いられます。いわゆる、an・an状態ってやつです。

車内にいるのはそのan・an男女と私と、齢40歳程度のおばちゃん。それと、サラリーマンが数名。上り方面の終電は空いているがゆえに話が筒抜けです。私のほかに、一番近くに座っていたおばちゃんもどう見てもこのan・an劇場に聞き耳をたてています。さて、女のターンです。

女「(苦笑)……えー、どうなんでしょう? どっちに見えます?」

ボカしました! 伝家の宝刀「どっちに見えます?」、血液型トークのときも使われがちな戦法です。

女にMであってほしい男、女は?

女(24歳程度、仮にユリコとする)は、決して気の弱そうなタイプではないけれど、どこか自分の見せ方を迷っているような様子でもあります。これ、たぶんあれだ。自分の身の振り方を決めかねているんだ。相手の男(25歳程度、仮にタケオとする)がSかMかどっちの回答を求めているか分からないから、相手の出方を見ているんでしょう? そうでしょう、ユリコ! それと、自分が他人から見てどっちに見えているのかを聞きたい気持ちも少しあるね。と、私は一人勝手に納得したところで、タケオの次の出方を待つ。

男「いやMでしょ?(笑) Mでしょ?(笑)」

どうやら、タケオはユリコのことをMだと思っている様子。というよりも、Mであってほしいと思っている自称Sかもしれません。

女「そうですかね~(笑)」

男「絶対Mだって! Sはこういうとき否定するんだって! 俺Sだから分かるし!」

徐々に強引になっていくタケオ。親の仇かって勢いで斬りかかるタケオ。しかも、女の「そうですかね~」に若干かぶせ気味。もうほとんど、取り調べ。私の頭の中の妄想では、完全にカツ丼が出ているよタケオ! その後、「Mって言われることのほうが多いですかね」と答えたユリコの眉間に、一瞬シワが寄ったのを私は見逃しませんでした。

「私Mです」の意味とは

「電車の中は最高のエンターテインメント空間です」(イラスト: 朝井麻由美)

この会話におけるユリコの心情を述べるとしたら、たぶん、こうです。

●最初にSかMかを聞かれたとき:「出た、SMトーク。面倒だなぁ」「相手はなんと答えてほしいのか、相手の出方を見よう」「他人から見て自分がどちらっぽいのかは知りたい」が入り混じった気持ち。

●「Mでしょ」と言われたとき:「誰に対してもMってわけじゃないのに」と思っている。

ユリコの眉間にシワが寄ったところで私は降りてしまったので、その後の展開は知りません。ただ、「私Mです」は、「誰にいじっていただいてもいいサンドバッグです」の意では決してなく、「この人、いい!」とすでに好印象を抱いている相手に対してのみなんですよね。近くで聴いていたおばちゃん(仮に名付けるとしたらケイコ)もそう思ったはず。タケオに幸あれ。

<著者プロフィール>
朝井麻由美
フリーのライター・編集者。主なジャンルはサブカルチャー/女子カルチャーなど。体当たり取材が得意。雑誌「ROLa」やWeb「日刊サイゾー」「マイナビニュース」などでコラム連載中。近著[構成担当]に『女子校ルール』(中経出版)。Twitter @moyomoyomoyo

題字イラスト: 野出木彩

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インデックス

連載目次
第10回 「モテる」のは、果たして幸せなことなのか?
第9回 「人見知り」「貧乳」……自虐アピールの罠
第8回 非モテの本当の敵は『君に届け』の風早くんではない
第7回 女子グループに「属さない」本心
第6回 なぜ女子同士でベタベタとスキンシップするのか
第5回 ナンパされた自慢をする女子
第4回 女子会で仕切る女
第3回 「天然でしょ?」と聞いてくる男
第2回 女子の恋愛トークの闇
第1回 SかMか問題

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