世界で最初に近代的なトレードが確立された国……それは日本です。諸外国が占星術や易などの牧歌的な方法を使っていた時期、堂島の米相場ではチャート分析からアービットラージまで何でもありでした。では最先端を走っていた日本人の多くが、なぜ今になってFXで負けるのでしょうか?

本コラムでは欧米式トレードを1,400名超に教えるユーデミー人気講師が「日本人がFXで負ける理由」をバッサリ解説します。


もし世界最高のトレーダーでもFXから利益を上げられない条件があるとすれば、何でしょうか? その1つは「値段が動かないこと」かもしれません(※金利等は考慮から外しています)。

仮にドル円が一年中100円で固定されていたら、何をどうやっても差益を得ることはできないですものね。もちろん、ジョージ・ソロスのように中銀の底を割るだけの資金力でもあれば別ですが、ちょっと縁遠い話です(笑)

さて24時間取引ができることで、帰宅した後でもトレードができるのがFX人気の1つでもあります。ところが値動きの大きさは時間帯によって大きく変わってきます。

理由は簡単で、「地球が丸い」から!

当記事では、帰宅トレーダーが知っておくべき「ご当地通貨」について説明を試みます。

帰宅トレーダーが知っておくべき「ご当地通貨」とは?

帰宅トレーダー vs. ご当地通貨

トレードを志す方から、私が運営する「FX為替チャート」に最も多く寄せられる質問の1つはこちらです。

「昼間は勤めに出ておりトレードできる時間は夜の20時から23時に限られます。どのような取引を考えればよいでしょうか?」

幸いなことに、日本の帰宅トレーダーが取引を始める夜20時から23時の間は、ペア次第で大きな値動きを狙うことができます。そう、冒頭に述べた「利益を上げられない条件」には捉われずに済むのです。

ラッキー! と喜ぶのは少し早くて、「ペア次第で」という条件付きです。ためしに、2016年1月29日に観察されたチャートの実例を見てみましょう。日本時間の20時から23時の5分足チャートです。

図(1)米ドル vs. 日本円(USD/JPY)は0.5%の値動き

この期間で観測された最大の値動き幅は0.5%です。次はこちらのチャート。

図(2)英ポンド vs. 米ドル(GBP/USD)は0.62%の値動き

値動きの幅は0.62%と先ほどのペア(1)と比較して大きくなりました。最後はこちらです。

図(3)米ドルvsカナダドル(USD/CAD)は0.38%の値動き

値動き幅は0.38%に縮小しました。つまり同じ時間に取引される3ペアでも、値動きの大きさが上は0.62%から下は0.38%まで、大きな差があることが分かります。

小数点以下の数字だと現実味がわかないかもしれませんので、仮に1,000万円を投下してレバレッジを10倍に調整した場合の簡単なモデルケースを挙げてみます(※事例なので取引コストは考慮しません)。

するとUSD/CADに投じた場合の資金は38万円(0.38%)の上下で終わるのに対し、GBP/USDは62万円(0.62%)の変動となることがわかります。では、なぜペアによって同じ時間帯でも値動きの大きさにバラつきが出るのでしょうか? その秘密は「地球の丸さ」にあります!

ご当地ペアを攻略する!

私達人間は太陽の光を浴びて活動が活発になるようにできています。だから丸い地球の上でも、太陽があたっている地域のほうが経済活動も活発になります。そして、通貨は国と地域に属しているため、目が覚めている場所に根ざした「ご当地通貨」の方が、値動き自体も活発になります。

例えば日本の夜20時、東京の兜町にある東証は既にクローズしています。また米国ニューヨーク市場はオープンしていません。ところが時を同じくして、英国テムズ川近くのロンドン証券取引所は昼休み前。太陽の光も浴びて活発な活動をしています。

各地域の金融市場がオープンしている間は、その「ご当地通貨」が最も大量に取引されることになり、結果的に「ご当地通貨」が含まれるペアの値動きが大きくなるわけです。そう考えると、先述3事例の中でロンドンを起点とする英ポンドが含まれる通貨ペア(ポンドドル GBP/USD)の値動きが最も大きくなっていたことの理由が分かります。

ところが、こうした時間帯別の値動きの特性を把握せず市場に飛び込むと、中途半端な値動きのペアを掴んでしまいストレスばかり感じることになります。

ポンドドル(GBPUSD)が横でガンガン動いているのに、なぜ豪ドル円(AUDJPY)は動かないのだろう??

もし一度でもそんな疑問を感じたことがある方は、取引の時間を振り返ってみると、その原因が分かるかもしれません。

生活スタイルで取引方法は変わる

私たち日本人が「負けないトレード力」を身につけるためには、まず自分の生活スタイルから取引できる時間帯を明確にして、次にその時間帯の中でリズムが取りやすいペアを探すことが欠かせません。そうした土台を固めることができれば、帰宅トレーダーが取引できる20時から23時というのは、大きなチャンスに変えることができます。

何ごとも「急がば回れ」。日本にいることの不利・有利さを冷静に見比べ、強みが活かせるトレードのスタイルを身につけたいものですね。

執筆者プロフィール : 佐々木徹(ささきとおる)

「FX為替チャート」運営、株式会社ファム代表取締役、米国テクニカルアナリスト協会公認資格CMT検定1級保持者。現役トレーダー、起業家、マーケティング・ストラテジスト。 ベネッセが提供する米オンライン教育サービス「Udemy」にて1,640名(2016年2月現在)を超す受講生をもち、2014年には日本人初のトップ15講師入り。ユーデミー講義「迷いが晴れるトレーディングガイド」では、ライフスタイル別のトレード戦略を作り上げるための基礎を提供している。正解のない相場で生き残る5つの基本をまとめた無料レポート「負けないトレード力をあなたに」をプレゼント中。