イーストアングリア地方の玄関口、ノーリッジ駅

ノーリッジは観光地としてはあまりメジャーな場所ではありませんが、大聖堂と教会の点在する美しく住みやすい街として知られています。第4回のカンタベリー同様、大聖堂のある街には歴史的で趣のある独特のたたずまいがあり、ノーリッジもその例外ではありません。中世の面影を色濃く残す街の雰囲気全体がノーリッジの大きな見所といえるでしょう。

ノーリッジはヨーロッパ大陸に近いことから、歴史的にさまざまな民族の侵入を受けてきました。ノーリッジがノルマン人に征服された街だということは有名ですが、民族大移動の際、ブリテン島に侵入したアングロサクソン人が最初に街を築いたのも、実はノーリッジだったのです。

ノーリッジの街は教会だらけ

ノーリッジの東から海岸にかけての一帯は、「ザ・ブローズ(The broads)」と呼ばれる湿地帯が広がっています。」。古くから毛織物製品をオランダやベルギーなどの近隣諸国へ輸出するなど、交易の拠点として栄えていたノーリッジは、最もオランダに近いイギリスという立地条件も手伝って、イギリスのどの街よりもオランダの影響を強く受けています。どこまでも続く平野に水路が流れ、風車が点々と見られるその長閑な田園風景は、オランダにいるかと錯覚に陥るほどです。

私がノーリッジを最初に訪れたのは、コッツウォルズ滞在時でした。当時、休暇で日本から友人が遊びにきたので、ロンドン駐在中の友人と私で、ロンドンに集まりました。遊びに来た友人がロンドンに1週間滞在する間、「ロンドンから日帰りで行ける郊外の街に一緒に出かけよう!」ということになり、たまたま私たち3人の共通の知人がいるノーリッジへ行くということで話がまとまったのがきっかけでした。

平日だったため、ノーリッジにいる知人は仕事があったので、軽くランチを一緒にとった程度だったのですが、私たちはイギリスでの再会に大満足! 知人と別れた後は3人で隈なくノーリッジの街を観光して楽しみました。

ノーリッジ大聖堂の内部。アーチ型の高い天井が印象的。柱から天井にかけての繊細な装飾と、ステンドグラスは必見

ノーリッジといえば、ノーリッジ大聖堂とノーリッジ城! ということで私たちは最初にノーリッジ大聖堂(Norwich Cathedral)へ。街の東側に位置するノーリッジ駅からは、街を蛇行するウェンサム川(River Wensum)にかかる橋を渡り、あとは大聖堂の高い尖塔を目指して歩きます。駅からは15分ほどの距離だったでしょうか。96メートルにも及ぶこの高い尖塔は、ノーリッジの街のどこからでもすぐに見つけることができます。イギリス国内ではソールズベリーの大聖堂の次ぐ第2位の高さだそうです。

ノーリッジの街を蛇行する、ウェンサム川

ウェンサム川沿いにヨットクラブもありました

次に街の中心に位置するノーリッチ城(現在は博物館になっています)へ向かいました。ノーリッジのなかでも特に中世建築が多く見られるのが、ノーリッジ城博物館(Norwich Castle Museum)とエルム・ヒル(Elm Hill)周辺。かつてノルマン人が築いた城は今でも街を見下ろしており、城の内部はこの地方の歴史や工芸などが展示されています。

(左)赤やオレンジなどの色をした歴史的な建物が続く、エルム・ヒル(上)ノーリッジの典型的な家々

大聖堂のすぐ近くにあるエルム・ヒルは、石畳の狭く入り組んだ道が続いています。その道の両側には、テューダー朝時代の歴史的な建築物が立ち並び、まるで中世にタイムトリップしたような感覚に包まれます。やや小じんまりとしていますが、アンティーク・ショップや小さなギャラリーなどの素敵なお店があり、大変趣のある楽しい通りです。雰囲気がいいので、映画のロケ地としてもよく使われている場所だそうですよ。

ノーリッジの街の風景。街のモニュメントを見て歩くと中世の雰囲気を堪能できる?

また、近年ではショッピングに出かけたい街のトップ10に選ばれるなど、ノーリッジはショッピングの街としても注目を集めています。市庁舎(City Hall)前のマーケット・プレイス(Market Place)は、11世紀から続く歴史のある市場で、広場一面に並ぶカラフルなテントは街の風景に花を添えています。日曜日以外オープンしているこのマーケットには、近隣の街からも多くの人が訪れ、衣料品、食物、雑貨などのお店が軒を連ね、まるで迷路のようです。

市庁舎前の色とりどりのマーケット

街で見かけた日本食レストラン『AH-SO』。「こんにちは~。」と愛嬌を振りまく地元の人たち

街の映画館。まるで教会を改造したような造り

広場の南側にある、ショッピングモール「ロイヤル・アーケード(The Royal Arcade)」の中には、ギフトショップ、ジュエリー、革製品、デリカテッセンなどの数々のお店が入っていますが、なかでもぜひ立ち寄ってもらいたいのが、The Colmans'Mustard shop(コルマンズ・マスタード・ショップ)の本店です。

黄色いラベルに赤文字が目印。コルマンズの定番『イングリッシュ・マスタード』

180年の伝統を誇る、老舗コルマンズの定番「イングリッシュ・マスタード(English Mustard)」は、日本のからしほど辛くはないマイルドな味が特徴です。イギリスの家庭ではじゃがいも、肉、魚料理のスパイスとして使われ、イギリス料理には欠かせないというほど愛されています。このイングリッシュ・マスタードはイギリスの全国のスーパーなどでも気軽に買うことができますが、ノーリッジ本店では、本店でしか買えない粒マスタード、レッドペッパー入り、ビネガーやハニー風味など、いろいろな種類の珍しいマスタードが取り揃えてあります。そのほか、お店ではマスタードポット、エプロンやティータオルなどのグッズも置いてあります。ノーリッジ土産にぜひいかがでしょうか。

次は、北東イングランドの城塞都市、ヨークへと向かいます。