【連載】
前回までの対談では、RSSフィードなどからの情報を、どうすれば効率的に取得、収集できるか。つまり「集める情報源」の見つけ方を考えてきました。今回は、集めた情報をどう整理し、どう分類すれば、あとから探しやすくなるか、その方法を考えます。
堀 佐々木さんも Evernote のヘビーユーザーだと思うのですが、私とは情報の整理の仕方がとても違うんですよね。
佐々木 そんなに違いますか?
堀 お話をいつもうかがっていると、私と佐々木さんとでは軸足が違うのではないかとよく感じます。
佐々木 軸足というと?
堀 一度いれた情報をどのように整理するかという問題に対して、佐々木さんのはタグで95%を解決していますが、私は同じくらいを複数のノートブックを作ることで管理しているんです。この違いに興味があります。
佐々木 なるほどそうですね。私は、フォルダ式に整理する機能と、タグ式に整理する機能の両方をもつツールがあったら、できれば100%タグで整理したいと思っています。タグはフォルダよりも、自在な分類方法なので。
堀 そうですね。1つのメモが複数のノートをまたぐことができないけれども、タグだったら、2つのタグで表現された概念をまたいで登録することが可能ですね。でもよく聞かれるかと思うのですが、タグは自由すぎるので、かえってそのときそのとき適当につけていて、混乱しないのでしょうか?
佐々木 確かによくそう尋ねられます。ですが、最初は混乱気味でも良いのです。使っているうちに、自然と秩序ができてきます。
堀 そうなのですか。たとえば、あるノートに対して「面白い」というタグをつけた場合、それが「笑える」という意味の「面白い」なのか、「興味深い」なのか、「一般的に注目すべき」なのか、意味合いがずれることがあると思うのです。これはどうやって回避していますか。
佐々木 タグにしてもフォルダにしても、分類する目的は「ターゲットを思い出す」ことです。思い出すときに、分類が適切だったかどうかが明らかになる。「面白い」「笑える」「興味深い」「注目すべき」というタグがあったとしても、「EVERNOTEにとっておいたあの面白いサイトはどこだっけな」と考えたとき、「面白い」のタグからちゃんとそのサイトを見つけ出せたなら、そのタグは機能しているということになります。しかし、見つけ出せなかったり、見つけるのに苦労したりしたら、タグを考え直さなければならない。
堀 どう変えるのでしょう?
佐々木 たとえば「面白い」で探そうとしたサイトが「笑える」に入っていて、しかも「面白い」には入っておらず、そのために探すのに苦労したら、付け替えます。または「笑える」をなくすかもしれません。そのように、検索で苦労したら、その都度タグを更新するのです。その積み重ねの結果、タグは私の「思い出すときに使う思考のプロセス」を反映していくようになります。
堀 なるほど、メモに対してタグを付けるのはメモを作るときですので、感覚的に「このメモを表現するタグは何だろう?」という意識で付けがちですが、むしろ検索するときのことを想定してタグを整理するのですね。
佐々木 私自身の体験で言うと、たとえば先日「なんとかの10のリスト」というブログをクリップしてEVERNOTEに保存していたことを覚えていたのですが、それが簡単に見つからなかった。ということは、タグに不備があるわけです。検索できなかった場合に「リスト」というタグが必要だというニーズが明らかになる。
堀 なるほど。しかしそうすると、タグが増える一方になる、という問題がありませんか?
佐々木 増えてもそれほど問題ない、と思いますが、たとえば「リスト」というタグをつけようとしたとき、似たようなタグがなかったかどうか、気になりますね。その際に、どこにどういうタグがあり、それらはなぜ機能していないかをチェックする。意味の無かったタグ、その周辺のタグが果たして概念をうまく包摂しているかをチェックします。
堀 そのようにして検索に対して効果をもっていないタグの数を適宜減らしていくわけですね。
佐々木 ええ。さらにここがすごく気にしている点なのですが、ブログのキーワードと同じで、読者(=未来の自分)がタグに対して関連性を想起するものになっているか。あるタグの中に、どう見ても相互に関連していない情報が混じっていては、いけないわけです。
堀 なるほど、僕がタグが苦手なのは即興でつけてそのままにしているからだと反省しました。つけるときと、探すときの思考は違う。最終的には探すときの方の思考にむかって収束してゆくべきもの、ということなのですね。
心理学の用語で、記憶したものを思い出すことを「再生」と言いますが、「再生」するには頭の中を「検索」しなければなりません。その「検索」する際、脳に記憶された膨大な情報から、適切な内容を「再生」するには、関連する情報を有効利用する必要があります。そのような関連する情報を、「検索手がかり」と言います。EVERNOTEのタグは、まさしくその「検索手がかり」となるものです。
今回は私、堀がいつも悩んでいたEvernoteのタグ管理について佐々木さんにお聞きしてみました。タグという、自由で強力な機能がその真価を発揮できずに放り出されたままにならないようにするための大切なヒントをうかがうことができた気がします。 タグ機能はいまやEvernote だけではなく、MacのiPhoto、タスク管理サービスのRemember the Milk、または写真共有サイトのFlickrなど、さまざまなアプリケーションやサービスで利用されています。
タグを従えれば、いくら情報が多くなったとしてもそれが失われることを恐れることはありません。膨大な記憶と情報を頭の外に格納するとき、ぜひみなさんもそれを再生するためのタグの活用法を意識してみて下さい。
佐々木 正悟(ささき しょうご)
心理学ジャーナリスト
「ハック」ブームの仕掛け人の一人。専門は認知心理学。 1973年北海道旭川市生まれ。97年獨協大学卒業後、ドコモサービスで働く。2001年アヴィラ大学心理学科に留学。同大学卒業後、04年ネバダ州立大学リノ校・実験心理科博士課程に移籍。2005年に帰国。 著書に、ベストセラーとなったハックシリーズ『スピードハックス』『チームハックス』(日本実業出版社)のほかに『ブレインハックス』(毎日コミュニケーションズ) 『一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方』(ソーテック)などある。
堀 E. 正岳(ほり まさたけ)
ブロガー・気候学者
1973 年アメリカ・イリノイ州エヴァンストン生まれ。筑波大学地球科学研究科(単位取得退学)。理学博士。地球温暖化の影響評価と気候モデル解析を中心として研究活動を続けている。その一方でアメリカでライフハックが誕生したころからその流行を追い続け、最新のハックやツール、仕事術や自己啓発に至る幅広いテーマをブログ Lifehacking.jp で紹介している。 著書に、「情報ダイエット仕事術」(大和書房)、「英語ハックス」 (日本実業出版社、佐々木正悟氏との共著)、Lifehacks PRESS vol2 (技術評論社、共著)がある。
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