誰でもLINEスタンプを制作・販売できる「LINE Creators Market」。このプラットフォームが立ち上がったことで、これまでの企業主体のLINEスタンプには見られなかった、個性豊かな「クリエイターズスタンプ」が数多くリリースされています。

この連載では、人気を集めているオリジナルのLINEスタンプを生み出したクリエイターたちに、スタンプのコンセプトや制作時の具体的な作業量、そして売り上げなどを聞いていきます。今回は、アメリカのホームドラマ風の登場人物が関西弁をあやつるコミカルなスタンプ「アメリカンポップ関西弁」を手がけた小嶋わにさんにお話をうかがいました。

――最初に、プロフィールと普段のお仕事内容について簡単にお教えください。

学生です。専攻は文系。幼いころから絵を描くのが好きで、落書きばかりしていました。

――プロフィールに付随して、スタンプや普段のイラスト制作時の作業環境についてお教えください。

パソコン:Lenovo ThinkPad SL510
使用ソフト:SAI 1.1.0、AzPainter2
使用デバイス:WACOM Bamboo

――「Line Creators Market」でスタンプを制作・販売しようと考えたきっかけは?

サービス開始前にTwitterで「こういうのが始まるらしいよ」というツイートを見て。自分で作ったスタンプを自分で使えたら面白そうだと思いました。

――リリースされたスタンプのコンセプトをお教えください。

・アメリカンポップ関西弁…ポップな外国人の絵+関西弁

・サングラスベイビー…ポップな赤ちゃんの絵+サングラス

基本的に、タイトルがそのままそのスタンプのコンセプトです。

「アメリカンポップ関西弁」の一部

――ラフ段階では全部で何案ほどスタンプ用のイラストを制作されましたか?

ほぼ40点。まず案を出し切ってからラフや下書きの段階に入りました。制作途中で新たに思いついた案を採用したり、既存のものをボツにしたりしたので、初期案がそのまま全てスタンプになったわけではありませんが。

――スタンプを作るにあたって、イラストを描く時とは異なる工夫をした点を教えてください。

線を太くすることです。今現在、主線はSAIの鉛筆ツールで描いているのですが、普段の趣味の絵では0.8~4pxの太さで描いていることが多いです。しかし、スタンプにするには(特にポップな絵では)線が太い方が映えると思ったので、「アメリカンポップ関西弁」は7~9pxで描きました。

――利用した人から「これは便利!」と言われるスタンプの絵柄は?

何人かの友人に尋ねたところ、「せやな」、「ほんまそれ」、「お前天才やな…」、「本当に申し訳ありませんでした」あたりが便利だそうです。

――ご自身で特に気に入っているスタンプの絵柄はどれですか?

アメリカンポップ関西弁では、「晩飯なに!?」「カレーやで~」のふたつ。サングラスベイビーでは「HI」と背中からこてんと転んでいるスタンプです。

小嶋さんがお気に入りの「晩飯なに!?」、「カレーやで~」のスタンプ

――関西弁のテキストとアメリカンな人物のギャップが面白いスタンプですが、このアイデアはどんな風に思いつかれたのですか?

アメリカンポップアートやアメコミ調の絵柄はもともと好きだったので、それを使おうとあらかじめ決めていました。そうするとキャラクターは自然と一昔前のホームドラマのようなイメージになり、ビジュアルはわりと早くに決まりました。

あとはメッセージですが、テレビ番組でよく外国人にインタビューするコーナーがありますよね。それに出ている外国人が、時々なまっているのがとってもチャーミングだと思っていたので、その組み合わせをスタンプに使いました。関西弁にしたのは、関西弁自体が面白さを持っているのと、やはり知名度があるので、大抵のフレーズは関西圏外の人でも理解できるところがいいと思ったからです。

「アメリカンポップ関西弁」の一部

――例えば「せやな」「ほんまそれ」など連続したストーリーを感じさせる絵柄を複数盛り込み、LINEスタンプの定番である「壁からのぞく」ポーズひとつ取っても、ややクセのある構図を用いるなど、"面白さ"を生み出すするためのアイデアが多く盛り込まれていると感じました。こうした工夫を忍ばせるにあたって一貫して心がけていたことなどありますか?

細かいところまで見てくださってありがとうございます。わざと同じようなポーズにしているもの以外で、ポーズがかぶらないようにはしましたが、意識したことは特にありません。ただ、アメリカンっぽくするために身ぶり手ぶりを大げさにしたので、それが雰囲気作りをしてくれたのかもしれません。

――スタンプを作ったことで変化したことはありますか?

大量に絵を描いたので、パソコンのメモリがいっぱいになり、常に「メモリの空き容量を増やしてくれ」と怒られています。OSも古いので買い替えを検討しています。

――これまでのスタンプの売り上げをお教えください。

売り上げについてはお答えしないことにしています。

――最後に、これからスタンプを作るクリエイターに向けて、ひとつだけ「スタンプ作りのTips(豆知識)」を教えてください。

自分が使いたいスタンプを作ること。全く売れなくても自分が楽しめますし、誰かが気に入ってくれたときのうれしさも格別です。