誰でもLINEスタンプを制作・販売できる「LINE Creators Market」。このプラットフォームが立ち上がったことで、これまでの企業主体のLINEスタンプには見られなかった、個性豊かな「クリエイターズスタンプ」が数多くリリースされています。

この連載では、人気を集めているオリジナルのLINEスタンプを生み出したクリエイターたちに、スタンプのコンセプトや制作時の具体的な作業量、そして売り上げなどを聞いていきます。今回は、「既読スルー」を指摘する"彼女"が人気を博したスタンプ「もっと私にかまってよ!」の作者・森もり子さんにお話をうかがいました。

――最初に、プロフィールと普段のお仕事内容について簡単にお教えください。

森もり子です。25歳です。最近まで普通の営業職の会社員でしたが、今は無職です。Twitterを中心にいろいろと活動しています。

――プロフィールに付随して、スタンプや普段のイラスト制作時の作業環境についてお教えください。

パソコン:MacBook Pro
使用ソフト:FireAlpaca,CLIP STUDIO PAINT,photoshopCC
使用デバイス:wacom intuos3

――「LINE Creators Market」でスタンプを販売しようと考えたきっかけは?

もともとTwitterで恋愛ネタをつぶやいていて、何か形にしようと思っていた時に、「LINE Creators Market」が発表されたので作ってみようと考えました。自分のやりたいことと、LINEスタンプというものがうまくマッチしていると思ったので。

――リリースされたスタンプのコンセプトをお教えください。

「返事をくれない彼氏を追い込むスタンプ」をコンセプトにしています。自分自身の面倒くさい恋愛観を投影してキャラクターを作りました。LINEというコミュニケーションツールと恋愛にのめり込む女の子の相性がいいと思い、このコンセプトにしました。

返信してこない彼氏を"追い詰める系"の絵柄

――ラフ段階では全部で何案ほどスタンプ用のイラストを制作されましたか?

基本的にラフはスタンプの世界観を固めるために10案ほど落描きした程度で、残りは文章で「今どこ」「キス」「土下座」などと40案そろえました。その後、ひとつひとつスタンプデータを制作していきました。

――スタンプを作るにあたって、イラストを描く時とは異なる工夫をした点を教えてください。

コミュニケーションのツールなので全てのイラストは必ず使用シーンを想像して描きました。また、ストアで40個のスタンプが並んだときのビジュアル考えて、スタンプを全て並べて順番の変更やイラストの修正を行いました。そのほかには、審査の基準に沿うように暴力表現や言葉には注意しました。

――利用した人から「これは便利!」と言われるスタンプの絵柄は?

「何してんの?」や「だれといるの?」のような追い詰める系のスタンプは使われているのをよく見ます。

――ご自身で特に気に入っているスタンプの絵柄はどれですか?

「既読じゃん…」はこのスタンプの中で一番重要なスタンプですので愛着があります。

――「もっと私にかまってよ!」は当時特に話題となっていた「既読スルー」に切り込むエッジの立った絵柄が注目を集めましたが、シニカルな表情のスタンプの合間に「カワイイ」顔をしたスタンプもあったのが印象的でした。「かわいい」と「うざい」を比率にするとおおよそどれくらいの配分にされたのでしょうか?

40案を出す段階で「追い詰める系」、「デレデレ系」、「日常系」と三つに分け、バランスを考えて案を出しました。このスタンプのネタの核となる「追い詰める系」は実は10~15案ほどしかありません。

比率としてはかわいい(デレデレ系、日常系)6割、うざい(追い詰める系)4割くらいです。使いやすさを考えた結果、この配分になりました。

「既読スルー」指摘の絵柄のインパクトの陰で、泣いている様子や笑った表情など、かわいい感じの絵柄も実は多く収録されている

――スタンプを作ったことで変化したことはありますか?

LINEスタンプを見てくれた方からイラスト・文章などのお仕事をいただけたことです。マイナビニュースでもコラムを書かせていただきました。これからもLINEスタンプだけに限らず、面白いことをやっていければいいと思っています。

――これまでのスタンプの売り上げをお教えください。

手元に入ってくる金額は最初の2カ月で500万円くらいです。

――最後に、これからスタンプを作るクリエイターに向けて、ひとつだけ「スタンプ作りのTips」を教えてください。

私もひとつしか作っていないのであまり偉そうなことは言えませんが、目指すべきなのはスタンプを「買ってもらうこと」ではなく「使ってもらうこと」だと思います。