【連載】

「健康職場」のお手本

11 "残業ゼロ"で業績を上げ続けるために - ランクアップ(前編)

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通販化粧品会社のランクアップは、2005年の創業以来、右肩上がりで業績を伸ばしている。2014年度には売上高59億円を達成した。そんなランクアップの大きな特徴に「残業ゼロ」がある。残業をせずに業績を上げ続ける秘訣はどこにあるのだろうか。同社代表取締役の岩崎裕美子氏にお話を伺った。

働くママのための残業ゼロ

――朝8時半からのヨガ教室を見学させていただきましたが、かなり本格的でした。リフレッシュした気分で仕事を始められそうですね。

17時に帰らなきゃいけない会社ですから、いかに集中するかも重要なんです。5分の使い方も全然違います。

――「17時に帰らなきゃいけない」という残業ゼロの仕組みは、どのように構築されたのでしょうか?

もともとのきっかけは、前職の経験です。私と取締役の日高はベンチャーの広告代理店で営業をしていたんですが、毎日、終電まで働く激務でした。寝ないで働くような職場ですと、はじめは売上が上がりますが、離職者がどんどん増えていって、ある段階で会社が継続的に成長することが難しくなるんです。管理職が全員辞めたことすらありました。このときの経験から、自分で会社を作ったら、長時間労働は絶対にさせないと決めていたんです。と言っても、ランクアップの創業当時は、19時~20時までに帰るくらいでしたが。

――それでも、終電まで働く職場から比べると、限りなく残業が少ないように見えます。

さらに残業ゼロを目指す契機となったのは、私の出産です。今から6年前、当時41歳で、人生初の出産をしました。子育てをしていると、どんなに忙しくても、頑張っている社員を残して保育園のお迎えに行かなければなりません。家では、せかしながらご飯を食べさせて、お風呂に入れて、寝かせます。いつも慌てていて、仕事も育児も家事もすべて中途半端で、うつになりそうなくらいストレスがたまる日々でした。

ランクアップで働いている社員はほとんどが女性です。ここで残業ゼロの会社に変えないと、私の後に出産して復帰するママたちが、同じようにつらい思いをします。せっかく子どもを産んだのだから、仕事も子育ても両方楽しんでほしい。本気でそう考えて、「定時に帰る会社にしよう」と決めたんです。

――社内には何名の女性社員がいるのでしょうか?

社員は43人で、男性は2人、ワーキングママが15人です。現在は育休者が6人、妊娠中が1人いて、常におめでたです。

隔週で開催されるヨガ教室

残業を減らすために

――残業を減らすために、どのような取り組みをされているのですか?

ランクアップ 代表取締役 岩崎裕美子氏

早上がりのために声をかけるのはもちろんですが、それでも残業させてほしいという社員に対しては、「抱えている仕事の棚卸し」をしました。業務を一つひとつチェックすると、"使っていない帳票の更新"といった無駄な作業がけっこう見つかるんです。それらを徹底的に洗い出して、仕事量を減らしていきました。

それから、「転記作業はシステム化」しました。いろいろな会社から帳票が届きますが、これをいちいち手打ちで転記していると、時間がかかる上にミスが発生するので、すべて自動化したんです。また、「取引先間をつなげる」ことも積極的に実施しています。例えば、コールセンターを外部委託しているのですが、配送を依頼している運送会社とも連携してもらって、私たちがいなくても配送トラブルが解消できるようにしています。

――自分たちが見ていなくて不安はありませんか?

定期的に合同ミーティングをしていますので、不安はありません。自分たちを介すと仕事が遅くなりますので、どこの取引先にもある程度の権限委譲をしています。

17時退社を制度化

――取引先まで巻き込んで、残業を減らしていったのですね。

減ってはいたのですが、この時点では、まだ残業する社員はいなくなりませんでした。切りの良いところまで、と30分残業してから帰るような人が必ずいたからです。それが大きく変わったのは、東日本大震災がきっかけです。私たちは震災直後にサマータイムを導入して、定時を朝8時半~17時に変更しました。8時間労働なら17時半退社ですが、当時は電力不足で夜道も暗く不安だったので、30分早く帰らせていたんです。社員たちも17時ぴったりに帰っていました。

3カ月がたち、そんな非常事態もやがて落ち着いてきて、定時を元に戻そうとしたとき「17時定時を続けてほしい」と社員から要望があったんです。確かに、17時定時の頃は、みんなの集中力も効率もまるで違っていました。しかし、経営者としては、1日30分、1年間で15日分の給料を働かない時間に支払うことになります。それに何より、残業しないことで「売上が落ちたらどうしよう」と不安でした。迷いに迷った結果、「業績が落ちたら17時半退社に戻す」という条件で17時退社を続けることにしました。決断には勇気が要りましたが、ここから17時に帰る文化が生まれたんです。そして、残業は減ったのに、売上は上がりました。17時退社をはじめた年度の売上は31億円で、対前年140%を達成したんです。

――残業ゼロを達成して、売上が上がり続けて、良いことずくめのように感じます。

……ところが、当時の職場の雰囲気は最悪だったんです。

*  *  *

17時退社を達成し、業績が好調だったにもかかわらず、なぜランクアップは「雰囲気最悪の職場」だったのか。そして、そこからどのように改善していったのだろうか。後編も引き続き岩崎裕美子氏へのインタビューをお届けする。

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インデックス

連載目次
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第13回 エンジニアがやめない会社の働き方とは? - テックファーム(前編)
第12回 "残業ゼロ"で業績を上げ続けるために - ランクアップ(後編)
第11回 "残業ゼロ"で業績を上げ続けるために - ランクアップ(前編)
第10回 離職率を"28%"から"4%"に改善した「サイボウズ流」人事制度 - サイボウズ(後編)
第9回 離職率を"28%"から"4%"に改善した「サイボウズ流」人事制度 - サイボウズ(前編)
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