「トワイライトエクスプレス」、直訳すると「黄昏急行」。名前からしてもう、めくるめく魅惑の夜行列車という雰囲気ですよね。

上淀川橋りょうを渡る寝台特急「トワイライトエクスプレス」

「トワイライトエクスプレス」は筆者の心をわしづかみにした寝台列車のひとつです。しかし、いままで一度も乗ったことがありません。ひとりで乗ったら寂しそうだからです。「いつか新婚旅行で乗るぞ!」なんて思いながら、気がつけば取返しのつかない年齢に。そして「トワイライトエクスプレス」も、来年春で終わってしまうというではありませんか。

あと半年。もし万が一、乗ることがあれば……と思いつつ、もし乗れたとしても、きっとものすごく心の葛藤を感じると思うんですね。だってあの寝心地の良さそうなベッド、絶対ぐっすり眠りたいじゃないですか。その一方で、せっかくの豪華な列車旅ですし、窓の外を流れる真夜中の世界を一晩中見ていたい! 見ないと絶対に後悔する! そんな思いもあります。だから寝ている暇なんてない、とはいえ、あのベッドで寝ないというのはもったいなくないのか? 乗る前からもう、心は千々に乱れますよね。

まあ、よほど特殊な事でも起こらない限り、寝台特急「トワイライトエクスプレス」に乗れないまま終わりそうな気がしています。

「トワイライトエクスプレス」下り列車は大阪駅を11時50分に発車

札幌駅からの上り列車は、定刻だと12時50分頃に新大阪~大阪間を通過する

混雑する横目に発車する夜行列車、すごくいい!

限られた日程でどこかへ旅行する場合、現地での時間を有効に使おうとしたら、夜間に移動するのが合理的です。そのために、昔は夜行列車がたくさん走っていました。普通・急行・特急など、いろいろな種類の夜汽車が、日本を縦横無尽に走っていたのです。この「夜汽車」という言葉がまた、いいじゃないですか。

筆者も大人になってから、夜汽車に乗ることが何度かありました。リクライニングではない真四角な椅子席の列車から、ゆったり眠れる寝台列車まで。

夜行列車は本当に面白いですね。以前、大阪駅を23時頃に出るシュプール号に乗ったことがあるのですが、遅くまで仕事して帰宅する人や宴会帰りのご機嫌な人々でそこそこ混雑しているホームを眺めつつ、ゆったりと布団を被って横になる感覚。この、内と外の大きなギャップがものすごくいいんですよね。

寝台列車にはA寝台・B寝台があり、もちろんA寝台のほうが上等です。ただし、鉄道好きの間では、禁断の「C寝台」というものもあるそうです。でもそんなきっぷを実際に売ってるわけではなくて、車内の横になれる場所を見つけて勝手に横になるという、イリーガルでアウトローな寝台です。初心者は床に新聞紙を敷くというスタイルですが、上級者になると網棚という荒くれ者もいたとか……、そんな噂も聞きます。

まあ、それだけ鉄道も世の中ものんびりした時代でした。

その後、新幹線があちこち走るようになって、そういう夜汽車はどんどん減っていきましたね。もともと鉄道というのは移動の手段なので、なにも真夜中に移動しなくても、すばやく目的地に行けるならそれが正解なのでしょう。

運行終了まであと半年、沿線には多くの鉄道ファンが

今回は淀川に架かる鉄橋付近で「トワイライトエクスプレス」を待ち構えた

3連休の最終日、「トワイライトエクスプレス」を元気なうちに見ておこうと思って、淀川の堤防へ行ってみました。ちょっと早めに行ったのですが、すでに数人の鉄道ファンがスタンバイしてました。

それにしても、この辺のJR線はいいですね。待ってる間も、走ってくる車両のバリエーションが豊富で退屈しません。それに複々線なので、サイド・バイ・サイドで抜きつ抜かれつする快速と普通、なんていうのも見られます。

しばらく経って正午前に、札幌駅へ向かう下り寝台特急「トワイライトエクスプレス」を見送りました。上淀川橋りょうの上り側線路は、鉄橋のトラスが邪魔ですね。それから約1時間後の13時前、札幌駅から丸1日近くかけてやって来た上り寝台特急「トワイライトエクスプレス」を迎えます。今度はトラスもなく、しかも順光で良い感じです。

特急「こうのとり」「スーパーはくと」「サンダーバード」、さらには新快速・快速など、この区間を走る列車はバラエティに富んでいる

ところで、「トワイライトエクスプレス」の走行シーンを眺めながら、ふと思いました。「この、行った列車と来た列車と、どの辺ですれ違うのだろう? それ、来春までに撮っとかないといかんのではないかな」と。実際には京都駅の少し手前ですれ違うらしいのですが、そのシーンはぜひ見ておきたいという気持ちになりました。

とはいえ、「トワイライトエクスプレス」運行終了まであと半年……。なんか難しそうな課題を抱えてしまった気がしています。