以前からちらちらっと書いていますが、筆者の住む町の近くに阪神電気鉄道の甲子園駅があります。高校野球の「聖地」、そして阪神タイガースの本拠地でもある阪神甲子園球場の最寄り駅です。

甲子園駅は阪神甲子園球場への最寄り駅(2011年撮影)

筆者は子供の頃からずっと、甲子園がすぐ近くにある環境に身を置いています。ところが、そんな場所で生まれ育ったくせに、野球のことはまったくわかりません。もちろん、やったこともありません。就職した年の春、職場のソフトボール大会に出ることになり、「自分、ショート守ってな」と言われ、「シ、ショートって……、どこですか?」と聞いて先輩に呆れられた、そんな奴です。

試合開催日、阪神ファンであふれる駅はまるで…

阪神甲子園球場は現在、約5万人の観客を収容できるそうです。阪神タイガースの試合が開催されると、チームの人気もあって、たいていほぼ満員になります。

センバツが行われ、プロ野球も開幕する春、甲子園駅バスのりばの桜も満開に(2014年3月撮影)

以前、筆者が梅田で仕事をしていた頃は、仕事帰りに阪神梅田駅から電車に乗ろうとすると、「本日の野球のチケットは完売しました」といった内容のお知らせがよく貼ってありました。ちなみに甲子園で試合がある日、夕方5時台の電車で帰ろうとすると大変な目に遭います。そういうときはあきらめて、梅田で夕飯を食べるとか、時間調整してから帰ってました。

近頃は京都で仕事をしてることが多いので、帰宅時間はちょうど甲子園での試合が終わる時間にかち合います。駅に着いて階段を下りようとすると、下のフロアに人がいっぱい。岡山・西大寺の裸祭りのように、大勢の人がひしめいて、ぞわぞわと動いていくのです。「地獄絵図」、そんな言葉も思い浮かぶほどです。

しかし、このものすごい数のお客さん達を、阪神電車はほぼ1時間足らずの間にさばいてしまいます。試合の終わりに合わせて、臨時列車を大量に増発するのです。そのために、この時間帯のダイヤには、補助線がいっぱい引いてあるらしいです。

試合終了のアナウンスとともに、駅係員らがいっせいに臨戦態勢に入る様は、この駅ならではのものでしょう。試合終了のアナウンスに加えて、勝敗についてもなにか言ってるのを聞いたような記憶があります。これはきっと、阪神タイガースが勝ったときと負けたときで、乗客の動きが違うからなのでしょうね。勝てば六甲おろしの大合唱やらで、なかなかみんな球場から出てこないとか……、そんなこんなでしょう。

甲子園駅は阪神パークへの最寄り駅でもあった。いまもその名残が

阪神パークの敷地内にボウリング場もあった(2003年撮影)

一方、春夏の高校野球の季節になると、こうした混雑からは幾分か解放されます。試合が日中に行われ、観客の出入りする時間帯も分散されるのと、応援に来られる方々は観光バスで来ることが多いからでしょう。その分、道路が混むわけですが。

大規模リニューアルで、球場への玄関口にふさわしい駅に

リニューアル工事中の甲子園駅。大屋根も出現

ところで、甲子園駅ではいま、大規模なリニューアル工事が進められています。

もともとこの駅の下を阪神甲子園線の電車が走っていたこともあり、阪神本線の甲子園駅は昔から高架駅でした。いまの駅の屋根は複雑な形で、ちょっとロボットの顔のようなハイカラ(?)なデザインです。しかも緑や赤を用いた派手な色使いで、これはきっと、2003年までこの駅の近くにあった、阪神パークの色使いに合わせていたのでしょう。

甲子園一帯はその昔、遊園地や水族館、競馬場、野球場、海水浴場などの集まる一大観光地として栄えていたといいます。それが戦後、大規模な団地の建設などで急速にベッドタウン化し、高度経済成⻑の頃には海も汚れて泳げなくなり、ごく普通に人の暮らす街になったようです。

いまでは阪神甲子園球場と、阪神パーク跡地にできた「ららぽーと甲子園」へ行くときに利用する駅、という感じなのでしょうね。甲子園界隈以外に住んでる人にとっては。

甲子園駅の大屋根の工事は着々と進んでいる様子(写真左から今年6月中旬、7月中旬、7月末に撮影)

甲子園駅の大改装では、「野球」を前面に押し出すようです。上り・下り両ホームを覆う大きな野球ボールをイメージした屋根を作るようで、最近その骨組みらしきものが着々とでき上がりつつあります。筆者も朝、仕事に行くとき、「おおっ! こんなんまたできてる!」って感じで、日々進捗を目の当たりにしています。最近、ホームへのエレベーターも設置されたのですが、その押しボタンも野球ボールのデザインです。けっこう本気ですね。

この記事が掲載される頃、また夏の甲子園が始まります。今年も熱い夏になりそうです。