北大阪急行線。名前だけ聞くととても速そうなのですが、走っているのはすべて「普通」です。「特急」は言うまでもなく、「急行」も走っていません。まあ、江坂駅から千里中央駅まで、たった4駅しかないですから、その間にわざわざ待避線を作って追い越し待ちをしてもほぼ意味がないですし。そもそも相互直通運転を行う地下鉄御堂筋線自体、すべて普通ですから、ここだけ急行を走らせるなんて複雑なことをするわけないですが。

デビュー当日、姿を現した新型車両9000形「POLESTAR II」

新型車両は「やや目の吊り上がった、やんちゃそうな顔」

その北大阪急行線が、最近ちょっと注目を集めています。北へ向けて延伸する計画が動き始めたのです。現在の終着駅・千里中央駅から北へ約2.5km、新箕面駅(仮称)まで延伸するのだそうです。これで総延長8.4kmになる計算です。

うーん、伸びてもやっぱり短いですね。2020年の開業をめざすそうで、東京オリンピックの頃には新しい駅ができているかもしれません。ところで、筆者の記憶が正しければ、たしかバブル経済絶頂期の頃、北摂の山の地下にトンネルを掘り、亀岡まで伸ばすなんて計画もあったような……。いまとなっては荒唐無稽な夢物語に思えてしまいますが。

もうひとつ、北大阪急行線の注目といえば新型車両が登場したこと。「POLESTAR II」の愛称を持つ9000形が、4月末にデビューしました。ステンレス車体で、やや目の吊り上がった、やんちゃそうな顔をしています。

筆者も初めての営業運転を「激写」(もはや死語ですね)してきました。目がつり上がっているわりには、LEDのライトが灯ると「目が点」になったような、寝起きをたたき起こされて走ってるような印象でした。一方、後ろ姿は、どこを見ているのかよくわからない赤い目をしていました。デビュー間もない新型車両9000形「POLESTAR II」。きっとまだ、仕事に慣れていないのかもしれませんね(笑)。

地上を走る地下鉄車両も見ておきたい!

鉄道ファンにもいろんなタイプの人がいます。「乗り鉄」「撮り鉄」などのポピュラーなタイプ以外にも、時刻表マニアや、沿線の歴史にやたら詳しい人、車両の構造を知り尽くしている人、鉄道会社の内部事情になぜか通じている人も。ちなみに筆者はライトな鉄道好きで、鉄道そのものよりも、旅情というか、旅の風情が好きなタイプだと自覚しています。

淀川を渡る地下鉄堺筋線の電車

そんな筆者にとって、都心部を走る地下鉄はどうしても興味が薄くなる傾向があります。平たく言うと、「萌えない」のです。

一番大きな理由は、地下だと窓の外の景色が楽しめないからなんですが、もうひとつ大きいのは、「旅に出る鉄道ではない」というところ。たとえば大阪市営地下鉄の場合、おもに大阪市内を走っているわけで、一番遠くへ行っても堺市の中百舌鳥とか、守口市の大日とか、終着駅にしてはいささか「旅感」の薄い場所ですよね。その分、酔っぱらって寝過ごしても知らない場所に行かない、という安心感はあるのですが。

そんな大阪市営地下鉄ですが、大阪港駅から阿波座駅まで高架になる中央線や、中津駅の北側に地上に這い出て淀川を渡る御堂筋線のように、地上を走っている区間もけっこうあります。堺筋線の電車も阪急電鉄と相互直通運転を行ってますし、普段、地下ばかり走ってるイメージの地下鉄車両でも、太陽の光を浴びて走る姿が見られます。

御堂筋線と相互直通運転を行う北大阪急行線も大半が地上区間で、新御堂筋の真ん中を走ります。北大阪急行線は昔、万博会場まで乗り入れていました。というか、万博のためにわざわざ大阪市の範囲を超えて延ばしたんですが。それで、「市営地下鉄のくせにそんなに市外まで行くのんおかしいんちゃうん?」みたいな内外の議論もあったらしく、江坂駅を境に南側が御堂筋線、北側が別会社の北大阪急行線、という現在の形になったようです。

こちらは初代「ポールスター」。新型車両が割り込んだこともあってか、回送列車になって戻ってきた

新型車両9000形「POLESTAR II」を見るため、さまざまなタイプの鉄道ファンたちに混じって待つ間、先輩にあたる8000系「ポールスター」が通り過ぎていきました。こちらは白い車体に赤色・茶色の2色の帯で、9000形と比べて穏やかな顔をしている印象でした。9000形が割り込んだからなのか、初代「ボールスター」は回送列車になってしまっていましたが、それでも嫌な顔ひとつせず、去っていきました。

赤い目になった初代「ポールスター」の後ろ姿を見送りつつ、筆者の頭の中で、八神純子の「ポーラースター」がぐるぐる回り続けるのでありました。