幼児教育を受けたらその後何がどう変わる?

今回は、幼児期の教育がその後の人生にどのような影響を及ぼすのか、また幼児教育と小学校受験との違いについてご紹介したいと思います。

高年収の親の子は、高学歴!?

「幼児教育を受けたら頭がよくなって子どもが年収のいい仕事につける! 」とは言いきれないはずではあるものの、なんとなくそんなイメージがありませんか。それはなぜでしょう。そのようなイメージが形成される背景として、親の年収と子の学歴の相関関係を示すデータの存在があるのではないでしょうか。

東京大学学生委員会の調査によれば、東大生の親の平均年収は約1,000万円。日本における2人以上世帯の平均年収が600万円程度(総務省家計調査)であることを考えると、かなり高いと言えるでしょう。さらに世界的にも優秀な大学として知られるハーバード大学の生徒の親の年収に至っては5,000万円を超えていると言います。親の年収が子どもの教育費に注がれ、その結果高学歴に……というところまでは察しがつきますね。

重要なのは教育費をかける時期

しかし、東大生にもハーバード生にも年収が高いとは言えない親を持つ人はいます。また、高学歴であるからいい仕事につけるかというと、それはまた別問題です。そこで注目したいデータがあります。

ノーベル賞を受賞した経済学者が長期的な追跡調査を行った結果、遅かれ早かれ同じくらいの教育費を払うなら、幼児期に投資したほうが、将来子どもが高年収につながるということが証明されたのです(『学力の経済学』中室牧子著 参照)。現状、就職する上で影響の大きい最終学歴を考慮すれば、「どの時期に教育費をかけても、最終的に高学歴であればそれでいい」と思い込まれているご家庭が多いと思いますが、違ったのです!

しかし、ちょっと考えてみれば納得できます。小さいころにたくさんの刺激と知識を授けられれば、早い段階からさまざまな物事に疑問を持つようになり、知識量や考える力を養うことができるからです。例えば、夏にみかんが売っているのを見た場合、「みかんは本来冬の果物である」ということを教わっていないお子さんは何も思わないでしょう。しかし、幼児教育を受けていて知識のあるお子さんは、「夏なのにどうしてみかんが売っているのだろう」と疑問に思い、大人に質問することができます。そうすると、ハウス栽培や輸入について知る機会を得るのです。

これが毎日繰り返されるのですから、幼児教育の有無で知識量や考える力に差がつくのは当然だと思いませんか。そしてこれが、幼児期に教育を受けるということの意味だと思います。

幼児教育と小学校受験の違い

しかし、幼児教育をうけていれば小学校受験じゃなくてもいいのでは……と思われる方もいるでしょう。そこで、受験を目的としない「知育」と「小学校受験」の勉強にはどのような違いがあるかをお話していきます。

まず、最も異なるのは「目的と期限」の有無です。受験を目的としない知育は「日々の生活の中で考える力を身に付けましょう」という類いの教育になります。知育にもさまざまな種類があるので一概には言えませんが、知識を付けるというより発想力豊かな子を育てるといった目的になるかと思います。試験がないので目標や期限はなく、環境に合わせて個性をいかしながらのびのび育っていくイメージです。

一方、小学校受験は年長の10月頃に本番と決まっていますから、それまでにできるようになっておきたいことが明確にあります。試験本番が迫るにつれ、「あれができてない」「ここが足りない」と焦るものなので、のんびり試験を迎えるご家庭はまずありません。さらに、問題の種類も多岐にわたります。思考力や行動力を試されるものから、季節行事や動植物についてなど、基本的な知識の有無を問われるものもあります。

次に違うのは、目的のために我慢や努力をする精神的負荷です。小学校受験は知育に比べるとお子さんへの負担もかなりありますし、ご両親も大変です。この我慢と努力は、お子さんの人格にも大きく影響します。目的のための我慢と努力ができる子になってほしいと思われるのであれば、とてもいい訓練になるでしょう。

よく「小学校受験をさせると子どもらしさが失われて、のびのび育たなくなるのでは」という質問を受けますが、受験勉強の負荷によって性格がねじ曲がり、遊び心を失った子は見たことがありません。子どもは大人が思っているよりずっと、自分なりに順応するもののようですよ。

そして最後に、第2回で書きましたが、小学校受験に臨むにあたっては結構な出費が伴います。理想と現実、お子さんの性格バランスを見て受験をするかしないか、後悔だけはないよう、よくよくご検討くださいね。

次回は、共働き家庭が小学校受験に挑戦する場合の実態と手段についてお届けします。

※画像は本文と関係ありません。

著者プロフィール

小学校受験向け幼児教室「クラリティー・キッズ」主宰
五島 真知子

自身が小学校受験を経験し、大学までの私立一貫校を卒業。
大学時代に縁あって小学校受験塾(クラリティー・キッズ前身)で4年間アルバイトとして従事。
大学卒業後は伊藤忠商事に総合職として約11年間勤務するも、結婚・出産・事故による負傷を経て退職。学生時代にアルバイトをした小学校受験塾の前オーナー引退に際して事業を継承し、現職。
何事にも果敢に挑戦する意欲を持ち、目標を達成する為の努力を楽しむ心意気を持った輝く子どもを育成するため、教材作成から指導まで広範囲の指導を行う。
※2015年度合格実績(順不同)
慶応義塾幼稚舎・慶応義塾横浜初等部・立教小学校・早稲田実業学校初等部・東洋英和女学院小学部・聖心女子学院初等科・東京女学館小学校・東京都市大学付属小学校・洗足学園小学校・カリタス小学校・精華小学校・目黒星美学園小学校・桐蔭学園小学部