スマートフォンが普及し、オフィスにもPC設置が標準となった現代、「JPEG」に触れたことがないという人はまずいないのではないだろうか。この媒体に掲載している写真やイラストも「JPEG」形式で保存されている。

だが、あまりにも生活に浸透しすぎていて、「JPEG」そのものについて意識する機会はあまり無かったのではないだろうか。

そこで今回は、JPEGを作った団体に所属し、画像処理の研究を行っている拓殖大学の渡邊修准教授に、「世界一身近な画像圧縮技術」と言って差し支えない地位を確立した「JPEG」について、誕生の経緯から普及の流れ、そしてこれからリリース予定の次世代規格までお話を伺った。

拓殖大学 電子システム工学科 渡邊 修 准教授


ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 1 (JPEG) メンバー。画像処理、特に画像圧縮とその応用に関する研究が専門

――JPEGほか現状Web閲覧に使われている画像形式にかわる新たなものとして、GoogleがWebPという新方式を出しています。これについて、JPEG団体内で話題になったことはありますか?

はい、あります。Googleが何かやろうとしているなということで、会議の中で話に上がりました。性能表を見る限り、JPEG 2000ほどではないがJPEGよりきれいで、JPEG 2000より処理が高速である、というような内容でした。

――企業主導のフォーマット開発も注視されているんですね。

はい、JPEGとしてはWebPのような新しい規格は気にしています。Web向けの画像フォーマットなのでメインの用途とは違うとは思うのですが、ある一企業が考えたフォーマットというのは、やはりその他の会社は使いにくいため、閲覧以外の用途での広がりは難しそうに感じました。JPEGから置き換えるのではなく、各種画像をWebPに変換する方法をGoogleのほうで考えるという流れの方が自然に思います。

Googleがどんなに特許料を取りませんと宣言していたとしても、後から撤回されるリスクはぬぐいきれない。怖くて手が出せないというのがあります。

――やはり特許料の問題は非常に大きいのですね。

JPEGはロイヤリティーフリーをポリシーにしているのですが、参加企業に対して「もしそれに従うのが嫌だったら、使用料の徴収を宣言してください」と明示しているんです。ただ、各社とも色々な思惑がありますから、すんなりとは出てこなかったりしますが。

そのような不確定な状態の技術が採用された方式ですと、カメラメーカーが採用することは難しいと思います。今は日本くらいしかデジカメを作っている国はないので、もしかしたら個別にアプローチされて各社に請求が行くかもしれない。ステートメントを出さないということは、「技術の利用料を取られるかもしれない」ということなんです。

(JPEGの)会議には会社を代表してやってきている人が集まっているわけなので、逐次会社との確認が必要になるため、その場で解決に向かう話し合いはなかなか進まないですね。こういうところが、標準規格の規格化プロセスの難しさのひとつだと思います。

次回が最終回。SNSで爆発的に広がる"JPEG画像"に対して、JPEGに参加している識者たちが今取り組んでいる施策について語っていただきます。