「CREA」2月7日号

女性誌に増えている「賢くなりたい」路線

最近、女性誌を見ていると「賢くなりたい」という路線を選び始めているものがちょっとずつですが増えているように思います。

中でも顕著なのが、最近の「VERY」でしょう。今月も「オシャレも"賢妻"ブームです!」という特集が組まれていました。これはドラマ「半沢直樹」で上戸彩さんが演じた奥さんからヒントを得た特集のようですが、半沢ブーム以前から「VERY」は賢妻路線にちょっとずつシフトをしていて、後半の読み物ページが充実。中でも「VERY白熱教室」という連載では、「養子を迎えるという選択肢」「これからの『いのち』の話をしよう」「お母さんこそ、改憲の前に知憲!」などと言ったテーマで、有識者との討論のページを設けているのです。

そういった、後半ページに登場するのは、上野千鶴子さん、林真理子さん、古市憲寿さん、酒井順子さんなどの文化人も多く、私自身も3月号ではジェーン・スーさんと一緒に呼んでいただき、「日本一幸せなVERY妻に物申す!」という鼻息の荒らそうな対談を企画していただきました。

CREAの新たなコンセプトは「知的。」

最近は既存の雑誌のリニューアルも多くなっています。そのときに必ず力を入れるのが、コラムページになっています。今月リニューアルをしたばかりの「CREA」も、堺雅人さんや、前出のジェーン・スーさん、小西康陽さんなどの新連載がスタートしました。

しかも、「CREA」の新たなコンセプトは「知的。」であり、これからのターゲットは「知的に遊べる」女性だそうです。やっぱり、女性誌の教養や知性へ欲求が高まっているように思えます。

でも、よく考えると「CREA」という雑誌は、創刊した1989年当時も「知的好奇心旺盛な女性のための、こだわりの総合月刊誌」だったわけで、コラムの連載陣には、浅田彰さん、田中康夫さん、中沢新一さん、山田詠美さん、中野翠さん、ナンシー関さんなどが名を連ね、当時、インターネットもなく、都会の情報に飢えていた私は、「CREA」のコラムだけが知性への入り口のような気持ちで毎号楽しみに読んでいたものでした。

それから25年。「CREA」はもう一度、知的という方向に舵を切ったわけですが、昔と違うのはインターネットも発達したし、ターゲットの年代の女性たちも、昔よりはある程度の教養を身に着ける機会が増えたため、これからは識者に手とり足とり何かを教えてもらうというよりも、一緒になって自分も考えたいという欲求も出てきているように思います。

「身近な問題を自分で考えてみたい」動き

雑誌ではありませんが、最近、「ノンストップ!」(フジテレビ)や「ナカイの窓」(日本テレビ)、「中居正広のミになる図書館」(テレビ朝日)など、テレビのバラエティ番組でも、円卓、もしくは討論のしやすい形のセットに座って一家言のあるママタレや文化人たち、歯に衣着せぬタレントたちが身近な出来事やネットの話題について討論するものが増えてきました。

そんなことも、自らも一緒になって考えたいという要望によるものだと思うのです。インターネットもテレビも、見ている人がそれぞれに考えをめぐらせることのできるトピックの提供元の役割をするものが以前よりも多くなってきました。それは、Twitterで自分もリツイートなどをした後に意見を書き込めるということも関係しているでしょう。

そういった討論は「知性」と関係ないようにも見えます。また、選ばれるトピックも身近なものや下世話なものもあります。ですが、身近な問題を自分で考えてみたい、そこに何か社会的な原因があるのではないかと掘り下げたくなることも「知的」なことに結びつくのかもしれません。

「CREA」も、ジェーン・スーさんと中野翠さん、池上彰さんと佐藤優さんというコンビが、それぞれ「ふたり論点」というタイトルでコラムを書かれています。このコラムの形は、読む人にトピックをくれる形になりうるのかもしれないなと思いました。

<著者プロフィール>
西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。