それでは、さっそく自作PCの製作手順を紹介……といきたいところだが、その前にパーツ選びをおろそかにしてはならない。自作PCの良いところとして、自分のニーズに合ったPCを作りあげることができる点が挙げられるが、それでもある程度バランスを考えていかなければならない。

悪い例を挙げるとキリがないが、例えば、3Dゲームを中心にやるからグラフィックスカードをハイエンドにして、CPUをバリューモデルで、といった極端なことを考える方もおられるかも知れないが、この場合はCPU側の性能が頭打ちになってグラフィックスカードの能力を最大限に引き出せない事態が生まれてしまう可能性がある。性能(速度)という面から外れて考えてみても、Blu-ray disc視聴用に光学ドライブを導入したが、ディスプレイがXGA対応どまりではBlu-rayの良さを堪能できないといったことが起こる。

もちろん、すべて最高のパーツでPCを構成できれば何でもできる素晴らしいPCになることは間違いないのだが、コストがかかるし、消費電力も増すので電気代も心配になるだろう。自分のニーズやコストに合わせた最適解というのは人それぞれに存在するわけで、そういった意味でも本連載の1~3回目で紹介したようなパーツの知識を、蓄えておいたほうが良いのである。

もちろんPCも、工業製品の常として、良い性能を得ようと思えば、相応の対価を必要とする。ハイエンドパーツはそれなりに高価だし、バリュー製品は安価だが性能もそれなり、といった図式になる。コストというのは消費行動において重要なファクターなので、この無駄を減らすことも考えるべきだ。

基本的な考え方として、メインとなるパーツにおける考え方としては、各パーツが対象とするユーザー層をしっかり把握しておけば、ある程度は無駄を抑制できる。とにかく高性能PCが欲しいならハイエンド向けCPUとハイエンドグラフィックスカード、コストパフォーマンスを重視するならメインストリーム向けCPUを使うならミッドレンジ、とにかくコストを抑えたいならバリュー向けCPUとバリュー向けグラフィックスカードや統合型チップセットを利用する、といった具合に、そのパーツが対象とするユーザー層で揃えてパーツを整えていくといいだろう。

そして、これをベースに、3Dゲームを重視するならグラフィックスカードのみをワンランク上げる、逆にゲームはまったくしないならグラフィックスカードをワンランク下げる、動画エンコードを頻繁にするからCPUをワンランク上げる、といった具合に、使い方に合わせて少しだけ"色を付ける"というパーツの選び方をしていけば、いずれかのパーツの能力が無駄になることが少なく、バランスの取れたPCが作れるのである。

ちなみに、今回の連載で製作するPCで利用するパーツは以下のとおり。

CPU Intel Core 2 Duo E8500
CPUクーラー ASUSTeK Lion Square
マザーボード ASUSTeK P5Q-E(Intel P45+ICH10R)
メモリ GeiL DDR2-800 1GB×2枚
グラフィックスカード ASUSTeK EAH4870/HTDI/512M(Radeon HD 4870)
HDD Seagate Barracuda 7200.11 500GB
光学ドライブ ASUSTeK DRW-2014L1T
ケース クーラーマスター Centurion 590
電源 クーラーマスター Real Power Pro750W
ディスプレイ ASUSTeK VK222H

コストパフォーマンスを重視するPCを製作するうえで参考となるパーツ構成にしており、デュアルコアCPUながらクロックの高いCore 2 Duo E8500を中心にした、やや高性能なミッドレンジPCといった感じでバランスを取っている。

この構成をアレンジするならば、CPUをクアッドコアにしたり、グラフィックスカードをやや安価なRadeon HD 4850やGeForce 9800 GTX/9600 GTあたりに変更するなどが挙げられる。この構成を参考に、個々のニーズに合わせて自由にアレンジしてみてほしい。

重要度が高いマザーボードの選択

PCパーツを選択するうえで、パフォーマンスに大きく影響するCPUやグラフィックスカードについては多くの人がじっくり吟味するだろう。ただ、意外に軽視されがちなマザーボードも非常に重要なパーツだ。

重要とする理由は多々あるが、もっとも大きな理由は、あらゆるパーツが接続されるだけにPCの土台とも言えるだけに組み上がるPCの性格を決める大きな要素となるからだ。

特定のニーズに合わせる場合は統合型チップセットや小型マザーを選ぶなどの方向性も決まるし、マザーボードの選択一つで使えるCPU、メモリ、グラフィックスカードも一定の範囲に決まる。後者についてはチップセットの機能という部分にも大きく依存するので、使いたいCPU、グラフィックスカードとチップセット(マザーボード)はワンセットで考慮すべきだ。

注意したいのは、同じチップセットを使っていたとしても、マザーボードの各製品で機能などが異なる場合がある点だ。第1回でASUSTeKの例を取り上げたが、同じIntel P45を搭載するマザーボードだけで11製品もラインナップされているのだ。メーカーが異なれば、また違う性格を持った製品も存在するわけで、チップセットだけ見ていてもダメというところにマザーボード選びの難しさがある。

さらに、マザーボードはCPUやグラフィックスカードと違って、交換が難しいという問題もある。CPUやグラフィックスカードをワングレードアップしたいとなれば、パーツはわりと簡単に交換できる。マザーボードの交換は物理的な交換が面倒なうえに、ソフトウェア面でもドライバの大幅な入れ替えが必要になる。マザーボードだけを交換したらOSが起動しなくこともあるほどで、原則としてマザーボード交換をしたらOSを入れ直すことになる。

それだけに信頼性や長期的利用も重視したいところで、この当たりはマザーボードに使われている部品や、作りの良さなども気に留めたいところ。今回利用するASUSTeKの「P5Q-E」は、同社のIntel P45製品のなかでは"中の上"ぐらいに位置付けられるモデルだ。

Intel P45を搭載するASUSTeKの「P5Q-E」。ヒートパイプを使ったチップセットクーラーも目立つ

マザーボードは機能だけでなく独自機能も重要。Webサイトやパッケージをしっかり読んで吟味したい

追加でシリアルATAインタフェースを増量していたり、CPUやメモリで電力を供給する部分の作りがしっかりしているなど、Intel P45製品のなかでも機能と信頼性にこだわった作りの製品だ。また、チップセットが本来サポートしていない上位モデルのCPUも積極的にサポートするという魅力もある。

背面のインタフェースもマザーボードごとに個性がある。P5Q-EならeSATAやデュアルLAN、デジタル音声出力が特徴的だ

シリアルATAインタフェースなども要チェック。P5Q-Eはチップセットの機能に加えて、背面のeSATAのほか、IDEとシリアルATA×2を追加している

またASUSTeK製品は自社独自の機能が多いのも特徴だ。P5Q-Eが搭載する独自機能には次のようなものがある。

■導入支援
・AI Slot Detector : 拡張スロットへのカード装着が中途半端なときにLEDが点灯
・Q-Connector : マザーボード上のヘッダピン接続補助コネクタ
・AI Net 2 : LANケーブルの断線などをチェックする機能

■信頼性/電力効率
・コンデンサ : 電気特性と耐熱性に優れる日本産コンデンサのみを使用
・Stack Cool 2 : 冷却性能を高めるためにマザーボード裏面に放熱板を装備
・8フェーズ電源回路 : CPUへの電力供給を安定させる電源回路
・EPU : PCの使用状況に合わせてCPUなどへの電力供給をコントロールする機能
・DieHard BIOS : BIOS記録用のチップを2枚搭載し破損に備えるもの

■カスタマイズ/チューンナップ/メンテナンス
・Super Memspeedテクノロジ : BIOSのメモリ設定項目を強化したもの
・O.C. Profile : BIOS設定内容を複数保持。切り替えて使用する機能
・EZ Flash 2 : BIOS画面からBIOSアップデートを行える機能。USBメモリにも対応
・Q-Fan 2 : 自動ファンコントロール機能
・Express Gate : マザー上のフラッシュメモリに記録された、5秒で起動する簡易OS

CPUの電源周りは信頼性や省電力に大きく関わる。また、チップセットが本来サポートしないCPUを、マザーメーカー独自にサポートすることにも繋がっている

あまり目立たないポイントではあるが、P5Q-Eではメモリへの電源供給まわりもこだわった作りになっている。こうした細かいポイントも調べられる範囲でチェックしておきたい

ASUSTeK以外でも、独自の機能を売りにしてアピールするメーカーは少なくない。搭載されているチップセット、機能、付加価値をしっかりチェックして、納得できるまで徹底的に製品を絞り込むべきパーツがマザーボードなのである。

(機材協力 : ASUSTeK Computer)