【連載】

日本発世界へ、2.5次元ミュージカルが描く希望

1 日本にもっと演劇プロデューサーを

 
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「2.5次元ミュージカル」という言葉をきいたことがあるだろうか? ミュージカル『テニスの王子様』、舞台『弱虫ペダル』、『デスノート The Musical』、『ライブ・スペクタクル NARUTO-ナルト-』……日本が誇る多くの漫画・アニメ・ゲームを原作とし、舞台化したこの分野は、今大きな注目を浴びている。2014年3月に発足した一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会は、世界を視野に様々な企業が力を出し合い、発展し続けている。

日本の文化を世界に発信するためにどのような施策があるのか、協会を発足したメリットはどこにあるのか、またどんな人が活躍できるのか。日本2.5次元ミュージカル協会代表理事 松田誠氏に話を伺った。

松田誠
一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会代表理事、ネルケプランニング代表取締役。演劇プロデューサー。代表作は、ミュージカル『テニスの王子様』、劇団EXILE、『ロミオ&ジュリエット』、『ロックオペラ モーツァルト』、ミュージカル「黒執事」、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」他

「舞台はビジネスになりにくい」というイメージを払拭したい

――松田さんは、俳優もされていたそうですよね。今のような仕事に関わるようになったのはどういう経緯だったのでしょうか

25歳まで俳優をやっていて、26歳で辞めて会社を設立しました。俳優を辞めようと思ったのは、あるCMのオーディションを受けにいったときに、控室に30人くらいの人がいたことがきっかけです。見渡すと、自分よりかっこいい人、背の高い人、芝居のうまい人、個性のある人がいっぱいいるように思えた。そのときに「俺は、30人の中で一番になれなかったら、東京でも、日本でも勝てるはずがない。これはダメなんじゃないか」ってふと。当時からすでに制作なんかもやっていたので、役者ではなく、裏から演劇を活性化したほうがいいんじゃないかなって思ったんです。当時はバブル時代で、ビジネスショーや見本市などで芝居をプロデュースしてたりもしたので、そのお金を元手に、本を読んで、登記セットを購入して、法務局の方にいろいろレクチャーしてもらって、舞台制作会社を立ち上げました。

――役者をやっていたことが、今の仕事の役に立っていたりしますか?

俳優をやっていたので、役者のメンタルがわかりますね。でも、どちらかいうと、俳優時代からしゃべることや人前に立つことが嫌いではなかったというメリットのほうが大きいですね。経営者って、会社の顔であり営業でもありますからね。どこに行っても臆することがなかったので、それはよかったです。

――2.5次元ミュージカルの転機になった作品は何だと思われますか?

以前は2.5次元という言葉もありませんでした。ファンの方から自然発生したもので、意識したのは3年くらい前からでしょうか。やはりミュージカル『テニスの王子様』がヒットして、たくさん人の話題にのぼったり、こうして取材を受けたり、フィールドが広がってきましたね。以前は、演劇というだけで、「大変ですね」「お金にならないでしょう」と思われがちで、ビジネスになるものだと認識してもらえてなかったんです。成功例がないと、良い人材は集まりません。だから、会社の顔として自分もなるべく前に出るようにしています。

例えば昔の演劇人が現在に生まれていたら、果たして演劇を選んでいたでしょうか。もしかしたら、演劇人の何人かは、ゲームクリエイターの道を選んでいたのかもしれないなと。だから、いろいろな分野で活躍している才能が、今の演劇界にも入ってきたら、もっといい作品ができるんじゃないかと。そういうメッセージを出すべく自分がスポークスマンになろうと思っています。

――2.5次元ミュージカルの動向を見ていると、そういうマイナーなイメージは払しょくしているようにも思います

そんなことはないですね。まだまだ見ていない人もいっぱいいると思います。100人いて1人でも見ているかどうか……。まだまだ市民権は得ていないと思います。

――現在、『テニミュ』(ミュージカル『テニスの王子様』)の動員数はかなり増えているんじゃないですか?

『テニミュ』を見ている人は、ライブなども入れて昨年一年間で全国延べ30万人います。それでもやはり、まだまだだと思います。

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs不動峰
(c)許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト
(c)許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

演劇プロデューサーを名乗るわけ

――松田さんがスポークスマンを務めていることや、協会を設立したことで、2.5次元ミュージカルを支える人材というのは現れ始めていますか?

僕は、こだわりを持って演劇プロデューサーという肩書きを使い続けているんですよ。この仕事って、これまではプロダクションにいて辞令を受けた人がやってることが多かったと思うんですね。でも、演劇プロデューサーっていう職種があるということが知られれば、そういうところ以外からも、若い人材が入ってくるのではないかと思うんです。最近は、舞台のチラシを見ても、プロデューサー表記がちゃんとされていることが多くなりました。確かに、ものすごく小さな舞台でゼネラルプロデューサーって書いてあると、もうちょっと頑張ってから「ゼネラル」は使ったほうがいいんじゃないかって思ったりすることもあるけど(笑)。でも、みんな背負ってるんだなと思うんです。

――今はそういうことを学ぶ場なんかも増えてきているんでしょうか

そうですね、専門学校や短大なんかでも、演劇のプロデューサーコースというものはあります。でも、そこで学ばないとできないものでもないですから、やりながら覚えていくということもあると思います。例えば、プロダクションで演劇に関わっていた人が独立して演劇プロデューサーになる場合もありますし。それに、そういうことを学べる場としても日本2.5次元ミュージカル協会は機能しています。

――具体的には、どういうことができるんでしょうか

例えば、日本2.5次元ミュージカル協会の協会員となっている会社には、旅行会社とかメーカーとかもあるんですね。そういう会社の人が、プロデュースすることがあったっていいですよね。演劇プロデューサーって免許があるわけじゃないので、版権とって会場予約して、役者にオファーしてってやっていけば、できるんですよ。テレビ局のプロデューサーになるには、テレビ局に入社しないと難しいかもしれないけれど、演劇のプロデューサーになるには、もちろん舞台を作るための知識は必要ですが、どんな企業や団体の方でも出来なくはないと思うんです。高校生や大学生も、舞台の公演をやっているんですから。それに、今は、原作もドラマ化、映画化に加えて舞台化を考えている時代ですから、話を聞いてくれるんじゃないかと思います。

――欧米だと演劇プロデューサーというともっと確立した仕事だったりするんでしょうか

そうですね、名門大学を出て、エリート証券マンになるか、演劇プロデューサーになるかで悩む、みたいな状況もあるんです。ブロードウェイの舞台、ロングランで何十年も続く企画であればビジネスとして大きいし、ファンドを集めたりする部分でも証券マンと似たところもある。当たれば海外に権利を輸出することもできるし、中には億万長者になる人だっています。そういう仕事であると認識されているから、人材も集まるんですね。日本にはまだまだそういうイメージはないからこそ、僕自身が演劇プロデューサーとして、こうしたことを伝えていきたいと思うし、確立させたいと思っています。

※次回は 8月5日(水)更新予定です。

<著者プロフィール>
西森路代
ライター。地方のOLを経て上京。派遣社員、編集プロダクション勤務を経てフリーに。香港、台湾、韓国、日本などアジアのエンターテイメントと、女性の生き方について執筆中。現在、TBS RADIO「文化系トーラジオLIFE」にも出演中。著書に『K-POPがアジアを制覇する』(原書房)、共著に『女子会2.0』(NHK出版)などがある。
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インデックス

連載目次
第3回 協会内では様々な情報を共有、オールジャパン体制に
第2回 作品への思い入れを裏切ってはいけない
第1回 日本にもっと演劇プロデューサーを

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