厚生労働省は10月を「年次有給休暇取得促進期間」と定めるとともに、有給休暇の取得を義務付ける法改正を進めています。現在50%を下回っている有給取得率を「2020年までに70%」にすることが目標として掲げられており、各企業にとっても、有給休暇のありかたを見直すことが求められていくでしょう。今回は、人事担当者が有給休暇を扱うための基本的な知識についておさらいしていきます。

「年次有給休暇」とは

年次有給休暇は、休日以外のある程度まとまった日数を仕事から解放するために労働基準法によって定められた制度で、社員の疲労回復や健康づくりを目的としています。労働者の権利の一つであり、正社員だけでなく、所定の日数を勤務したパート・アルバイトにも与えられます。

具体的には、6カ月以上継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した場合、10日の有給休暇が付与されることになります。その後、1年経過するごとに付与日数は増え、6年6カ月以上継続勤務した場合に最大20日になります。パート・アルバイトの場合は付与日数が少なくなりますが、週の所定労働日数が5日以上または30時間以上の場合には、正社員と同等の有給休暇が与えられます。また、労使協定を結んでいれば、時間単位での休暇の取得が、最大120時間分まで可能です。

休暇を取得した分の賃金については、「平均賃金」「所定労働時間を働いた場合に支払われる通常の賃金」「健康保険法による標準報酬日額に相当する金額」のいずれかの額で支払う必要があります。あらかじめ就業規則で定めておきましょう。

有給休暇の注意点

消化しきれなかった年次有給休暇は翌年に繰り越されますが、2年で時効消滅します。社員ごとの取得日数と残日数は、しっかりと管理しておきましょう。なお、有給休暇を取得したことを理由に、賃金の減額などの不利益な扱いをしてはなりません。また、年次有給休暇制度の目的は、働き手に休息を与えることですので、これを買い上げることは原則として認められていません。

有給休暇を取得する上で、申請手続きについては法定規定がありません。事業者は、社員から請求があったときは必ず付与しなければなりません。もし、当日の朝になって従業員から急に請求があった場合でも、休暇の取得を認める必要があります。ただし、会社にとって事業の正常な運営を妨げるようであれば、日にちの変更を可能とする「時季変更権の行使」が許されています。

有給消化取得の義務化に向けて

年次有給休暇の取得率を向上させ、ワークライフバランスを整えるために、厚生労働省は2016年度から有給休暇の消化を義務付けるように進めています。この制度が実施された場合、管理職を含め、年10日以上の年次有給休暇が付与される正社員・パート・アルバイトに対し、最大で5日分の時季を指定して与えなければならないことになります。中小企業も義務化の対象となり、未消化の社員が多い企業には罰則規定を設けるとされています。また、社員の有休取得状況を正確に把握するために、年次有給休暇の管理簿をつくることが義務付けられるようにもなります。会社全体を休暇日とするのか、グループごと、個人ごとにするのか、できるだけ業務運営に影響のない日を有給休暇日にするよう、就業規則の変更と合わせて準備していきましょう。