連続猛暑日が最長記録を更新するなど、暑い夏が続いています。連日のように熱中症への注意が呼びかけられていますが、社員の健康管理もまた、人事の大切な役割の一つです。皆が活力に満ちて仕事に取り組めるように、健康管理の基礎について見ていきましょう。

仕事の充実は健康から

病気やけがをせずに心身ともに健やかな状態であり続けることは、仕事を充実させるだけでなく、豊かな人生を送る上での大前提です。また、従業員の健康状態の良し悪しは労働生産性に直結しますので、企業としても、加齢や生活習慣による体調悪化を予防し、健康を維持・増進することが求められます。そのためには、従業員の健康状態や生活習慣を把握し、その結果に伴って適切な保健指導を実施することが必要です。

法定健康診断のポイント

労働安全衛生法は「快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」と定めており、社員に対する健康診断を義務付けています。契約社員やアルバイトであっても、1年以上雇用する場合や、正社員の1週間における所定労働時間数の4分の3以上働いている場合には、正社員と同様に健康診断を行う必要があります。

定期健康診断に関する業務の流れは下記の通りです。委託する医療機関や健保組合とよく確認しながら進めていきましょう。

(1)計画の策定(日時や場所の決定、対象者の確認)
(2)社員への告知
(3)実施
(4)結果通知

診断の結果、異常があったと本人から申し出があった場合は、医師の意見を聞いた上で、再検査や配置転換、就業時間の短縮などを実施しましょう。

健康診断の受診結果は、従業員ごとに「健康診断個人票」を作成し、5年間保存しなければなりません。また、50人以上の従業員がいる事業所の場合は、健康診断の結果を「定期健康診断結果報告書」として労働基準監督署に届け出る義務があります。

なお、健康診断の必須受診項目は2008年に改正されており、下記のようになっています。

  • 既往歴および業務歴の調査
  • 体重、視力、聴力測定
  • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  • 血圧測定
  • 胸部エックス線検査
  • 尿検査(尿中の糖および蛋白の有無の検査)

※雇い入れ時の健康診断はこの他に必須項目があります

従業員の熱中症を防ぐために

厚生労働省の調査によれば、熱中症による死者は1993年以前には年平均"67人"でしたが、ここ20年間の年平均は"492人"と激増しています。この数字からも、熱中症を防ぐことが夏の安全・健康配慮の重要課題であることが分かるでしょう。

熱中症は、高温多湿で汗が蒸発しにくく、体温調整が難しい場合に起こりやすくなります。屋外作業時に多く発生しており、業種別に見ると建設業が4割、製造業が2割を占めています。不十分な空調下での室内作業や、営業の外回り中にも起きますので注意が必要です。熱中症を防ぐ上で最も重要なことの一つは、水分と塩分の定期的な補給です。「のどの渇き」という脱水のサインが出る前に、補給を習慣づけるような周知徹底が必要です。

熱中症は下記の通りⅠ度~Ⅲ度に分類されます。数字が大きいほど重症です。

Ⅰ度:めまい、立ちくらみ、筋肉痛、異常に汗をかく
Ⅱ度:頭痛、吐き気、身体がだるい
Ⅲ度:意識がない、身体がひきつけを起こす、真っすぐ歩けない、高い体温である

こうした症状が出た場合の対処としては、まず、涼しい場所に連れて行き、脇や首を冷やします。水分を摂れる場合は、そのまま安静にさせてください。症状が重い場合は、至急、医療機関へ連れて行きましょう。

糖尿病や高血圧、腎不全といった病気は脱水状態・塩分不足に陥りやすいため、熱中症が重篤になる恐れがあります。事業者は、定期健康診断によってこうした持病がある従業員を事前に把握し、作業内容や作業場所をよく検討しておきましょう。