前回は新卒採用における人事労務についてお伝えしましたが、今回は、パート・アルバイトの採用をテーマとして取り上げます。今年の4月1日に、短時間労働者に対する公正な待遇の確保を目的とした「改正パートタイム労働法」が施行されました。法改正に伴う実務の変化も合わせて見ていきましょう。

そもそもパート・アルバイトとは

総務省の「労働力調査(平成27年)」によれば、パート・アルバイトの数は1360万人。全雇用者数の4分の1を占めており、正社員や派遣社員と並んでビジネスを支える重要な労働力であることが分かります。ちなみに「パート」「アルバイト」といった言葉に厳密な定義はありませんが、慣習的に広く用いられている呼び名であり、おおむね下記のような傾向があります。

  • パート
    主婦層が中心で、平日昼間の短時間勤務希望者が多い。扶養・控除の範囲内で働くケースがほとんど。
  • アルバイト
    高校生~大学生が中心で、夕方以降や週末の勤務希望者が多い。たいていは卒業と同時に辞める。

パートタイム労働法において「パートタイム労働者(短時間労働者)」は、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の1週間の所定労働時間より短い労働者」と定義されます。たとえあなたの会社で「アルバイト」という呼称を用いていたとしても、この条件に当てはまれば、法律の対象になるわけです。

採用するための手段とポイント

パート・アルバイト募集のための媒体は、求人サイトやフリーペーパー、折り込み求人広告など数多くあります。出稿後は、費用対効果を忘れずに検証し、効果が高いものを選べるようにノウハウを蓄積していきましょう。パート・アルバイト比率が高い企業においては、必要な人員を確保し続ける迅速な雇用調整が鍵となってきます。慢性的な人手不足は、サービスの質を下げるだけでなく、不満からスタッフが辞めてしまうという負の連鎖を招いてしまうからです。

また、ほとんどの大学や専門学校は、学生にアルバイトを紹介する窓口や、求人を貼り出せる掲示板、冊子などを用意しています。さらに店舗への貼り紙や、既に働いている従業員からの紹介、自社サイト・SNSなどをうまく活用すれば、採用コストを抑えることが可能です。

採用時に忘れてはならないこと

パートタイム労働法の改正により、パートタイム労働者の雇用時に"説明義務"が新設されました。これは、パートタイム労働者に納得した上で働いてもらうための措置であり、事業主は、賃金制度や福利厚生施設、教育訓練や正社員転換推進措置などについて、十分に説明しなければなりません。

また、従来「昇給の有無」「賞与の有無」「退職手当の有無」を文書で示すことが義務づけられていましたが、今回の改正により「相談窓口」の明示が追加されました。具体的には、相談担当者の氏名や役職、部署などです。事業者は、パートタイム労働者からの相談に応じる体制を整備する必要があるわけです。

※上記はパートタイム労働法の場合です。別途、労働基準法によって契約期間、仕事の場所、内容などを文書で明示することが義務づけられています

パートやアルバイトであっても、労働時間・労働日数が正社員の4分の3以上であれば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務が生じます。また、1週間の労働時間が20時間を越える場合には、雇用保険への加入も必要になります。年金手帳や雇用保険証など、手続きに使用する書類を忘れずに提出してもらいましょう。

その他に、会社の労務管理上で必要な書類には次のようなものが挙げられます。万が一のトラブルを避けるためにも、きちんとそろえて適切に管理しておきましょう。

  • 雇用契約書
  • 住民票記載事項証明書
  • 誓約書
  • 身元保証契約書
  • 通勤経路申請書
  • 運転免許証の写しなど免許・資格を証明する書類

パート・アルバイトであっても、正社員と同じ「労働者」としての権利を持っています。採用後も、労務管理に配慮していきましょう。