「使用してきた歴代の飛行機をもとに日本航空の歴史を振り返る連載をはじめたい」。そんな編集部の要望に応えるためにインタビューの席に現われたのは、1951年10月25日に太平洋戦争後の一番機が就航した当時を知るJALの元社員だった。そう、日本航空の飛行機の歴史は、すなわち日本の航空史でもあるのだ。このシリーズでは、そうした日本航空の飛行機の歴史をたどっていこうと思う。

今回は、最新鋭機の787に見る、日本航空の歴史、こだわりを紹介しよう。

カーボン素材の画期的な飛行機

2012年3月28日。成田空港にあるJALの格納庫で新しい飛行機がお披露目された。ボーイング社より納入されたばかりの最新鋭機787-8である。

787は、従来の金属ではなくカーボン素材(炭素繊維複合材)を機体重量の大半に使うことで快適性の向上に成功した飛行機。従来は高度2400m(富士山でいえば5合目)辺りに相当した機内の気圧を1800m(同3合目)付近相当にまで上げ、湿度もより高く保つことができるようになった。さらに、同規模機(ボーイング767型機など)に比べると窓が1.3倍も広くなり、外が見やすくなると同時に外光もより多くとりこめるようになった。そのため、機内が明るくなるなど様々な点で改良がなされた画期的な飛行機である。なお、このカーボン素材は日本の東レが開発したものだ。

787-8は成田 - ボストン、シンガポール、モスクワ線、羽田 - シンガポール、北京線に就航中(2012年10月30日時点)。2012年12月2日からの成田 - サンディエゴ、2013年2月25日からの成田 - ヘルシンキの新規就航路線でも使われる予定

そして、日本航空の787は日本のエアラインらしいサービスが体験できるのが特徴だ。機内の照明にはLEDが採用されているが、日本の四季を表現する粋な演出があり、エンターテインメントでは「SKY MANGA」が楽しめる。SKY MANGAは漫画をそのまま電子化して座席のモニターで読むことができ、「まんが道」や「坂道のアポロン」「BANANA FISH」など小学館の作品を揃える。これには日本の文化である漫画を世界に発信したいという意図もある。また、トイレには日本人客が好むウォシュレットが設置されている。

「鶴丸」は日本と復活の象徴

787の機体を外から眺めると、尾翼に「鶴丸」のロゴマークが輝く。日本航空が1954年に国際線の運航を開始した当初は販促物などのモチーフに使っていたが、1959年に「日本的サービス」を魅力として打ち出す目的で、自社の正式なロゴマークとした。以後、2003年3月まで採用され、一時は正式マークから外されたものの、2011年に経営破たんから再生への象徴として復活。以後、機体にペイントされるようになったのだ。

「鶴丸」のロゴマークは、日本人デザイナーが原案をつくり、アメリカの広告代理の見解を入れ、修正をしたものである(現在のデザインは、マイナーチェンジが施されている)。そういう意味で外国人にも受け入れられやすいのだろう

さて、次回からは、その「鶴丸」マークが生まれた頃、すなわち日本航空が誕生した当初から航空機の歴史をたどっていくことにしよう。