【コラム】
今週のテーマは「HFC」。この言葉自体はあまり知名度はないが、CATVインターネットの世界を深く探っていくと必ずこの言葉に突き当たるくらいの、いわばCATV業界では常識ともいえる言葉だ。今回はこのHFCとはいったい何なのか、またなぜHFCが必要になるのかといった点を中心に解説を行っていきたい。
■ノイズを回避するために光ファイバを使用
HFCとは一言で言ってしまえば「光ファイバと同軸ケーブルを組み合わせて使用した、ハイブリッド型のネットワーク」のこと。構造としては、NTTなどがFTTH(Fiber to the Home)の前段階として構想している、最寄りの電柱までを光ファイバで結び電柱から家庭への引き込み部分に従来の電話線を使用する「FTTC(Fiber to the Cell)」に近い。ただHFCとFTTCはどちらも幹線部分に光ファイバを使用するという点では共通しているが、光ファイバと同軸ケーブル/電話線を組み合わせたハイブリッド構成を導入した、そもそもの目的がHFCとFTTCでは大きく異なる。
FTTCの場合は、そもそもFTTH構想により家庭と電話局間を全て光ファイバ化しようとしたところ、家庭への引き込み部分で光ファイバの取り回しがかなり厄介なために、とりあえず最寄り電柱までの間を光ファイバ化しておこうという、いわば「光ファイバの工事の難しさやメンテナンス性の悪さをカバーするために従来の電話線を使用する」という動機からハイブリッド型の構成が取られている。HFCの場合ももちろん同軸ケーブルのメンテナンス性の良さというのは重要なポイントの一つなのだが、光ファイバを幹線に利用した本当の理由はそこではない。実は光ファイバを使う最大の理由は「ノイズ対策」なのだ。
そもそもCATVのネットワークは、家庭と電話局間が1:1で結ばれる電話回線とは異なり、CATVの送信局(ヘッドエンド)から出た1本の幹線ケーブルから信号が幾重にも分岐されて家庭まで届けられる仕組みになっている。しかし、この間信号を配信するケーブルにはさまざまな外的要因(雷などの天候によるもの、工事によって発生するものなど)が加わり、信号にノイズが乗る。このノイズは、ヘッドエンドから家庭に向けて送られる信号(下り信号)に対してはさほど影響を及ぼさないが、逆に家庭からヘッドエンドに向かう信号(上り信号)に対しては、幾重にも分岐されたケーブルに乗ったノイズが最終的に1本の幹線に集められてしまうため、ノイズレベルが非常に高くなってしまう。ちなみにこのように集められたノイズのことを業界用語では「流合雑音」という。
従来のCATVサービスでは上り信号に流されるデータ量といえばたかが知れていたためノイズレベルの高さはさほど問題にならなかったが、CATVインターネットが本格的にスタートすると上り方向にもそれなりのデータ量を流す必要が出てきたため、この上り方向の流合雑音対策が重要な問題になってきた。そこで注目されたのが光ファイバだ。光ファイバであればケーブル内を流れる信号は外的要因によるノイズの影響を受けることがないため、幹線部分を極力光ファイバ化することでノイズの影響を最小限度に食い止め、最終的に上り方向のスループット向上が期待できる。そこでCATVインターネットを手がけるCATV局では、サービス開始に当たって従来の同軸ケーブルのみで構成されたネットワークをHFC型に更新するケースがよく見られる、というわけだ。
■光ファイバ化でさらなる広帯域化が可能
また幹線を光ファイバ化することにより、CATVにはもう一つメリットが生まれる。それは「チャンネル数の増加」だ。
最近はBSデジタル放送やスカパーなどのCSデジタル放送などの開始によりTVのチャンネル数は増加の一途をたどっているが、従来の同軸ケーブル型のCATV(450MHz帯域)の場合、同時に伝送できるチャンネル数は40チャンネル程度が限界といわれている。規格上はもっとチャンネル数があるのだが、同じ帯域に多くのチャンネル数の信号を詰め込むとゴーストが発生するなど画質が低下する要因につながるため、うかつにチャンネル数を増やすわけにもいかない。
それに対しHFC構成のCATVの場合は最高で770MHz前後まで帯域を広げることが可能なため、その分伝送可能なチャンネル数が増加する。またCATVインターネットの場合は、下り方向の伝送に映像信号を流していないチャンネルの中から数チャンネルを割り当てて使用しているのだが、空きチャンネル数が増加すればそれだけCATVインターネットに使用できるチャンネル数も増やすことができるので、インターネット接続の速度向上も期待できる。
ただ新たに増えたチャンネル帯域(450~770MHz部分)を使用するには、各家庭に置かれているCATVコンバータの交換が必要になったり、ヘッドエンドに増加したチャンネル数分の送信設備を増設しなければならなかったりと、投資額がばかにならないことから、実際にはHFC化してもチャンネル数はそのままというCATV局が多いようだ。
HFC化にはケーブルの張り直しや幹線部分の機器交換など多額の費用がかかるので、CATV局にとってHFCは決していいことばかりという話ではないが、CATVインターネットはもちろんのこと、今後予定されているデジタル放送への対応などを考えるとやはりHFCは避けて通れない道だろう。最近はADSLに押され気味で話題に上ることが少なくなった感のあるCATVインターネットだが、せっかく自前のインフラを持っているのだから、地域密着型というCATVサービスの特性を生かして新たなサービスの構築を目指して欲しいと思う。
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