【コラム】

最新IT用語解説

11 日本語ドメイン(Japanese Domain Name)

    佐藤晃洋  [2001/10/18]

    今回は『日本語ドメイン』を取り上げる。昨年11月に「.com」などのgTLD(general Top Level Domain)において日本語ドメインの試験登録が始まってからはや1年近くが経過するのだが、現時点で日本語ドメインが使えるのはごく限られた環境にとどまっており、せっかく登録したドメインが宝の持ち腐れ状態となっている人は少なくないだろう。いったいなぜこのような状況が生まれてしまっているのかを含め、基本的な日本語(を含む多言語)ドメインの仕組みについて解説してみたい。

    ちなみに、今回はあくまで現在IETF(The Internet Engineering Task Force)の「多言語ドメインワーキンググループ(IDN WG)」において標準化が進められている『多言語ドメイン(Internationalized Domain Name)』の仕組みを解説することに主眼を置いている。そのため、Internet Oneの「日本語ドメインインデックス」サービスなど、独自の方式で日本語ドメインを実現しているものについては、スペースの都合上触れることができないのでご容赦願いたい。

    ■ドメイン名に日本語が使えるようにする仕組みとは?

    まずはそもそもなぜドメイン名に日本語を使うことができないのか、この点からおさらいしてみよう。

    ドメイン名に使用できる文字については、DNSの基本的な仕組みを規定したRFC1034/RFC1035(1987年公開)の中で「アルファベットのA-Z(大文字・小文字は区別しない)ならびに数字の0-9、"-"(ハイフン)、"."(ドット)」と定められており、基本的にはこの規定が"今でも"有効だ。逆に言えば、ここに定められた以外の文字をドメイン名として使用しようとしても、Internet上にあるDNSサーバは(一部の例外を除き)その文字に対応したIPアドレスを返すことができないため、結果として現在日本語を含む「アルファベット以外の文字を使用したドメイン」は使えなくなっている、というわけ。

    この前提を踏まえて日本語(を含む多言語)ドメインを実現するための技術的検討が始まった際、2つの選択肢が考えられた。その2つとは、

    ・真っ向から全てのソフトで日本語ドメインが使えるように改造を行う
    ・日本語ドメインを一定の法則に従ってアルファベット文字列に変換し、DNSサーバ側には変換後のドメイン名に対応した情報を置く

    というものだ。

    もちろん本来であれば前者が望ましいのだろうが、Internetがこれだけ大規模になった現在の世の中で、全てのソフトを日本語ドメイン対応に書き直すことはそれだけでも大変な作業だ(しかも実際には日本語以外の言語にも対応しなければならない)。また、現在稼働中のシステムにおいてソフトを入れ替えるには、非常に手間も時間もかかる。特にサーバの場合は、ソフトの入れ替えのために必要なサービス停止時間が確保できないケースや、そもそもOSのバージョンなどの関係でソフトの入れ替えそのものが不可能なケースも少なくない。

    それに対し後者の選択肢であれば、サーバ側は既存のソフトをほぼそのまま使え、クライアント側のソフトに日本語(もしくは別の言語)→アルファベットの変換機能を組み込むだけで対応が可能となることから、現在日本語ドメインを提供する仕組みとしては後者が有力とされており、実際にその方向で開発が進められている。

    ■日本語ドメインの現状

    上記の方針に従い、現在JPNICでは『多言語ドメイン名ツールキット(mDNkit)』と呼ばれるソフトウェアを配布し、実際に日本語ドメインを使用したテスト並びにデータ収集を行っている。これはクライアント側のPCで先の「日本語→アルファベット変換」を可能にするための『mDN Wrapper』と呼ばれるライブラリや、クライアントPCに代わって「日本語→アルファベット変換」やDNSの検索を行ってくれる『mdnsproxy』などがセットになったもので、これを自分のPCやサーバにインストールすることで一応日本語ドメインが利用可能になる。

    またInternet Explorer(IE)5.0以降では、特にプラグインなどのソフトをインストールすることなく日本語ドメイン(ただし「.jp」のドメインに限る)が使える。これはIEでアドレス欄のところに適当なドメイン名(「http://」は付けない)を入力した際、そのドメイン名に該当するサーバが見つからないと、自動的にMSNサーチのページに飛ぶことを利用したもので、MSNサーチではそのドメイン名に対して「日本語→アルファベット変換」を行い、変換後のアドレスに自動的にジャンプするようになっている。

    実際の例で説明すると、例えばIEのアドレス欄に「セガ.jp」と入力すると、当然普通のDNSではこのドメイン名に対応したアドレスを引くことができないので、IEは自動的に「セガ.jp」をキーワードにMSNサーチを呼び出す。するとMSNサーチが変換後のアドレスとして「http://bq--gc52y.jp/」にジャンプするように結果を返すので、IEはそちらのページにアクセスし、結果としてセガのホームページにたどりつくようになっているのだ。

    ■変換方式の一本化が難航

    さて、上記の「セガ.jp」で結果として表示された「bq--gc52y.jp」というアドレスだが、これはドメイン名変換の一方式である「RACE」と呼ばれる方式によって変換されたものだ。この「RACE」方式は現在JPNICが実験的に採用している方式(上記のmDNkitでも利用可能)だが、これはまだ正式にInternet上で世界的に認められた方式ではない。

    実は現在日本語ドメインの実現が遅れている最大の原因は、この「変換方式」の一本化が進まないことにあるのだ。現在IDN WGにはRACE以外にBRACEやDUDE、AMC-ACE-Zなど複数の変換方式が提案されており、未だどの方式を採用するかは確定していない(一応現時点ではAMC-ACE-Zが最有力)。

    また、複数の言語を単一のアーキテクチャの中で処理するための仕組みや、変換後のドメイン名を極力短くするための技術的検討なども現在検討中のため、当初の予定では昨年暮れにも出るはずだったRFC(Request For Comment)の公開が現在遅れに遅れている。Internetの規格書ともいえるRFCが出ないことにはアプリケーション側の対応が進まないため、結果として一般ユーザが日本語ドメインを本格的に利用することができなくなっている、という状況なのだ。

    しかも、仮にRFCがリリースされDNSサーバ側の準備が整ったとしても、アプリケーションや各種サーバ(WWW、POP3、SMTPなど)側の対応が進まないと実際には日本語ドメインを利用することはできない。そのため、本格的に日本語ドメインが利用できるようになるのはおそらく来年後半以降になると思われる。

    ただ既に多数のユーザが日本語ドメインの登録を行い、なおかつ管理費等の費用を支払っていることを考えると、これ以上いたずらに時間を費やすのはそれらのユーザに迷惑をかけることにもなるわけで、関係者には一刻も早い「日本語ドメインの実現」のためより一層の努力を期待したい。

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