【コラム】

最新IT用語解説

1 光ファイバ(Optical Fiber)

佐藤晃洋  [2001/08/02]

今回からスタートしたこの連載では、最新のIT用語についてわかりやすく解説していきたい。

さて、第1回のテーマとして取り上げるのは「光ファイバ」。ちょうど今月1日からNTT東日本/西日本が一般消費者向けの新サービスとして「Bフレッツ」をスタートさせたばかりでもあり、この機会に改めて光ファイバの利点・弱点について考えてみたい。

■光ファイバの基本

まずは光ファイバの基本構造からおさらいしてみよう。「光ファイバ」という名前の通り、光のOn/Offによりデジタルにデータを伝送するのが特徴だ。その内部は2層構造で、ファイバの中心に「コア」と呼ばれる部分があり、そのコアを「クラッド」と呼ばれる部分が取り巻く形になっている。この「コア」と「クラッド」の間で光の屈折率が異なることから、光ファイバに入力された光信号はコアの部分を反射しながら進んでいく。

通信用に利用する場合は、上り/下りでそれぞれ1芯ずつ(合計2芯)を使ってデータを送受信するのが普通だが、システムによっては1芯だけで通信を行ったり、4芯以上を同時に使う場合もある。

また光ファイバには大きく分けて「シングルモード(SM)型」と「マルチモード(MM)型」の2種類が存在し、一般的にSM型は長距離・高速用にMM型はLANなどの近距離・低速用に使われる。

■なぜ光ファイバなのか?

最近、世間ではYahoo! BBなどの低価格なADSL接続サービスに注目が集まっている上、Bフレッツを始めとする家庭向けの光ファイバサービスは今のところ実効速度で数Mbps程度のスピードにとどまり、ADSLと比較しても速度的に大差がないという現状から、「わざわざ光ファイバを利用する意味は何?」と思う方も多いかもしれない。特に、ADSLを申し込んだところNTTから「お客様の家は光収容なのでADSLは使えません」と言われたような人にとっては、光ファイバは目の敵だろう。

しかしこれから先、数十~数百Mbpsクラスの回線を家庭に引き込むためには既存の電話線では明らかに能力不足だ。現在のADSLですらサービス提供可能な範囲は電話局から半径2~3km以内にとどまる上、今後大きな速度アップは望み薄(せいぜい数十Mbpsが限界)なのに対し、光ファイバなら数百Mbpsクラスのスピードが軽々と出せるだけの潜在能力を持っている上に、SM型光ファイバと長距離対応型の機器の組み合わせなら20km以上の距離でも軽々とデータを伝送できる。

またSM型の光ファイバを使った場合はさらなる高速化も可能で、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)と呼ばれる技術と組み合わせると、既にSM型光ファイバ1本で1.6Tbps(=1,600,000Mbps!)もの速度でデータを伝送する機器が実用化されている。もちろんこれは通信事業者向けの機器の話であり、今のところ一般人に手が出るものではないが…。

また光ファイバは「ノイズに強い」という利点もある。ADSLユーザーに多い悩みの1つに「思ったほど速度が出ない」というものがあるが、その大きな原因にノイズの影響が挙げられる。実際、家の近くで道路工事があったり、家の中にノイズの発生源となるような機器が動いていたりすると、それだけで速度が半分以下に落ちることは珍しくない。それに対し光ファイバの場合はデータが光信号で送られ、電気的な影響を受けることがないので、それだけノイズに対する耐性も強くなる。

■光ファイバの弱点

ただ光ファイバにも弱点はある。それは「取り扱いが非常に難しい」ことだ。

その理由の1つには、通信用光ファイバの大半が原料に石英を使った「ガラス製光ファイバ」であることが挙げられる。しかも光ファイバは非常に細いので(普通0.1mm程度)、ケーブルが外部から強い衝撃を受けたり、強引に曲げられたりすると、中の光ファイバがあっさり折れてしまい、データの伝送ができなくなってしまう。

もちろんケーブルメーカーもそのあたりは承知しており、市販のケーブルでは周りを衝撃保護材でくるんだり、中に鉄線やプラスチックを入れて簡単には折れ曲がらないようにしたりといった対策を施しているが、そうすると今度は家の隙間をはわせたり、配管を通したりするのに不都合が出たりするため、なかなかうまい解決策がない。

最近はより取り回しが容易で衝撃耐性にも優れたプラスチック製の光ファイバも開発が進んできているが、まだあまり普及していない。

また光ファイバは、既存の電話線や同軸ケーブルと比較して「接続作業に技術が必要で手間がかかる」という点も弱点として挙げられる。

普通の電話線だと、被覆をむいて中の金属線同士を撚りあわせればとりあえず接続できてしまうが、光ファイバの場合はそうはいかない。一般的に光ファイバ同士の接続では、素材がガラスでできているということを利用して、ファイバの先端に熱を加えて溶けたガラス同士をくっつけて固める「融着」という方法がよく使われるが、そのためには高価な専用の機械が必要だし、作業時間も普通の電話線の数倍必要になる。光ファイバ用の接続コネクタも数多く開発されているが、融着に比べると信号ロスが一般的に大きくなる上に、コネクタの大きさの分だけスペースを必要とする難点があり、完全に融着に取って代わるところまでは行っていない。

とはいえ、以前は非常に高価だった光ファイバ対応の接続機器も、最近ではBフレッツや有線ブロードネットワークス(USEN)の『BROAD-GATE01』などで使われている「メディアコンバータ」と呼ばれる装置が1台数万円で手に入るところまで値段が下がってきており、これまで最大の難関だったコスト的な問題は解決しつつあるので、以前に比べると弱点は減ってきている。

■意外と身近まで来ている光ファイバ

さて、光ファイバを使うには身近に肝心のケーブルが来ていないことには話にならないが、NTTは元より電力会社、有線放送、CATV、上下水道、都市ガス、鉄道などいろいろな会社が既に独自の光ファイバネットワークを持っており、これらの事業体が本気になれば、人口10万人以上の都市の大半で光ファイバを使ったサービスがすぐに開始できるだけの設備が実は既に存在する。とはいえ光ファイバについては今のところまだ各社とも手探りでサービスを始めたばかりの状況であり、すぐにサービスエリアが広がる可能性は低いだろうが、できるだけ早くサービスが実現するように期待したい。

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