「JOYSOUND」ブランドで、業務用から家庭用まで幅広くカラオケ事業を展開するエクシング。同社では営業力強化のため、iPhoneを全営業担当者へ配付し、あわせてPayPal Hereによる訪問集金を実践している。

同社の営業部隊は、大手カラオケチェーン店から個人経営の店舗までを対象に、チャネル別に全部で5つの営業部から構成されている。このうち最も大きな部隊である直販営業部は、スナックやバーといったナイト市場の店舗をサポートしている。大都市から地方の遠隔地まで顧客分布は広く、担当者は平均で80~100店舗ほどを担当する。

訪問記録をiPhoneから入力・確認、厚みのある営業活動へ

カラオケ事業本部 直販営業部 直販推進グループ 山本智也氏

こうした多くの顧客にきめ細かく対応すべく、あわせて営業活動の見える化とパフォーマンス向上のため、2013年4月より全社でCRM(顧客情報管理)ソリューションのSalesforceを利用している。基本は日報や訪問・提案内容の記録などをPCから入力するものだが、通信カラオケなどを制御している同社の基幹システムとも連携しており、顧客との取引内容や、設置機器の稼働状況なども確認できるようになっている。

「営業は担当するエリアとその顧客へ、新規提案やアフターフォローといった日々の活動をしています。そこでの内容は、その場でメモ帳や手帳などに書き込み、すべての営業活動が終わったのち会社に戻ってから入力していました」

カラオケ事業本部 直販営業部 首都圏第1直販営業グループ 東京支店 外川裕樹氏

以前の様子を語るのは、カラオケ事業本部 直販営業部 直販推進グループの山本智也氏。この作業の負荷が高く、営業効率を下げていると考えていた山本氏らは、訪問先でも顧客情報の参照や入力ができるよう、モバイルソリューションとしてのiPhone導入を決めたという。

カラオケ事業本部 直販営業部 首都圏第1直販営業グループ 東京支店に所属する外川裕樹氏は、「訪問後、店舗を出て車に戻るまでの間に、訪問時間や簡単な報告内容を入力しています。以前は帰社してから行う作業でしたが、これがその場でできるため、1/3から1/2ほど時間の短縮ができています」と、外出先で利用できる効果を認める。

外出先からアプリでデータを閲覧・入力できる

また、情報の入力だけでなく、参照が外出先でもできるようになったことで、さまざまな面での効果が表れている。

前回訪問時の内容をはじめ、顧客の情報を外出先で参照できるので、訪問準備に要する時間が短縮された。従来は自前のノートや記憶を手繰り寄せることでやっていたという。

「契約の金額や期間など、訪問前にお客さまにまつわる情報を参照しています。以前は社内に蓄積されている取引情報から、新規や解約などの条件ごとに紙のリストを作って、携帯電話のカメラで何枚も撮影し、それを外出先で見ながらお客さま先を回っていました。見づらいのと、撮り忘れがあったりするとそのお客さまへは回れないといったことになりました。今ではすべてのお客さまの情報をiPhoneから安全かつすぐに引き出せるので、効率的な巡回ができています。ほかにも、例えばほかの担当者のお客さまを訪問しなければならない場面もありますので、そのときには過去の訪問情報やいただいたご要望を前もって確認できるのも便利です」(外川氏)

「お客さま先で通信カラオケ機器を設置する際に、ネットワークに接続する「開局」という作業が必要になります。その際に設定すべき情報を基幹システムから引き出して、iPhone上で確認しています。従来の電話での事務所への問い合わせもなくなり、スムーズな作業ができるようになりました」(外川氏)

アプリなど各種サービスの紹介で理解度向上

エクシングでは、業務用/家庭用カラオケ機器の提供のほかにも、カラオケに関連するさまざまなサービスを広く提供している。スマートフォンを使ってカラオケが楽しめる「カラオケJOYSOUND+(plus)」をはじめ、カラオケ関連や子供向けの知育ゲームといった多くのスマートフォン用アプリもその1つだ。また、カラオケ楽曲の検索や会員向けサービスなどを提供する専用サイトの運営も行っている。

こうした自社サービスやタイアップ企画を、会社説明の一助としてiPhoneを使って顧客へ紹介することで、営業活動に利用している。例えば、同社のカラオケを導入している全国のスナックを紹介するタイアップTV番組があり、その動画がYouTubeの公式チャンネル「JOYSOUND CHANNEL」に掲載されている。これらも、顧客への訪問時に見せることで、同社ならではのサービスと認識されてうけがよいという。

「こうしたサービスを紹介することで、お客さまがエクシングの幅広いビジネスとその利用者像を短時間で理解でき、それをメリットとみなしてご契約につながるといった効果も感じています」(外川氏)

YouTube「JOYSOUND CHANNEL」公式チャンネル

PayPal Hereを使ってその場で清算

さらに、iPhone導入による二次的効果で大幅な効率化が図られたことがある。

直販営業部が担当する顧客の多くが、カラオケ機器の月々の利用料金を口座引落で支払っているが、中には現金による支払いを希望している顧客もある。こうした場合は、毎月決められた日時で訪問し、回収をしている。また、残高不足から引落ができない場合は、直接回収に向かうケースもある。こうしたものが月末に向けて集中した場合には、1日に多くの顧客店舗へ回らなければならないといったこともあるという。

「毎月の集金日は決まっているのですが、それでも手持ちの現金がないということで、お支払いただけないこともあります。そうなると日を改めて再度訪問しなければならず、特に遠方のお客さまが重なると時間のロスになります。そんなときにクレジットカードが利用できれば、回収の機会損失もなくせると考えていました」(山本氏)

そこで同社では2013年8月からPayPal Hereを導入。現在、直販営業部を中心に200IDほどが稼働している。

「過去にモバイル型のカード決済端末を試験導入したこともありましたが、1台あたり10万円と価格も高く、配付できる数にも限りがあり活用されませんでした。PayPal Hereなら、端末の料金も高くなく、ランニングコストもかからずに導入できるので、手軽かつ確実に回収できるという点を重視して導入を決めました」(山本氏)

「お客さまに何度もお伺いするといったご迷惑をおかけせずにすむようになり、支払いの手続きも非常にスムーズに完了できます。以前と比較すると、利便性が格段と向上したことに驚いており、よいツールだと感じています」(外川氏)

カード1枚で決済でき、料金回収の作業が効率化

iPhone導入で営業活動の強化と効率化が図られたエクシングだが、現場では意外な使い道も実践されている。

「『ライト』はわれわれの業界では使用頻度の非常に高い機能です。暗い店内で、カラオケ機器の裏側の配線といった作業をすることがよくありますので」(外川氏)

今後は、iPhoneの現場での活用をさらに進めていくと山本氏。

「営業担当者は、各自提案したい商材の資料やカタログを自身で組み合わせた『アプローチブック』というものを用意しています。これをPDF化してiPhoneに格納しておき、お客さま先のカラオケ機器のディスプレイに接続してプレゼンするといったことも行っています。また、設置したい機器の写真を取り込んでおき、お客さま店内を撮影した写真と合成するアプリを使って、導入後はこんなイメージになりますとお見せしている営業事例もあります。こうした現場での使い方の事例を集めて展開することで、より使い方を広げていくつもりです。またPayPal Hereの効果が高いと認められれば、さらに拡大していく予定です」(山本氏)