文具教材からノベルティ商品、日常用品から工業用品に至るまで、磁石を使ったさまざまな商品の企画製造販売を行うニチレイマグネット。黒くて硬いという磁石のイメージを一変させた磁石全般のパイオニア企業である。自動車の初心者マークをシールからマグネット方式に変えたのも同社が最初だ。

磁石の特性を生かした製品の中には、特殊な使い方をするものもある。そこで同社では、iPadで自社制作した動画を提案時に使うことで、商品のメリット訴求や顧客の理解度向上に役立てている。

iMovieの使い方を学んで動画を社内制作

東京支店 管理部 総務経理課 課長代理 奥田吉胤氏

東京支店 管理部で総務経理課 課長代理を務める奥田吉胤氏はiPadの導入時、あることに挑んだと明かす。

「情報端末を活用して業務効率化を図れるのではないかということで導入したiPadでしたが、有効な使い方を模索していました。そこで、使い方の提案を導入元であるソフトバンクに依頼したところ、紹介されたものにiPadで手軽に動画を作るという研修がありました」(奥田氏)

iPadで動画を作れるのだろうか。もし本当に簡単にできれば、多くの商材を持つ同社でいろいろと活用できるのではないか。そう考えた営業部兼建装部 次長の弥氏正樹氏は、その研修を受けてみることに決めた。

東京支店 営業部兼建装部 次長 弥氏正樹氏

研修は動画編集アプリの「iMovie」を使い、iPadのカメラで撮影した動画を見栄え良く仕上げるという内容だった。

「思ったより少ない操作で高度な作品ができるので、これなら訴求力の高いプレゼン材料になると思いました。とにかく簡単な作業で1本の動画が制作できるので、誰にでも扱いやすいと思いました」(弥氏氏)

大阪本社と東京支店での計2回が開催され、のべ15人ほどがiMovieの使い方を学んだ。弥氏氏は修了後すぐにiMovieを購入し、商品説明動画の制作に取り掛かることにした。

ユニークな商品の魅力をiPadで撮影した動画で訴求

同社では、百貨店や店舗などへの導入実績も多い。壁や柱に薄いマグネットを貼り付け、そこへ鉄粉の付いたシートで壁紙のように装飾する「メタリーシート」という商品の採用が進んでいるという。

トラックの車体や荷台の図柄はすべてメタリーのシートで、背景のスチール板へ貼り付けられている。貼ったりはがしたりで手軽に模様替えができる

「ある百貨店では、2週間に1度の頻度で催事を行っていました。会場設営で、従来の木や金属のパネルを使うと、少なくとも1枚の設置に1時間ほどかかります。このパネル設置やポスター貼りなどを磁石化することで、制作費用と設営時間が飛躍的に改善します。深夜までかかっていた設営が、閉店後の1時間で完了するようになりました」(奥田氏)

このようにマグネットによる設営、装飾が簡単であることをアピールする目的で、実際の設営の様子をiPadのカメラで撮影し、iMovieで字幕を入れて説明動画を制作した。

iPadだけで撮影・編集できる手軽さで、誰にでも扱いやすい

設営・撤去の手軽さを、iMovieで制作した動画で説明

「これなら専門業者でなく、店舗のスタッフでもわずか10分で簡単に設営できますと説明して、マグネットの壁紙や陳列棚を貼り付けている動画をお見せしています。女性でも手軽にできる様子をお見せすると、商品への反応がとても良いです」と弥氏氏。

現在は全国で5台がこの使い方で稼動している。動画は社内で正式に制作したものが10本ほどあるが、社員が個人で作ったものも入れると20本以上になるという。これらは実際に内装業者の提案に利用して、店舗への採用実績も出ているとのこと。

ほかにも商品カタログをiBooksへ格納し、提案時に利用しているという。

「コンクリートの支柱や一般的な壁紙のようにマグネットが着かないものには、薄い鉄の壁材シートといった商品も用意しています。マグネットとそれを貼り付ける場所と利用シーンの総合的な提案をするには、より多くの資料によるスムーズなご紹介が必要となります。そんなときにiBooksに入れたPDFファイルで次々にお見せできて便利です」(弥氏氏)

製品のカタログも整備され、営業活動に活用している。新製品が出ればその都度追加していく

今後は利用している営業担当者からの要望なども取り入れて、台数を増やすとともにデバイス管理についても実施していくと奥田氏。iPadを使った営業スタイルを定着させることで、スキルの均一化を図り営業力向上を狙う。

「どの営業担当者でも、お客さまへ質の高いご提案ができるようになると期待します」(奥田氏)

また業務支援の側面からも整備を進めていくという。

「見積書の作成や在庫確認、出荷状況の追跡など、現在では外出先から電話で社内のアシスタントに依頼したり帰社後に作業したりしていますが、これも外出先から行えるようになれば、大きな効率化につながると思います。受注から納品まで営業担当者がすぐに把握でき、お客さまにも情報を素早くお伝えできる、そんな仕組みを作り上げていきたいと考えています」(奥田氏)