【連載】

事例で学ぶiPhone/iPad活用術

81 高校の英語授業にiPadを活用し、生徒の成績向上に成功

  [2012/08/07]

1951年(昭和26年)に前身となるアベノ・カトリック幼稚園が創立され、現在は男女共学のカトリック学校として400名以上の生徒が学ぶ賢明学院中学高等学校(大阪府堺市)では、2011年7月より英語授業にiPadを導入し、クラス全員(40名前後)がiPadを使いながら、英文の並べ替え問題や空欄埋め問題などを行っている。

賢明学院中学高等学校

英語の授業は一週間に7時間あり(高校2年生のカリキュラムの場合)、そのうちの2時間をiPadを利用した授業としている。

同校では、授業開始の冒頭20分間を前回授業の復習にあてており、まずここでiPadが使われる。ドキュメント配信・共有サービスの「Handbook」を活用して、教師が作成した問題文にiPad上で解答し、到達度や理解度を確認している。従来は紙の問題プリントを作成して配付し、一斉に答え合わせを行っていた。その準備の様子を、英語科主任の市場貴志教諭はこう語る。

英語科主任 市場貴志教諭

「1回分のプリントをつくって印刷まで行うのに必要な時間はおよそ10分~15分です。1回の授業ではこれだけの時間ですが、これがすべてのクラスの一週間あるいは一年間分の積み重ねとなると、その手間と時間と紙代は大きなコストとなります。これが解消されたことで、教師の負担も軽減されました」(市場氏)

iPad上で生徒が解答すると、「正解」または「不正解」と表示される。

「間違った場合でも正しい答えは表示されないため、生徒は戻って考えることができます。ノートや教科書などで再度学習させることができるため、この手法は有効だと思います」(市場氏)

生徒の反応も上々のようだ。実際に触りながら授業を受けている生徒は、「タッチやスライドの動作が楽しく、ゲーム感覚で学べるので、頭にストレートに入っていく感じがします。間違えたところはノートを見直して再度チャレンジすることで、着実に身に入っていきます」とiPad効果を実感している。

テスト結果は、データ抽出や分析が行えるよう、独自開発した集計システムに蓄積されていく。リアルタイムでの確認も可能なため、個々の生徒の習得度状況の把握も授業の中でできるという。

学びの場で最先端を提供したい

iPad導入の目的を、学院長の中原道夫氏は次のように語る。

学院長 中原道夫氏

「生徒へより有益な学習手段を提供することは学校の義務です。近年はIT化によってそれを推進する例も多くあります。ただし、学校におけるIT活用では、常に最先端のものを使うことはもちろん、それをどう使いこなしていくかを教えることが重要です。そこで、先進的なデバイスとして利用例も多く、アプリケーションで使い方の幅が広がるiPadに注目しました」(中原氏)

実際に導入を担当した渉外部次長 事務部次長の谷村信次氏も、「教育カリキュラムとして教える内容は、短期間での変化はあまりありません。ですが、教える手段はどんどん変化していく必要があると思います。生徒や教員の満足度を上げたり、やる気を引き出す変化を与えていくことが、事務職のわれわれには求められていると考えています」と学習ツールの重要性を認識している。

さらに中原氏も続ける。

「ツールだけを与えられても使う側は満足しませんし、活用もおぼつかないでしょう。重要なのはコンテンツであり、われわれはそれを提供する立場にありました。そこで、さまざまなセミナーを参考にしたり、ほかの学校がどのような活用をしているかなどの情報を集め、具体的なコンテンツづくりについて多くのメンバーと議論しながら固めていきました」(中原氏)

iPadによる注意喚起で平均点アップ

同校では、まずは英語の授業での利用を前提に、2クラス分80台が導入された。

「英語授業での採用を決定した理由は、音声教材など既存のコンテンツが多くあったこと、それとアプリもすでにいろいろなものが公開されていたからです」(谷村氏)

導入の初期段階では生徒のiPad利用にまつわるスキルを心配していたと市場氏。

「操作方法など、説明がかなり必要かと思っていました。ただ、iPhoneを使っている生徒もいましたし、むしろ生徒のほうがより知っていることもあったりして、1~2回の操作でほぼ支障がないことが分かりました」(市場氏)。

実際の授業風景では、教師が生徒の席を回ってコミュニケーションを図りながら指導しているが、生徒の活用度は高いという。このため2012年度には、1年生259人全員に配布されることが決定した。

訳文練習では、Web上の辞書サービスを使って分からない単語の意味を調べている

「テスト期間前などに、従来は『ここのページから出題されるから勉強しておきなさい』と重点を言っていました。内容は変えずに、『iPadで出ているところから出題されるので勉強しておきなさい』という言い方にしたところ、あるクラスでテストの平均点がおよそ10点ほど上がりました」(市場氏)。

テスト前は集中力も高まっており、iPadで出された問題は特に印象に残っているからではないかと市場氏は見ている。

一方で、「現状維持では刺激が薄くなり、すぐに飽きられてしまいます。これからは、アクション性のある使用法、例えば結果が即座に返ってきたり、ゲーム性のある内容がより求められるようになると思いますので、そうしたコンテンツを考案中です」と次のアクションも考えている。

また、生徒からの声も高いため、ほかの教科での利用も検討を進めている。

「例えば資材のかかる実験の授業などは動画を作成することで、いつでも手軽に見せることができるのでよいと担当の先生と話をしています」(市場氏)。

現在、さまざまな教科の教員を対象にした勉強会を定期的に開催し、アイデアやノウハウの共有化を進めている。

活用を進めている教員を中心に、勉強会を逐次開催してナレッジ共有の場を設けている

今後は学校外での利用も開始し、通学時間や隙間時間での予習復習などに活用を進めていく。「クラブ活動のすぐ後や、友達と家で過ごしているときなどに、遊びのように勉強ができる環境になるので覚えやすいと思います」と生徒の期待感も大きい。

「小学校から行ってきた勉強のやり方が、iPadを使うようになってがらりと変わりました。これがよい刺激になっているのは確かで、紙ではなしえなかった効果です。これにより生徒の学習に対するモチベーションが生まれており、今後はこれをさらに持続していく努力を続けていきます」(中原氏)

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