【連載】
家庭用エアコンから業務用大型空調機器まで幅広い商品を手掛けているダイキン工業は、営業向けの支援ツールとして1,000台のiPad 2を2011年11月に導入した。
同社は大阪金属工業所として1924年に創業し、1963年に現在の社名に変更。従業員数は全世界でおよそ4万人、売上高は1兆円を超えており、近年ではヨーロッパや中国の売上が拡大成長している。事業別の売上高構成は、国内空調事業31.7%、海外空調事業57.0%、化学事業8.4%、そのほかの事業が2.9%となっている(2010年3月期)。
同社のiPad導入以前の営業スタイルは、事前に準備した提案書やカタログ、チラシを鞄に入れて携帯し、顧客先で説明をするというものだった。また新商品のリリース時には、商品の詳細を説明したDVDを持参して顧客へ見せることも行っていた。顧客からの相談内容は多岐に渡るため、営業担当は膨大な資料を鞄に準備していることが多かったという。さらには、出直して提案書の再提出を行うなど、手間と時間がかかっていた。
iPadの導入目的について、空調営業本部 事業戦略室 新規事業担当課長 谷内邦治氏はこう語る。
「当社では営業支援のためにiPadを導入し、営業担当がお客さま先で活用できる資料や情報をすべてiPad上の専用アプリケーションに入れることにしました。データは一括で配信されるため、特別な作業を必要とせずに、常に最新の情報が得られます。これにより営業担当は、顧客からの質問に対しても、その場で資料を見つけ出して受け答えが可能となり、効率の向上とスムーズな商談ができるようになりました。また営業力の強化を図るほか、営業担当へ定期的にアンケートを実施し、現場の販促施策に活用できる意見を収集することにもiPadを活用しています」(谷内氏)
iPadを選定した理由について、空調営業本部 事業戦略室 商品企画グループ 山田真理氏は次のように語る。
「当社は2011年3月にタブレット端末を利用した営業支援の実施を検討した際、どのデバイスを導入するかについてのさまざまな協議をしました。選定の際には、セキュリティの確保やOSの汎用性、運用上のサービスなどに着目しました。セキュリティ要件では紛失や盗難時に情報漏えいを防ぐことが遠隔操作で可能であり、ウイルス対策にも優位性があることを重視しました。当社は海外拠点も多く、OSが世界標準の汎用性を持っていることも重要でした。さらに運用上のサポート体制が充実していることを考慮し、総合的に判断した結果、iPadが最適なデバイスであるという結論に至ったのです」(山田氏)
本格導入前の2011年7月からの2カ月間は、九州地区と岡山県の営業所で30台のiPadを使いながら営業ツールとしての活用可否とセキュリティ面などの検証を行った。その結果、提案ツールや情報共有資料が営業活動上、有効に活用できるということが営業担当から報告された。また、iPadを継続して利用していきたいとの要望も強かったという。
セキュリティに関しては、すでに社外公開済み販促情報を扱っているという点から、iPadの機動性や営業担当の使い勝手の良さを重視しパスコードロックはかけず、MDM(Mobile Device Management)を導入してすべてを遠隔で一元管理することで情報漏えい対策とした。
検証後の2011年9月には全社で導入する決定がなされ、同年11月に営業担当を中心におよそ1,000台のiPadが配布された。
iPad導入後は、カタログ・チラシ・新商品情報・機器仕様・技術資料・動画など、全販促資料を格納した営業支援iPadを営業担当が携帯することで、訪問先での問い合せに対し、瞬時にその場で回答・提案が可能になった。
例えば、資料を用意していない商品についての話題が顧客から出た場合、以前は再度訪問して資料を届けていたが、営業支援iPadではその場ですぐに資料の提示ができるため、タイムリーな提案から即受注につながるなど、その効果が報告されている。
実際に営業活動に利用しているダイキンHVACソリューション近畿 ソリューション営業部 ソリューショングループ 主任の森本元三氏は、iPadの利用効果を次のように語る。
「お客さまがご利用されている商品はそれぞれ異なります。そのため、多くの商品知識とお客さまごとの環境に合わせた情報、例えば既存空調の図面などが必要となります。そんなとき、営業支援iPadなら商品カタログも最新のものをお見せすることができますし、仕様書や外形図などの承認図も過去から最新までその場で検索できるので、どのような商品が適用できるかをすぐにお答えできるようになりました。これまで発生していた事務所への電話確認や持ち帰りなどのロスを省けるため、大変便利になりました。また、お客さま先への映像提案はとても説得力があるのですが、映像再生のためにはDVDプレイヤーを持参する必要があり、手間がかかっていました。しかもうまく再生できないといった場合もあったのですが、それもデータで配信後、即再生できる営業支援iPadで解消されました。お客さまからも『先進的な提案スタイル』とのお言葉をいただき、喜ばれています」
導入後の経費削減効果についてはどうだろう。
「営業担当がカタログをiPadでお見せすることが可能になったため、カタログ制作費用の一部が削減できます。また新商品を発売した際は、お客さまへ商品紹介のDVDを無償配布していましたが、導入後は営業支援iPadに配信される動画をその場でお見せすることが可能になったので、DVDを配布する必要がなくなりました。これらの費用を含め、年間あたり合計約3,000万円の削減を見込んでいます」(谷内氏)
同社がiPadの営業支援アプリケーションに入れたカタログは、現行製品のほかに過去の製品分も掲載されているため、省エネの比較提案がしやすくなったという。
空調機器の交換間隔は7~10年が一般的という。例えば顧客と空調機器の商談をした際、現在設置している旧製品の機能や仕様を記載しているカタログを探し出すことが難しく、最新製品のスペックと比較をすることが困難だった。iPadに過去のカタログが収録されたことで、顧客の空調機器を探し出し、新商品との比較を簡単に説明できるようになった。
カタログでの比較以外にも、各種省エネ試算ツールをiPad上に用意しており、その場で顧客の状況を聞き取りながら、省エネ削減試算結果を提示することが可能だ。
「例えば太陽光発電システムを含んだオール電化導入による光熱費削減や、業務用エアコンの入れ替えによる省エネ試算といったことも、営業支援iPad上ですぐにお客さまへお見せすることができるようになったので、営業ツールとしてもとても有効です」(森本氏)
「営業支援iPadは、営業ツールのほかにマーケティングの一環として、営業担当から現場の声を収集するためのアンケート実施ツールとしても活用しています。アンケートでは空気清浄機のセールストークを募集し、営業の間で横展開が可能な情報を都度展開しています。営業現場の声を収集することで、当社の財産として蓄積し販売に役立てたいと思っています」(山田氏)
「現在、空調営業本部 事業戦略室では営業支援iPadでどの資料が多く閲覧されているかを調べています。今後、この情報を分析して、販促施策として有効な資料を営業担当に配信していきたいと思っています。営業のバックヤードにいる私たちの使命は、営業担当の役に立つ資料や効率化が図れるようなシステムを作り、売上貢献に繋げていくことだと思っています」(谷内氏)
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